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問題に気づくって、こういうことか。

最近読んだ本の著者さんの、こんな言葉がず~っと気になっています。

問題を見つけるのは確かに難しい。でも「世界が改善の余地がない素晴らしい場所だと思いますか?」と訊かれれば多くの人は「否」と答えるでしょう。ではなにが「否」なのか。その「否」に新しいビジネスのヒントがあります。みんな知ってるんです、あとはやるか、やらないかだけ。
(独立研究者・著作家・パブリックスピーカー、山口周氏のツイッターより)

「ニュータイプの時代~新時代を生き抜く24の思考・行動様式~」(ダイヤモンド社)の著者である山口周氏は、この本の中で、「今の社会で『過剰なもの』と『希少なもの』」をいくつか挙げています。

その中で「過剰なもの」が「正解」で、「希少なもの」が「問題」と書いているんです。前述のツイッターは、そういう考えを踏まえたものと思います。

今の社会の「問題」とは??

ん~、なんだろう…。

少なくとも、自分の生活の周辺には、すぐに「問題」と思うようなことは見当たりません。だけど、たしかに「改善の余地がない素晴らしい場所だと思いますか?」と訊かれると、そうでもない…。

と思いながら、今日、いつも仕事をする時に使っているコワーキングスペースにやってきました。その場所は、とあるビルの2階にあり、ビルの入口にある自動ドアをぬけて、エレベーターに乗らなければ入ることができません。私は、いつもと同じように、自動ドアの前に立ちました。

けれど、自動ドアが、開かない…。

開かない自動ドアに貼ってあったのが、冒頭の張り紙です。

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私、これを見て「え??」と思いました。

そして「問題に気づく」というのは、こういうことかと。

この張り紙、なにかおかしいと思いません??利用者が、開かない自動ドアの前で、立ってるんですよ。その目の前にあるのが、この張り紙ですよ。

「自動ドア人感センサー故障中」

故障中なことくらい、わかりますよ。だって、目の前の自動ドアが開かないんですから。

「近日中にセンサー交換をいたします。」(しかも、わざわざ下線付きで強調して)

いや、そうでしょうよ。故障中なんですから。交換するでしょう、センサーでも、自動ドアそのものでも。

「ご迷惑をおかけしますが、ご理解の程宜しくお願い致します。」

いやいやいや。あやまってほしいのではなく、対処法を知りたい。目の前の自動ドアが開かないのなら、どうやって中に入れるのか、教えてください。

たとえば…

「お手数ですが、右側にあるインターフォンから管理者をお呼び出しください」

「インターフォンの下にある鍵穴に、指定の鍵を差し込むと、ドアが開きます」

「指定の鍵」というのは、このビルの別棟にある管理センターに行くと貸してくれるもの。私も、時間外や土日にビル内の施設を利用したい時には、鍵を借りたことがあります。だから、ちょっと手間がかかるけれど、その鍵を使えば、とにかく入れるのかもしれない。

だけど、この張り紙には、そんな風にも書いてない。困りました。

この自動ドアは、ガラス張りなので、ガラスの向こうには、私が乗りたいエレベーターがあります。このビルには、外階段があるのですが、それはビル内の人が外に出るための非常用。外側から入ることはできません。

やっぱり、エレベーターを使うしかない。だけど、自動ドアは開かない。

どうすればいいのよっ!

と思っているうちに、エレベーターの中から人が出てきました。そして、その人が中から自動ドアに近づくと、すんなりとドアが開いたのです。

ありがたいことに、なんとか入れました。


ところで、あの張り紙、なにが問題なのか、わかりました??

敬語も使われているし、不便をかけている利用者に対して、謝罪している。だけど、そういう「言い方」の問題ではないんです。

開かない自動ドアの目の前にいる人が、どうすれば中に入れるのかという「対処法」が書いてないんです。それが一番知りたいのに。

張り紙を読む人の立場に立つことが、できてないんですよね。

別の例でお話しますね。

たとえば、欠陥製品のリコール問題の場合。古くなった暖房器具が不具合を起こして、火災の原因となる可能性があるのなら、CMや広告で「○○という製品をお持ちの方は、回収・交換しますので、すぐにご連絡ください」と呼びかけますよね。

「ご迷惑をおかけして申し訳ございません」と謝罪するのはもちろんですが、とにかく「連絡してください」という、相手にやってほしいことをメインに伝えるはずです。

だって、きっとこういうCMや広告をつくる人は「もし、私がその暖房器具の所有者なら…」と考えるから。

これが「相手の立場に立つ」ということだと思うんです。それが、あの張り紙を書いた人には、ぜんぜんできていない。自分目線で、とにかくあやまることしか考えていないんじゃないでしょうか。ま、そういう会社はたくさんありますけれども。

だけどそれでは、会社の広報として、問題だと思います。

以前、とあるお医者さんを取材した時に、こんなことを仰っていました。「病院に来ない人には、2種類いる。自覚症状がないから、病気じゃないと思っている人と、自覚症状には気づいているけれど、病気とハッキリ診断されるとめんどくさいから、病気とは思いたくない人だ」

この言葉の「病気」を「問題」と言い換えてみます。

(問題だという)自覚症状はないから、問題じゃないと思っている人と、(問題だという)自覚症状には気づいているけれど、問題だとハッキリ言われるとめんどくさいから、問題とは思いたくない人だ。

なにが問題なのか気づかないこと、気づいても対処しないことが、いちばん問題なんですよね。


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