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アントレプレナーとコミュニティ|パネルディスカッション|#2

Bizjapan End of Year Partyでのパネルディスカッションの内容を公開した本記事は、こちらの記事の続きになります。

成功するプロジェクトとは

林:さて、プロトタイプを回して、プロジェクトが生み出されてきました。Bizjapanでもすでに25個ほど生まれ、素晴らしいことではありますが、その立ち上げのときの9割の時間は苦しかったと思います。でもその中でうまくいく瞬間がある。では成功するプロジェクトはどんなものなのか、そして失敗や苦労とはどう向き合っていくのか、を考えたいです。まず成功に関して、みなさんはこれまで様々なプロジェクトの立ち上がりに関わってきたと思うので、「こんなプロジェクトはうまくいくな」など普遍的なものや特筆すべきものがあれば教えていただきたいです。

各務:普段私は大学発ベンチャーとか学生発ベンチャーとかに携わっているのですが、東大では研究者は社長にはなれません。研究者はテクノロジーのチャンピオンであっても、ビジネスのチャンピオンにはなれないのです。ビジネスのプロとテクノロジーのチャンピオンがお互いをリスペクトしあいながらも、やっぱりそれぞれ違った立場でやる。これがチームビルディングというものです。自分にないものへの補完性をもつチームをどう組むか、自分がどういうコンピータンスをもっているか、自分の補完性は誰が持つか、他人を見ながら考える。すると、大体上手くやれるプロジェクトは補完性があってやれるんです。

ただ例外があって、1ヶ月だけの短期プロジェクトでは「恋人組織」という好きな人同士がやったほうがうまくいくことが多いですね。それでも、長期的なビジョンや会社などの組織では補完性がなければいけないから、例えば本田宗一郎さんに藤沢武夫さんがいるように、あるいは盛田昭夫さんに井深大さんがいるように、企業経営では補完性を持っている人同士が組むべきです。

加藤:別の視点で言うと、色々なスタートアップを見てるとタイミングをいかに逃さず掴めるかがすごい強いと思います。例えば、アイカサという傘のシェアリングサービスがあるんですが、彼らがうまくいったのはタイミングの関係が大きくて、LINEのようなコミュニケーションアプリが広まってると同時に、QR決済の流れが最近活発になって、さらに今はSDGsの盛り上がりがあっていろんな大企業が「ビニール傘をなくしてエコに行こう」という方針を立てています。アイカサはこれら3つが揃ったタイミングを逃さずにサービスインして、それをプレゼンして広げ、メディアにもちゃんとアピールしていった。起業家がいかに嗅覚を持ってタイミングを逃さないかというのはすごい大事ですね。

斎藤:時流をつかむということは僕的にもとても重要です。10年以上前に遺伝子検査をやっていましたが、時代が早すぎて「怖い」という捉え方が強かったです。でも今は時流があって、それがビジネス化しています。とはいえこれは環境因子であってコントローラーがないので、コントローラーがあるような話をすると、今海ごみを減らそうというプロジェクトをしていて、そこでは異分野のチームを融合させて将来的にビジネス化しようとしています。多種多様なデザイナーさんだったり船乗りの方だったり、もちろん研究者だったりが集まっていて、そこで一番気をつけているのは、第一前提としてどうやって課題を解決したいかを全員が共有していて、さらにそのビジョンの方向性がちゃんと合っているということです。

プロジェクトって短期的に1ヶ月くらいなら上手くいってるように見えても、3ヶ月くらい経つと喧嘩します。喧嘩して崩壊するチームがある中で、喧嘩してもなんとかなるチームは、「やっぱり課題解決だよね」「この課題を解決しなくてはいけないよね」という会話がちゃんとあるんです。「こいつ性格はむかつくけど、課題を解決するためには仕方ないか」となります(笑)。

あともうひとつあって、主体性が勝手に担保されるチームってすごく大事だと思います。プロジェクトを作った時に、例えば3人のチームがあったとして、役割をバンバンバンと先に決めるのではなく、自然と役割分担がされて足りない要素が補完される、そういったチーム形成ができるといいですね。特性・性格などを考慮して、いかに発起人がチームをデザインできるか、それを周りの人が経験値を持っていかにサポートできるかがとても重要だと最近思います。

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失敗したときは

林:ここまで考えるとバラ色の未来に見えますけども、一番難しいトピックは失敗とどう向き合うのかです。多くの場合、プロジェクトは解散します。Bizjapanの中でも続けないという選択をしたプロジェクトがたくさんあります。失敗したときに人はどうしたらいいのか、どうしたら前を向けるのか、教えていただきたいです。

加藤:まず、「終わり」をちゃんとみんなで合意して決めておく。意図を持った失敗をさせる施策にはちゃんと終わりを設定し、みんなでそこに向かい、その検証がだめだったときはしっかり評価と反省をして次の施策に向かう。このようなサイクルを事前に設計することが大事だと思います。

林:いつまでにこれをやるという仮説を作って、それに対して検証していくというアプローチですね。そこで重要なのは、解くべき問いに関する仮説と、それに対して打ち手がいつまでになにができるのかという仮説。終わりを決めておく重要性が見えます。

