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ラツィオ2連戦〜カリアリ戦 …キエーザとアッレグリの不幸な関係

4月の猛烈な仕事量のため全くnoteを触れませんでした。その間もユベントス戦は追いかけてはいましたので、ザックリと感想だけ残しておきます。4月に入っても相変わらず低調なパフォーマンスに終始していたユベントス。少しでも復調し、目標としてきたCL出場権を獲得することはできるのでしょうか?

多彩な戦術は封印?

リーグのラツィオ戦ではカンビアーゾを上下動させた4-4-2と5-3-2の可変守備を試してみたもののまともに機能せず。クアドラードがいた時期のチームでもある程度機能していたレベルの難しくない戦術のはずですが、キーンやキエーザ、ミレッティは全くついてこれず。ロカテッリが指示を出しながらプレスの指示をしていましたが、それでは間に合わず。4-4-2への可変は高い位置からプレスに行くためのもののはずが相手のビルドアップ隊がドフリーでボールを保持する状態に。

連戦となったコッパイタリアでは5-3-2へ回帰して可変守備は封印。アッレグリはチームとして新しい戦術にチャレンジすることは棚上げしたように思います。繰り返しますが、あのクアドラードですら対応できた戦術に対応できないのですから、様々な戦術を試すことは諦めざるを得ないでしょう。5-3-2であれば、基本的には後方に人数を確保できるため、ビルドアップ時の人数合わせ、一定の守備力の担保が自動的にできます。あと、リーグのラツィオ戦を見ていて思ったのは、ブレーメルは4バックへの対応は難しいのかもしれないということです。対人守備に特徴がある選手なので、守備ラインの人数が4人だとブレーメルがマークする相手を潰しに出にくくなってしまい、彼の良さが出にくくなるように思いました。

様々な要因がありそうですが、アッレグリは今季は5-3-2で走り抜けるしかないと決断したように思います。

キエーザの呪縛

ただ、そうなると別の問題が生じているように思います。それは、キエーザのスタメン起用です。4月以降はユルディズは途中出場のみ。常にキエーザが2トップの一角としてスタメンに名を連ねています。ただ、キエーザは左に張って足元でボールをもらってドリブルを仕掛けるスタイルを得意とします。絶好調時のキエーザであれば相手の右SBを手玉に取って縦突破からの速いクロスやカットインシュートでチャンスを演出していましたが、どうも本調子ではないようです。相手もキエーザに対して2対1で対応するように警戒していますし、そもそも1vs1でも封殺されてしまっています。これではキエーザを左に張らせる意味はありませんし、ピッチの至る所で弊害が見られています。

まず、2トップの一角であるキエーザが左に張り出すことによって、単純にペナルティエリア内に人がいなくなることです。ブラホビッチが必死に身体を張ってボールを収めようとしていますが、ターゲットが1人では相手も思い切って潰しに出られます。クロスを上げるにも本当にピンポイントで合わない限りまともなシュートは撃てません。ブラホビッチへの警戒は極めて強いですから。ペナルティエリアに突撃して欲しいマッケニーはカンビアーゾのフリーロールに合わせてスペースをカバーすることで手一杯ですし、ラビオは何故かビルドアップに降りることに終始していて全くペナルティエリアに入ってきません。ユベントスが得点できないのは当然です。ペナルティエリアに人がいないのですから。

さらにキエーザが左に張り出すことによって、コスティッチやイリングが駆け上がるスペースをキエーザが埋めてしまいます。ハーフスペースを駆け上がることも可能ですが、その時にボールを失うと守備の人数が少ない状態でカウンターを喰らうことになります。もしかしたら、左ハーフスペースはラビオが使うという約束になっているのかもしれませんが。いずれにせよ、攻撃時に左WBが効果的に動くことができなくなっており、自主的に1人少ない状態で攻撃しているという何とも言えない状況になっていると思います。

さらに、セットプレーのキッカーもキエーザが務めることになっており、前半戦で何度もチームを救ってきたコスティッチのセットプレーからガッティやブレーメルが決めるという黄金パターンも自ら封印。ある意味、ユベントスは自らハンデマッチを仕掛けているように見えます。キエーザが左サイドを蹂躙してチームに得点をもたらすことができていれば何も問題ない話ですが、残念ながらそうはなっておらず、むしろキエーザを使わなければいけないことによってユベントスが、ひいてはアッレグリが縛られているように思えてきます。

