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DTM日和 2024年3月配信号 テキストの可能性

 新しい曲の構想を作ったり消したりの日々を送っています。その中でテキストと打ち込みの親和性について考えるようになってきました。今回はそんなお話です。

「エヴァ」のインパクト

 私より少しだけ後の世代かもしれないのですが、90年代後半に「新世紀エヴァンゲリオン」というアニメが有りました。有りました、と言うより現在形で映画にも触れている方も多い事でしょう。当時私は二十歳そこそこでしたが、がらっとそれまでのアニメの流れとまるで違うストーリー展開や人物描写に驚いたものでした。
 「エヴァ」の表現の一つとして、縦横に走る黒字に白の極めてシンプルな明朝体のテキストをポイントとなるシーンに効果的に使う、という物が有ります。当時は、テキストを使うキャッチコピーなどは洒落ていて少しひねった物が多く、時折旧字体を混ぜながら画面狭しとテキストが埋める「エヴァ」の表現は強いインパクトを受けたものです。

「mizzle」

 最近、たまたまなのですが本業の関連で物を書く機会が続きました。普段の業務では長文を書く事などないので色々と大変でしたが、文字に触れてみると素人なりに楽しさも感じました。
 以前、私は「mizzle」という曲の動画でちょっとしたテキストをつけたことがあります。曲としては少しシュールな恋愛物で大正時代風な世界を舞台とし制作したものです。ヴォコーダー用の歌詞は別に有り、ストーリーを追うように耽美性を意識したテキストをつけています。「エヴァ」の洗礼を浴びていますのでテキストを動画で使うとなるとやはりそれなりにインパクトをつけようと思っていたと思いますが、制作時はあまり深くは考えていませんでした。ただ、後から見てみるとクラシカルなテクノとテキストという視点はそれなりに協調し合うところがあり、ひょっとしたら親和性があるのかも知れないと思ってきました。

打ち込みとテキストの可能性

 この曲は歌詞があるので若干ブレるのですが、打ち込みの曲だと不思議と音楽もテキストも頭に入ってくる感覚があります。仮にアコースティックの例えばギターの音楽が流れていて映像として背景にテキストだけがあると、何かしら別の説明をされているような印象が残るかと思います。例えば、名曲アルバムなどの曲の説明が字幕で出ることがありますが、あんな感じになる事が多いのではないでしょうか。
 それが、打ち込みの、例えばテクノの曲だったりするともう少し曲が前に出てくるような気がします。あくまで個人的な感覚ではあるのですが、テキストを活かす邪魔にならない音楽、というよりテキストとテクノが一体となって別の何かを作り出しているような感覚が有ります。
 今作っている曲では、このような強めのテクノとテキストとの表現で何かしたいと考えています。本離れと言われていますがテキストの持つインパクトが失われた訳ではなく、これからもインパクトを与え続けてくれると思います。そんなエッセンスを少しでも表現できたらいいなと思っています。