各務:失敗っていろんなステークホルダーを意識して行うことになるんです。失敗が自分たち当事者から見える世界だけでなく、どんなステークホルダーが認識されているかを最初から予め考えておかないといけません。これが特に大学発ベンチャーだと、例えば山中先生がiPS細胞でノーベル賞を取られました。社会はこういうことに対して成功のハードルが高く、逆に言うとちょっとした失敗、それだけでは失敗とは言えないようなことに対して、非常にセンシティブに失敗というレッテルを貼りがちなんですよね。そうなった途端先に進めなくなるんです。社会の中で何をするとどう認識されるかは、事前に見ておかなければいけなくて、何かやるときにはステークホルダーに対して先回りし、「こうなったら先に進めないね」という認識合わせをしておかないといけません。

林:事前にいかにいろんな失敗のケースを思い浮かべておくか、またそれについてしっかりコミュニケーションするというところですね。

斎藤:僕は失敗した後は、失敗したと考えないようにします。見る視点を変えると、失敗しているようでもうまくいっていることはたくさんあって、それをちゃんと洗い出しておきます。失敗するまでに何ができるのかという定量的な評価ができるようにプロジェクトは構築すべきです。例えばそれが「プロジェクトの事業化が成功する」というものであれば、プロジェクトを回しているのは確実に人なので、「人が成長している」という軸も入ってきます。それにプラスして、行動し続けていることによって何かの課題が解決しているパターンもあるので、それらをしっかりトラッキングしておき、終わるタイミングでそれらを正しく評価して自分たちで続けるか続けないかをジャッジします。で、続けないと決めたものに関しては、アプローチが間違っていただけで問いが間違っていたわけではないと思うので、じゃあ次は別のアプローチをどうしようか、と僕らは考えます。

林:具体的に仮説を作れているからこそ、どういう結末になっても次なにするべきかがクリアになってくるんですね。

斎藤:解決すべき課題がありすぎるので、失敗してドヨーンとしている暇がない感じですね。うちらはベンチャーなのでそうしないと好循環に回っていかないんです。全体も育成しつつ、課題も解決しつつ、世の中の社会課題を解決するためにはどうしたらいいんだろう、と常日頃考えています。僕らはそういう哲学に則って組織を運営しています。

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最後に

林:今日は主に学生の方やコラボレーションさせていただいている企業の方がここにいらっしゃっているのですが、みなさんも一緒に挑戦者としてここに集まっていると思うので、そのような方々に最後に一言あればお願いします。

各務:学生のときにプロジェクトにチャレンジすることは非常に大事なことだと思います。失敗するなら学生のときに失敗するのが一番いいと思います。失敗経験というのも、表層的に見ると失敗であっても、これからの糧になることは間違いにないです。いろんなチャレンジをする。本当に一生懸命考えて、自分なりの行動をおこして、そしてその都度自分の最大限の力でチャレンジすることを学生のときに経験するべきだと思いますね。

斎藤:ここに集まってるみなさんにどんどんチャレンジしてほしいと思うのは、くだらない課題を解決しないで、本当に世の中に求められているような課題を解決してほしい、ということです。日本にいると結構安定していて幸せな世界は来ていると思うんですけど、実は高齢者の施設とかいくと本当にひどい状況があります。メディアとしては、それを囲って幸せな日本とかを演出したがるんですけど、実はそうじゃない。そういった現場にどんどん足を運んでほしいです。そういったところには最先端のテクノロジーは一切入っていない。みなさんは賢いので、それを見た瞬間、これだったらああ言う風にしたら解決できるんじゃないかってわかると思うんです。ひどい、きつい、大変だからみんな行かないんですよね。なのでその課題は一向に解決しない。みなさんにぜひやってほしいのは、大変で誰もやりたがらないからこそ行った方がいい現場に実際に行ってきて、帰ってきてリバネスの戸を叩いて、一緒に課題を解決しましょう。

加藤:自分が学生のときも学生団体をしていたんですけど、学生団体をやっていることに自信を持ってもらいたいです。本気で学生団体で交わった仲間は、年くらい経ってそれぞれのフィールドでもう一回出会うことがあるんです。今まさに渋谷QWSでやってる一個の案件は、自分が学生のときに日本アフリカ学生会議というのを一緒にやってた仲間がJICAに入って、JICAの省内コンペで勝ち取った新規事業のアクセレレーションを「QWSでやれませんか」と持ってきて、自分がQWSの窓口でネゴってやってるんです。こういうのが社会人になってからめちゃくちゃ起きるので、ここに座ってる仲間が将来世の中変えてく事業の仲間になるという、自信をもってやってもらいたいと思います。

林:素晴らしいお言葉ありがとうございました。これ以上ない形でこの場を締めくくれたかなと思います。改めて、本日はご登壇いただき誠にありがとうございました。

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まとめ

自らが定めた課題に対する当事者意識の醸成や、情熱を共感できる仲間との出会いを強く意識してきました2019年のBizjapanの集大成として、ぴったりの内容となりました。登壇者の皆様、ご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました。

現場での出会いを大切に試行錯誤を繰り返し、色とりどりのパッションが花咲くであろう2020年のBizjapanにもご期待ください

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