大体60分過ぎにキエーザと交代で入ってくるユルディズにしても、その本領を発揮できていないと思います。巧みなドリブルで相手を剥がしてチャンスメイクしているものの、時間帯が時間帯なだけに相手は明確に引いて守備に力点を置いているため、ユルディズが1人2人剥がしても次々にカバーが入って決定的なパスやシュートに持っていくことができません。先発で出ていれば、相手も守備一辺倒にはならないでしょうから、ユルディズが使えるスペースも敵陣に残されているでしょう。

アッレグリ解任論

かつて可変システムを守備的に活用し、CLを席巻したアッレグリ。本来であれば多彩な戦術を駆使して相手を封じ込めつつ、相手のウィークポイントをついて得点して逃げ切る必勝パターンで勝ち点を積み重ねることができる監督のはず。ただ、現在のユベントスのスカッドでは様々な戦術をピッチで実現することは難しいでしょう。4-4-2と5-3-2の可変という、現在ではどこのチームでもデフォルトで実現できるような戦術すらまともに機能させられないのですから。その上で左ウイングにしか対応できないキエーザ、3バックに高い適性を示すブレーメル、WBがベストなコスティッチにまだまだ発展途上の多くの若手選手と可変システムに対応するために必要なポリバレント性、現代的にいうとマルチタスクに対応できる戦術的柔軟性を備えた選手の少なさがアッレグリの良さを消してしまっているように思います。

そう考えてくるとアッレグリ解任論も理解できます。現在のスカッドを考えれば、多彩な戦術を駆使して全対応できるチームではなく、特定の戦術で一点突破的なチームの方が向いているでしょう。その意味でパターン攻撃でガチガチに戦術に嵌め込む印象の強いコンテや、流行りのハイプレス+ポゼッションで攻撃的なサッカーを展開するモッタの名前が上がっていることも理解できます。彼らの指導であれば、選手たちが理解すべきことはアッレグリの指導に比べて減るでしょう。その分、完成度を高めるためにトレーニングで突き詰めて行くこともできるでしょう。そのプロジェクトの中心にキエーザを据えるのであれば、キエーザを左ウイングに置く4-3-3もしくは4-2-3-1をベースフォーメーションに設定することになるでしょう。となると、3バックに適性があるブレーメルやWBがベストなコスティッチは放出候補に上がってきます。これからの成長次第で化ける可能性があるイリングもキエーザの控えという立場では満足できないでしょうから、移籍の噂も真実味を帯びてきます。

ともかく、アッレグリの指導方針もしくは監督としての特性と現在のユベントスは合っていないということが明確になってきたのが4月の試合だったと思っています。ガッティのビルドアップ能力の低さを隠すためにサイドバック化したり、カンビアーゾの流動性を活用するために戦術理解に長けたマッケニーとユニットを組ませるなど打てる手は打っていると思いますが、キエーザを使う以上、上記の問題を抱えることになります。おそらく、キエーザではなくユルディズをスタメンで使うのが最適解なのですが、何らかの事情でキエーザをスタメンで使い続けているのではないでしょうか。失礼な話ですが、インテル戦以降不調に陥っているユベントスですが、ちょうどキエーザがスタメンに復帰してきた時期と重なります。上記の問題を抱えて試合をしなければいけないので、当然と言えば当然です。

アッレグリは現在のスカッドだとベースシステムは5-3-2がベストと判断していると思います。しかし、2トップのシステムはキエーザには合いません。左からの仕掛けを得意とし、かつある程度守備を免除できる左ウイングに置く必要があるからです。ラツィオ戦の可変4-4-2はキエーザのためのシステムだったと思います。しかし、全く機能させられませんでした。それでもキエーザを使い続けているのは、キエーザを中心に据えるというチームとしての決断があるのかもしれません。あくまで勝手な推測ですが、仮にそんな事情があるのだとしたら、今夏、ユベントスは移籍市場で大きな動きを見せるでしょう。3バックに適正のある選手を放出して4バックに適性がある選手を集めなければいけないからです。

本来であればアッレグリもキエーザの力を発揮できる最適解を見出し、かつ結果を出す手腕を持った監督だと思います。しかし、財政スキャンダルで勝ち点を剥奪され、若手を積極的に起用せざるを得ないチーム事情やスカッドがそれを許さなかった。どうもそんな印象を受けます。アッレグリの指導を理解して実現できるだけの選手が揃っていたら…おそらく周りの選手がキエーザをカバーして攻撃に専念できる環境を整えてくれたのではないでしょうか。アッレグリも17-18シーズンのベルナルデスキのように我慢強く指導して、キエーザをさらに成長させることもできたかもしれません。


アッレグリとキエーザは重なるタイミングが悪かった。

そんなことを考えた2024年の4月でした。

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