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寂しさがほしい

SNSを始めてから、ネット上だけとはいえ少しづつ人との交流を始めて、少しは人間らしくなったかと思ったが、やはり今でも心がどこかおかしい。

今はネットで動画見てるか、文章書いてるかの日常だが、自分自身のどこがおかしいかは自分でも分かってる。

それは、寂しいと思う心が圧倒的に足りないということだ。これはこの先の人生が孤独死に向かうのが目標ならば、心が苦しまなくていいからありがたい事だとは思うが、普通の社会生活を生きる人間としたら、寂しいと思う心が足りないのは圧倒的に不利なことである。

寂しいと思う心があるから、知り合いを作ろうとし、1人は嫌だと思う心があるから、友人を作ろうとして人の輪に入ろうとする。

寂しいと思う心がないと人が離れた時に苦しまなくていいと思う反面、寂しいと思う心がないと、いつまでも孤独で過ごすのが確定してしまう恐ろしさもある。

もちろん、俺には孤独は嫌だ!寂しいのは嫌だ!という人間らしい心もあったはずだが、そんな心はいつしかどこかに置き忘れてしまった。

しかし、こんな俺でも人と仲良くしたい、友達になりたいと思う心が強くあった時期も当然のようにあった。恥ずかしながら、それは女性に対しての気持ちだったが…

人間の三大欲求には食欲、睡眠欲、性欲とあるが、その中の性欲という欲求が、俺の鋼鉄の人見知りという壁をいとも簡単に叩き壊していた時期があったのだ。

決して怪しくない健全なマッサージの店にいた、小柄で優しく小さな子供を抱えて働いていた年上のみゆきちゃんに恋をした時があった。俺は本当に必死に自分をプレゼンした。自分がどんな人間か、そして俺の孤独な生き様、そしてこの世界の行く末と世界の子供たちを救いたいという壮大で熱い思いを!表向きはそんな当たり障りのない話をしたが、心の中は違った。

「俺は本当に世界平和を願ってる、でも、その前には俺自身が幸せにならなきゃいけない!それには、君が…みゆきちゃんの力が必要なんだ!だから、君と僕とで世界をマッサージして柔らかくほぐして平和にしたいんだ!」

そんな思いは隠しつつ、俺はみゆきちゃんを食事に誘った。

昔の俺はそんな積極的な事も出来たのですよ。そして、2人で行ったパスタ屋さん、周りには5人ぼどのお客さんがいたから俺は熱い思いを込めつつ小さな声で言ったんだ。

「みゆきちゃんとまたご飯が食べたいな、もちろんお子さんも連れて来ていいよ!今度はどこに行きたい?」

すると、みゆきちゃんは真面目な顔と大きな声でこう言った。

「ごめんね、ジョージちゃん…私、今は自分たちの生活で精一杯なの…子供の事だけを考えていたい。それにお客さんとは付き合うことなんて考えられない。だから、ジョージちゃんの思いには応えられません、本当にごめんなさい!」

俺は告白も何もしてないのに、5人の客の前でフラれた…

しばらくは突然人前でフラれた恥ずかしさで、連絡も出来てなかったが、それでも、みゆきちゃんの生活の心配もしてたので、久しぶりに連絡をしてみたら…

「ジョージさん、本当にごめんね、私、今は二人目を妊娠してるの。相手はお客さんだったんだけど、本当に真剣に私たちを思ってくれてるから、もう一回この人と人生をやりなおそうと思ってる。だから、本当にごめんなさい」

たった3ヶ月でこのスピード婚…お客さんとは付き合わないんじゃなかったのか?しかし、そんな疑問をぶつけるのは野暮だ。俺は「お幸せに…」そう力無く呟いて電話を切った。

告白も何もしてないのに、関係ない周りの5人の客の前でいきなりフラれて、断られた理由のお客さんとは付き合わないと断言された後の3ヶ月後には、別のお客さんとのデキちゃった婚をしてたのである。

作り話のようだが、マジな話である。

この時は悲しさよりも呆気にとられたのをハッキリと覚えている。

でも、まだまだ人間らしい寂しい心があった時の俺は、最初に就職した会社の上司に無理やりフィリピンパブに連れて行かれた時があった。言葉も通じないし、あまり気乗りはしなかったが、俺の氷のように閉ざした心の扉を陽気なバンブーダンスのリズムのような明るさで、こじ開けたフィリピン女性に出会った。

彼女の名前はリンダ

俺が漆黒の暗闇ならば、この人は本当に太陽の神のように明るかった。俺の事を「しゃちょさ〜ん」と呼んでいたが、俺が「トム、マイネームイズ、トム!」

そう言ったら、それからリンダは、ずっと俺の事をトムさんと言っていた。

ちなみに、俺が投資で生活してた時に取り引き記録だけを書いてたブログの名前が「トムの投資生活」だったが、その時のトムはここから取った名前だ。

最初は気乗りしなかったフィリピンパブだったが、俺はいつしか上司に誘われるとウキウキしながら行くようになってた。しかし、夜の店の女性の優しさは、しょせんは接待用の優しさだ。さらに外国の女性。好きになっても実るわけはない。だから、俺はいつも帰る時は「トムイズ、今日はラストナイト、もう戻らない、アイドントゴーバック!」と言って店を後にしていた。

しかし、数日するとまた寂しくなりリンダに会いにフィリピンパブに行ってたのだ。その度に「ナイストゥーミーチュー、マイネームイズ、トム、トムクルーズ!」と初めて行った風を装い、リンダとの楽しい時間を過ごした。

俺はいつしか、上司とではなく、1人でも行くようになってたのだが、リンダの身の上話も聞き、祖国に4人の兄妹がいて、母親も病気がちな事、その為に日本で頑張るしかないから休みなく頑張ってる事を知った。

俺はいつしか、リンダを助けたいと思うようになっていた。いつもの、あなたを助けたい病だ。

俺はリンダの兄妹たちのお兄ちゃんになってもいい、それにはフィリピンの言葉も真剣に覚えねば!いつしか俺はそんな思いを抱くようになってた。

しかし、別れはある日突然訪れる。いつものようにフィリピンパブに行ったら、リンダがいない。俺はリンダの友達だったマリリンに聞いてみた。「リンダはホリデーかい?」

しかし、マリリンは「リンダはくにかえったね、旦那さんと子供たちがたいへんなんだって」

リンダには兄妹が4人いたのではなく、子供が4人いたのだ、そして当然のように旦那さんも…

俺はお兄ちゃんではなく、保護者のようにリンダの旦那さんを含めたリンダの家族7人の面倒を見ようと1人思い悩んでいたのだ。

これも、作り話のような本当の話。


こうやって、昔の俺は人並みに人と関わらないと寂しいと思う心があった。しかし、その心があったからこそ、少ないながら人間関係があったのだ。

今は、そんな人としての当たり前にある寂しいと思う心が無くなってしまった。寂しいと思う心がないと寂しさに苦しむ必要は無くなるけど、人と繋がろうと頑張る心も無くなってしまうのも分かってしまった。

寂しいと思う心があった時の方が今より断然人間らしかった。だから、今は思う。


寂しいと思う心が戻って来てほしいと。

それはまた、人と関わり苦しむことになろうとも、今より生きてる実感があり、今より人に優しくなれる人生が再度始まるということだ。

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