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ちょうどいい解釈桜入門スポット

こんばんは。Etrisです。すっかり桜の季節ですね
ところでみなさん、曲の解釈ってやったことありますか?

何か楽曲が公開されたときって、「この曲ってどういう光景を描いてるんだろう」とか「どんな感情を伝えたいのかな」とか思うことありますよね。私はよくあります。
ところが得てして、そういったものは入り組みがちな傾向にあります。まあたかだか3分ちょっとの限られた曲の時間では歌詞に詰め込める情報量にも限度があるわけでして

知恩院門前の桜。祇園→八坂神社→円山公園と足を伸ばしたついでにサクッと行ける

というわけでこの記事ではこれを解き明かしていく作業、以下では解釈と呼ぶことにしますが、その私なりの進め方を紹介してみようと思います。

ああ、題材が必要ですよね。今回は”花残り、蕾ひとつ“にしましょうか
ちょうどもうそんな季節ですからね


哲学の道と大文字山。京都駅から市バス17号「銀閣寺道」で降りると道なりに見れる

0. そもそも

解釈とは何をする作業でしょう?お手持ちの広辞苑を引いてみると、こんなことが書いてあろうかと思います。

かい-しゃく【解釈】
文章や物事の意味を、受け手の側から理解すること。また、それを説明すること。

広辞苑第七版より

仰々しそうなことを言っていますが、楽曲の解釈においては要するに「楽曲をちゃんと掘り下げて聞いてみませんか?」ということが本質です。
ですが、これでは何をゴールにすればいいのかがよく分からないですね。まあ実際は飽きるか納得いくまで詰めるのですが、にしたって何かしらのゴールというか目標が欲しいところです。

曲中の遍く表現を全て精査する、いわゆる”解像度を上げる“ことにゴールを置いてもいいのですが、作業としては単調で面白みのないもので、短期集中で行うには楽しくないでしょう。
そこで、ここではもう一つの指針として”テーマを詳らかにする“という方向で解釈をしていきたいと思います。

円山公園の夜桜ライトアップ。マジで昼でも夜でもいつ行っても混んでる

「えっ?花残りのテーマって蕾とか花とかそういうのじゃないの??じゃあもうやることないじゃん」とお思いの方もいるかと存じますが、残念ながらそれはモチーフです。この辺の機敏は話せば長くなってしまうので割愛するのですが、とにかくここで行う解釈とは、ややこしく言えば楽曲のモチーフをテーマに還元する作業だと思ってください。

1. まずは聞く

さて、ゴールがはっきり分かったところで、一旦その曲を聞くことから始めましょう。当たり前ですがそれが大事です。
伝え手が音楽という形態を選んでいるからには、やはり受け手としても耳から摂取するのが最低限のリスペクトというものではないでしょうか。
決して“ゆーて歌詞カード読めばええやろ!”とか横着してはいけません。それは後の段階です。

桜と東寺の五重塔。非課金部分でも割と撮れるけど人が映り込まないタイミングがない

このとき注意しておきたいのは、頭を空っぽにしておくことです。
他の雑事を考えるBGMにするのはもっての他ですが、その曲を既に何度も何度も何度も聞いて頭に叩き込まれていたとしても、XFDとかショートとかで部分的な情報を得ていたとしても、それらは一旦置いといて、純粋に楽しむ気持ちで曲に関するすべての先入観を捨ててまっさらな状態で聞きましょう。

もう一つ。なんか引っかかる箇所があったら積極的にメモしておくなり心に留めておくなりしておきましょう。1箇所でもいいです、それが次のステップへの手掛かりになります。

ここではタイトルにもなっている”花残り、蕾ひとつ“という表現が気になったのでそこにフォーカスを当てることにします。ちなみにこんな感じで曲名そのものも紐解いていく上での貴重な入り口になったりします。

2. 問いを立てる

先ほどのステップで引っかかった箇所について、なぜそこが、どのように引っかかったか、少しでも疑問になったところをとりあえず書き出してみましょう。たとえば、この例なら

・「花」とは何か、何の花を指すのか
・「蕾」とは何か
・「花残り、蕾ひとつ」とは結局どういう状況なのか

大体こんなかんじでしょうか?

白川疏水沿いの桜。用水路を満開の桜が覆う様は圧巻

コツとしては、どんなに些細な点でも書き出すことです。ぱっと見で答えが出そうなものであっても、一見答えが出そうになくても、或いは全く本筋に関係がなさそうであっても一旦書き出しておきましょう。必要な情報かどうかは後で判断すればいいですからね。

3. いっぱい聞く

先ほど立てた疑問の答えを探すために、さらに聞き込んでいきます。
ポイントとしては前後の歌詞から状況を把握したり、近しい表現や対になる表現から類推したりするとよいでしょう。
ああ、歌詞カードなどお持ちの方は横に置いておくと作業がはかどると思います。耳で聞くだけだとどうしても限界があります。

この例では、聞き進めていくと大体こんなことが掴めるかと思います。

城南宮の参道。いい感じの石畳と桜の絨毯

イントロ~最初の「花残り、蕾ひとつ」までの部分(MV 0:00~0:24)を参照すると、またBメロ(MV 0:48~1:03、1:42~2:01)の歌詞をいくつか拾うと「舞い散る花びら」「春一番」などとあるので季節としては冬から春になろうかといったところでしょうか。
Bメロにある「まだ青い蕾」はおそらく「蕾ひとつ」の蕾と同一のものであると考えられます。
「青い蕾」が少し気になるところです

