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【ものづくり】セルロースナノファイバー(CNF)は植物由来の素材

はじめに

セルロースナノファイバー(CNF)は植物由来の素材です。鋼鉄の5分の1程度の軽さでありながら、鋼鉄と同等の曲げ強度、5倍以上の引っ張り強度を持っています。セルロースナノファイバーは自動車部品や部材、電子デバイス、医療などのさまざまな分野で、普及拡大が期待されている次世代高機能繊維材料です。

環境省でも、このセルロースナノファイバーに注目しており、2021年4月には「脱炭素・循環経済の実現に向けたセルロースナノファイバー利活用ガイドライン」を公表しました。

このセルロースナノファイバーとはどうやって作られるのでしょう。そしてどんな応用性が期待できるのでしょうか。

セルロースナノファイバーの特徴

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セルロースナノファイバー(CNF)は産学官の連携で開発されました。木質繊維(パルプ)を処理して、ナノメートル(nm)サイズまで細かく解きほぐしたものです。ナノメートルの「ナノ」はナノとは10億分の1という言葉です。つまり、ナノメートル(nm)とは10億分の1mということになります。髪の毛の太さの約10万分の1という非常に細いサイズです。

セルロースナノファイバー(CNF)はこのサイズまで木質繊維を解きほぐして使うということです。

セルロースナノファイバー(CNF)はガラスの50分の1程度という低膨張率で温度変化に強く、酸素などを通しにくいというバリアー性もあります。植物由来の新素材、セルロースナノファイバー(CNF)は軽量でありながら高い強度や弾性率という特性があります。鋼鉄の5分の1程度の軽さでありながら、鋼鉄と同等の曲げ強度、5倍以上の引っ張り強度を持っています。

セルロースナノファイバーと自動車?

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セルロースナノファイバー(CNF)は植物を由来とする素材です。しかも、日本に豊富にある天然資源を活用して作りだすことができます。セルロースナノファイバー(CNF)は分子構造が明確であるということに加えて、化学変性が可能です。

さまざまな樹脂の補強に利用できる可能性があることから、次世代を担う新素材として、産学官でセルロースナノファイバー(CNF)を活用するための研究開発・プロジェクトが進められてきました。中でも自動車部品への応用には大きな期待が寄せられました。

そういった背景から環境省は2016年、「NVCプロジェクト」を立ち上げ、2020年度までの4カ年計画で、自動車分野におけるセルロースナノファイバーの社会実装に向けた評価事業を行いました。

ナノセルロース自動車とは?

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NVCプロジェクトの「NVC」はナノ・セルロース・ビークル、つまり「ナノセルロース自動車」の略語です。この研究プロジェクトにおける代表機関は京都大学。それに東京大学、名古屋工業大学、金沢工業大学、産業技術総合研究所、アイシン、デンソー、トヨタ紡織、など、産学官合わせて22社・機関が参加してコンソーシアムを構成。評価事業に取り組みました。

この事業では2020年に自動車の10%軽量化の実現を目指し、セルロースナノファイバーを活用した材料、部材、部品の開発や各段階の性能評価、CO2削減効果の評価や検証を行いました。

NCVプロジェクトが目指したのは「樹脂素材改良」「金属素材代替」「その他挑戦」の3項目。2018年6月にはボンネットフード、トランクリッドといった外装部品をセルロースナノファイバーやセルロースナノファイバーの複合材製品で置き換えた、第1次試作車の展示やパネル展示による成果発表会が行われ、産業界では話題になりました。

セルロースナノファイバーを利用した部品の量産化を実現するためには低コスト化、量産化に向けた取り組みが必要だといわれています。また、セルロースナノファイバー複合材の成形加工を最適化していくことや、セルロースナノファイバー部品のさらなる耐衝撃性能の向上などが課題と言われています。

セルロースナノファイバーは建材にも?

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地球温暖化ガスの効果的な排出削減を図ることを目的として、環境省はセルロースナノファイバー(CNF)に着目しました。樹脂材料をセルロースナノファイバーで補強し、複合樹脂にして使用するための性能評価モデル事業を推進しています。セルロースナノファイバーを利用した材料で部品などを試作、実機に搭載して、製品の信頼性やCO2の削減効果といった性能評価、実証などを行っています。

2020年は環境省が「革新的な省CO2実現のための部材や素材の社会実装・普及展開加速化事業」で投資補助を行いました。また、環境省と経済産業省の連携事業で「新築集合住宅・既存住宅等における省CO2化促進事業」で補助が実施されるなどの動きもありました。

また、2021年も2020年に続いて環境省が「革新的な省CO2実現のための部材や素材の社会実装・普及展開加速化事業」で投資補助を行いましたし、環境省と経済産業省の連携事業の「集合住宅の省CO2化促進事業(経済産業省連携事業)」で補助の実施などを行っていました。

補助事業などついては環境省のウェブサイトで応募方法などが紹介されています。

セルロースナノファイバー(CNF:Cellulose Nano Fiber)ー環境省

まとめ

セルロースナノファイバー(CNF)は植物由来の素材であり、また日本発の新素材です。循環型社会実現に向けた「夢の新素材」として、セルロースナノファイバー関連の技術開発や実用化に対しては各方面から期待が寄せられています。

セルロースナノファイバーを知るためのリンク

セルロースナノファイバー利活用ガイドライン(環境省)

ナノセルロースとは(産業技術総合研究所)

富士市CNFプラットフォームウェブサイト(静岡県富士市)




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