「パターンランゲージ」とは

「パターンランゲージ」とは

大きく2つの意味があります。

 1つ目は、建築家「クリストファー・アレグザンダー」が建築・都市計画にかかわる理論を記述した書籍「A Pattern Language: Towns, Buildings, Construction」(1977年)のこと。
目的は、建築家の持つ専門知識感性を住民と共有することで真の住民参加型のまちづくりを実現すること。
 内容は、人々が「良い」と感じる建物や街並みの形態に繰り返し現れる法則性「パターン」と呼び、名前を付けて「言語」として記述しました。
 日本では1984年に「パタン・ランゲージ:環境設計の手引」が出版されています。

 2つ目は、あるテーマについて、先人達が実践してきた成功の経験則を特定の形式で可視化し体系的に言語化する知識記述の手法とそれによって表現された成果物のこと。
 冊子や書籍、カードであったりWikiで公開したりと言った、様々な媒体で表現されています。(たしか「楽曲」というのもあったような…)
※個人的には、意味を区別するために書籍については「パタン・ランゲージ」、手法・成果物については「パターン・ランゲージ」と使い分けるようにしています。
※そう言えば、そもそもWikiというシステムは、パターンランゲージを作成するために考案されたシステムだそうですね。

成り立ちと拡がり

 「パターンランゲージ」は、前述のとおり、アレグザンダーの著書により、建築・建設の世界から生まれました。
 そして、ソフトウェア産業へ。オブジェクト指向と共に「デザインパターン」をはじめ、「アーキテクチャーパターン」や「組織パターン」へと拡がり、さらには人間の行為についてのパターンランゲージが作られるようになりました。

慶応大学の伊庭嵩教授は以下のように分類しています。
・バージョン1.0:物質的なもの(建築・建設)
・バージョン2.0:非物質的なもの(IT・ソフトウェア)
・バージョン3.0:人間行為

 先ほど挙げた「組織パターン」はIT関連のパターンランゲージですが、ITの技術を扱うのではなく「組織」と言う人間の集団を扱っているのでバージョン3.0かもしれませんね。
 また、これからもいろいろなテーマで「パターンランゲージ」が作成されていくのだろうと思います。

何の役に立つ?

 では、「パターンランゲージ」は何の役に立つのでしょうか。
 ノウハウを不特定多数の人と共有し、活用するには、以下の図のような工程をたどります。
 そのすべての工程で「パターンランゲージ」の作成技術とその成果物が活躍します。

「可視化」+「蓄積(収集)」工程
 個人がそれぞれ持っている暗黙知を可視化する工程と可視化した形式知を収集する工程です。
 「パターンマイニング」によって暗黙知を形式知化します。
 マイニングの手法は、誰の暗黙知を何をきっかけに形式知にするかと言う観点から、以下のように分類できます。
・自身の経験からのマイニング
 自分自身に対する内省をきっかけにマイニングを行う。
・インタビューによるマイニング
 暗黙知を持っている人に対して、インタビュアーからの問いかけをきっかけにマイニングを行う。
・ワークショップによるマイニング
 参加者(司会を含む)間の対話をきっかけにマイニングを行う。

「蓄積(体系化)」工程
 収集した形式知を活用しやすい形に加工・体系化して蓄積する工程です。
 「パターンマイニング」によって収集した形式知を「パターンライティング」によって、「パターンランゲージ」にまとめ上げます。

「伝達」工程
 ノウハウを、必要としている人に伝える工程です。
 伝達の方法には大まかに「参照型(Pull型)」と「配信型(Push型)」があります。
 「参照型」では、主に「パターンランゲージ」を読んでもらうことで伝達します。
 「配信型」では、個別のパターンをメルマガなどで配信すると言う方法になるかと思います。
 またより深く理解して活用しやすくするために、「パターンランゲージ」を活用した対話の場を作ったり、活用方法を紹介するなどの工夫も必要でしょう。

おわりに

 今回は「パターンランゲージ」の概要を中心に記述しました。
 次回以降、「パターンランゲージ」の構造やら、作成方法やらを投稿していきたいと思います。

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