わかりあえることなんて

もう話すことはない 電話でそういった君
電話が切れても僕はしばらく携帯を握っていた
なにがそんなに君を傷つけてしまったのか
僕にはわからない 水槽に入れられた魚のよう
ガラスケースの向こう 君はどんな声で
どんな言葉をつぶやいていたのか
どんな日々を過ごしていたのか
わからない 僕には
うれしそうにしてたじゃない あんなに
幸せそうに笑っていたじゃない でも今の君は
違うんだね 僕のしらない間に君は
僕とは違う気持ちを抱えはじめていたんだ
他の誰かのように 僕はふるまえなくて
他の誰かのように かっこよくいられなくて
夜に君から電話がきても そのサインすら
くみとることもできなかった
もう一度戻れるかな 君の部屋を思い出す
うれしかったんだ 君が笑うと
あんなふうに無防備に君が笑うと
僕だけが 僕だけが 幸せだったのか
街を歩いても 君の姿がみえそうだ
なんどもふりかえって 君に似ている子を
じっと眺めていた ばかみたいな僕
自分の手を握りしめて 君の手の感触を探した
冷たくて小さな君の手 僕は離したくなかった
時間が経つのが嫌だ 僕はこのまま君の
君の元から遠ざかりたくない あの温かい記憶から
今までもいろんなものを失ってきた
だから それでいいじゃないか
もう 僕から奪わないでくれ
変だ 涙さえでない 僕は感情のない顔のまま
歩いてく 歩いてく その先に君は待っていない

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