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映画『リリーのすべて』

解説など何も読まずに見たので、
まさかこんな結末を迎えるとは予想だにしなかったというのが
率直な感想だ。

もう少し一般的な純愛物語だと思っていたが、
話はそう単純ではない。
主人公のアイナーは、世界で初めて性別適合手術を受けた人物だ。


今でこそLGBTも珍しくないぐらいの時代になったものの
言うまでもないが、ここまでたどり着くまでに、
多くの人々の血がにじむような苦悩と戦いがあったのだろう。

愛とか憎しみとか、男とか女とか、
言葉で分節化されてはいるが、
人間の内情はもっと混沌としていて、
そう簡単に区別され得るものではないのだと思う。
そう思わざるをえない気持ちにさせてくれた映画だった。


複雑な心情を抱えた人物たちを
アールヌーヴォーの美しい装飾品が彩り、
彼らの持つ儚さや繊細さがさらに際立って見えた。

肖像画家の妻を演じたアリシア・ヴィカンダルは、
この作品で第88回アカデミー賞助演女優賞を受賞。
夫が女性になっていくのを見守るしかなかった、
揺れ動く妻の心情を見事に演じきっていた。




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