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アナウンサーとリポーターは違うのよねん。

「以前はニュース番組に出ていました」っていうと、
「ああ、アナウンサーさんね」って言われることがあまりにも多いので、
「まぁ、そんな感じです」と答えることにしています。

でも、実はリポーターとアナウンサーは違います。

簡単にいうと、アナウンサーは基本的にスタジオにいる人で、リポーターは基本的に現場にいる人です。(記者とかディレクターとか、いろんな役割があるのですが、ここでは、アナウンサーとリポーターの違いを書きます)

台風などの中継の時に、スタジオから「現場の○○さん!」と呼びかけるのはアナウンサー。現場で「はい!こちらは、△△(地名)にいる○○です」と答えるのがリポーターです。

実は私も、子どもの頃から「アナウンサー」になりたかったし、テレビ局で働くまで、ニュースに出てしゃべっている人はみんな「アナウンサー」だと思っていました。

ところが、そうじゃなくて、ニュース番組に出ている人でも、「キャスター」とか「記者」とか「リポーター」とか、いろんな役割があります。それを知ったのは、テレビやラジオ局で働くようになってからです。

私が仕事としてマイクを持ってしゃべり始めたのは、大学生時代(沖縄在住でした)にアルバイトでやったラジオのアシスタント。

その番組は、ラジオカー(ラジオの中継をするためのアンテナを積んだ特殊な車)で、地元のスーパーを回るという、ちょっと珍しい生放送の番組。ナビゲーター役の地元のタレントさんと一緒に、その日の現場となるスーパーに行き、お店のお客さんをつかまえてクイズを出し、プレゼントを差し上げるというクイズ番組で、そのクイズを読み上げる、というのがアシスタントとしての私の役割でした。

それからも、しばらくはラジオやイベントでしゃべっていたのですが、自分がしゃべる言葉は、全部自分で考えていたんです。ずっと「現場の人」だったので、自分の言葉は自分で考えるのが当り前だったから。

ところがその後、出身地の山形で、テレビのニュース番組のリポーターをやることになりまして。

初めてテレビ局でリポーターを務めることになり、きちんとディレクターがついて、そのディレクターが書いてくれた原稿どおりに、収録や生中継をすることになったんです。

当時の私は、地域のお祭りや注目のグルメ、季節ごとに話題になっている現場(お花見会場とか、海水浴場とか)などに行って、「はい、こちらは△△です!」っていうのをやってました。

ちゃんとディレクターがついてる方が、自分で考えることは少ないからラクなはず。なのに、実際やってみたら、私は「人が書いた原稿を覚えるのがニガテだ!」っていうことがわかったんです。

ラジオやイベントの仕事では、自分がしゃべる言葉は自分で考えて、「私はしゃべる仕事ができてる」って思っていたけれど、他人が書いた原稿でしゃべろうと思うと、ぜ~んぜん、うまくいかない。「次にしゃべること、何だっけ??」って考えちゃって、表情も不安そうになって…。

自分でも「本番でうまくしゃべれない」ということがショックでした。

そこで私は、原稿をディレクターだけに任せるのではなく、できるだけ事前に現場に行って、ディレクターが原稿を書く時に自分の言葉を補ったりして、手伝うようになったんです。自分で自分の言葉を考えるようになって、なんとかうまくしゃべることができるようになりました。

その後、再び沖縄に移住して、沖縄のテレビ局でニュース番組のリポーターを務めました。その時もやはり、自分で現場を取材して、自分で原稿を書いて、生中継に出ていました。

でも、プロのアナウンサーさんは、一度も自分で現場に行っていないのに、きちんと原稿を読んで、視聴者に伝えてますよね。「あ!しゃべる仕事っていうのは、アナウンサーもリポーターも同じだけど、やってることは全然違うのね!」と、ようやくわかりました。

たとえるなら、アナウンサーさんは出来上がった原稿を読むので、俳優さんみたいに「表現者」に近い感じ。一方、リポーターや記者は、自分で原稿を書くので、脚本家みたいに「作家」に近い感じです。

私は、スタジオで原稿を読む役割じゃなくて、現場に行って、取材して、自分で原稿を書く役割が向いている。それを、実際に経験して、つくづく思い知らされました。

だから私は今、自分の言葉や、取材した現場の言葉で原稿を書く「ライター」という仕事をしています。今でも、しゃべる仕事は好きなので「表現者」の役割もしますが、いずれにしても、自分の言葉で仕事ができることが自分に合っていると思います。

そうそう。時々、テレビなどで、ぎこちないしゃべりをしている記者さんやディレクターさんを見ることがあるかもしれません。でも、彼らはアナウンサーさんではないので、やさしく応援してあげてくださいね。


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