詰めていく最中でも新しく疑問点が湧いてくるかと思います。そういう場合は追加でメモしておいて、並行して答えを探していきましょう。
ちなみに文字や文章としてだけではなく、音楽表現としての強弱や調といったものから考えるのもアリですし、あるいはイラストやMVから視覚的に掴むのも一つの手です。使えるものは何でも使っていきましょう

注意点が一つ。自然な範囲の類推なら問題ないのですが、合理的だとしてもあまり突拍子のない結論には飛びつかないようにしましょう。なるべく謙虚に、書いていないことは深読みしないくらいの心意気で臨むべきです。

桜寺の異名でも知られる墨染寺。ここは観光客がいなくてガチ

この2と3のステップを情報が十分に集まるまで(または飽きるまで)繰り返していきます。

4. まとめる

このように問答を繰り返していくと、手元には大量の情報が残っているかと思います。私はこれをよく"事実"と呼ぶのですが、これらの事実のうち必要なものを精査してシンプルにまとめていきましょう。
ここが解釈の出来栄えを一番左右する部分であり、それぞれの腕の見せ所です。

背割堤。市内からはだいぶ遠いけどいわゆる花見ができる

たとえばこんな感じに事実がまとまるとします

・季節感?
  →冬の終わりから春になりかけのころ。春一番が吹くぐらい
・「花」?
  →おそらく桜?舞い散る頃合いと「雪解け」や「春一番」は不釣り合い
・「蕾」?
  →「まだ青い蕾」と同一。
   「青い」は実際の色よりかは「青二才」「青春」の若いの意だろう
   「小さな蕾」からもうかがえる
・「青い蕾」とは?
  →曲の主体のコ。新生活に臨んでいる(1A、「未知なる舞台」)
・「彷徨い その色を変える」
  →針路を悩みながらも成長していく
・「天荒破る未来」
  →破天荒:まだ誰も為し得ていないこと。
  誰も成し遂げていないことを達成するような未来?
  (2A、「触れられない夢」)

!!空が未来の暗示
・「割れた雲の その向こうに」
  →割れた向こう側=「天荒破る未来」を「見据えて」、
  「歩み出」している
  雲は凡庸な/先を見通せない未来?

!!「花」は情景としての花だが「蕾」はとくに物理的な蕾を指しているわけではない:主体のコそのものを表している

・ラスト前
  →立てた目標が大きくて怖気づいているが、
  ひたすらに歩き続けていればいつかは辿りつく

もちろんここまで細かくやる必要があるかは定かではないですし、明らかに考察が不足している部分もあろうかと思います。(実際「木々」が何を指しているかなど、まだ詰める余地はあります)

高瀬川の花筏。葉桜になりかけの頃が狙い目

テーマを見抜くポイントとしては、主たる事実と従属する事実をうまく整理することです。これは難しそうなことではなくて、「コレが成り立つならアレは自然とそうなるよね~」みたいなの前者が主、後者が従というだけの話です。
この”主”の部分を寄せ集めていけばほら、こんな風に

新生活に臨むコが、誰も為してないような、大きな目標を立てて怖気づいていたが、それでも懸命に歩もうとする様子の曲

”花残り、蕾ひとつ”のテーマがまとまりましたね。
ね、簡単でしょう?


白川疏水、錦林車庫裏。町中の桜

もともと3月の記事としてなに書こうかな〜と持ち案2つでアンケートを取ったんですよ

したら見事に同票になってしまいまして、ええ。
どっちも早めに出しておきたいしな〜どうしたもんかな〜と頭を抱えていたところにですね、

天啓が降りてきました。
ので混ぜこぜにして書くことにしました。
なのでこの記事は実態として『ちょうどいい桜スポット』と『解釈入門』の2つに分離されます。した上で読んでください

ちなみに記事中で使った桜の写真は、京都に住んでた間に行ったもので、すべて自前で撮りました。サムネだけは最近上野公園で撮ったやつですが
人が多そうな桜の京都でも場所と時間を選べば結構満足に花見ができるよ〜ってことが伝わればいいなって思います。解釈のやり方?んなもん好きにでっち上げろ

夕暮れの鴨川デルタちょっと北。出町柳の商店街で桜餅を買って花見をするとよい

そもそも好みの解釈ができたところでそれを文章にして公開しなきゃいけないなんて話はどこにもないし、明瞭に纏める必要すらありません。
「この曲ってここがこうでこうってことなんだよね〜」が自分にさえはっきり分かればそれでいいのです。もっといえばはっきりさせる必要すらなくて、曲の概要をぼんやりとでもつかめるならその手段はなんでも良かったりします。

作曲側の見解が公開されない限り、正しそうな解釈はありえても“正解の”解釈は存在しません。つまり、曲に対するあなたの理解が少しでも深まったなら、解釈としてそれは十分であるといえます。そこに他者が入り込む余地なんて一切ない。
それでも、あなたが創り出した世界が、他の人が見い出したその曲の世界と相互反応を織り成すとき、我々は楽曲を一層深く理解できた気になれるのです。

もしも、それが素敵なことだなって少しでも思っていただけたのなら、僕たちと一緒に解釈をしてみませんか?