カムアウトする必要がない社会

昨夜の「よるバス」(アベマTV)の生放送を終えた元参議院議員の松浦大悟さんと電話で話をしました。次につながるいい番組になってよかったと伝えました。

その電話で、私のいつも言っている、自民党の考え方となった「カムアウトする必要がない社会は、繁内さんのオリジナルですか?」という質問を受けました。

そうなんです。20年以上前の私のオリジナルなんです。どこかの本に書いていたものではないんです。

それで今は全く使っていないミクシーを調べてみたら、やっぱり残っていました。【2008年06月03日23:24】のミクシーです。ぜひ、ご覧ください。

改めて読み返すと大変懐かしいですね。

兵庫県教委、神戸市教委との話も、ホテル業界の男性同性愛者の宿泊の話も、自分で省みても秀逸です。当時の自分を褒めてやりたいと思います。

昨年は、厚労省の担当課の旅館業法の一部改正、規則の改正に関わらせて頂き、このミクシーに込めた思いを実現できました。

LGBTという言葉すらない時代に、神戸から発信し続けてきたことが、自民党を動かし、いまLGBTの基本法となるLGBT理解増進法が成立しようとしています。

本当に地方の活動を愚直に続けてきてよかったと思います。

松浦さんは貴重な歴史だと言ってくれました。私も将来を担う若い世代に残したいと思います。多くの皆さんの道しるべとなるようなこの日のミクシーだと思います。

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カムアウトする必要がない社会
2008年06月03日23:24

昨日は、神戸の目指す市民社会について書きました。説明不足から、コメントやメールや電話をたくさん頂きました。ありがとうございます。

今夜は、もう少し詳しく神戸の活動の方向性について書き留めたいと思います。

「カミングアウト・レターズ」の編者のお一人の砂川さんは、「カムアウトをするかしないか選択できる時代」と著書の中で書かれています。私もそろそろそんな時代かなと思います。

神戸の活動は、エイズの活動も性的少数者の活動もどちらも、「市民活動」です。市民に向けての活動でもっとも大事なことは、「市民に理解しやすい活動」を具体的に示すということです。市民に理解しやすいとは、市民に共感を得ることができるということです。

身内で盛り上がる活動ではありません。

だから、神戸は、「不条理に対しても闘わない道」を選択しました。(ただし命を奪われるような重大な問題は例外)

一昨年、神戸では、「ホテルにおける男性同士でのダブルの部屋への宿泊について」、神戸市に申し入れをしています。大阪市で起きた同様の事例を受けて、すぐに申し入れをしましたが、後の対処の仕方が根本的に違います。

大阪市は、当該ホテルに対して、「大阪市保健所長名」で、行政指導をしています。神戸は、「神戸市保健所長」(部長級)ではなく、さらに上位の局長名で神戸市内のホテルに対して、↓の文書で広く啓発をしています。

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神保保予第2252号
平成18年12月27日

宿泊施設営業者各位

神戸市保健福祉局長 中村三郎

宿泊施設における人権擁護について

時下ますますご清祥とお喜び申し上げます。
平素は、本市の保健福祉行政にご協力をいただき厚くお礼申し上げます。
さて、先般大阪市内のホテルにおいて、人権意識の欠如によると思われる「宿泊拒否」の事例が報道されました。
本市では、従来から「差別のない人権尊重のまちづくり」に取り組んでいることはご承知のことと存じますが、旅館業法の規定に反し、この様な事例が発生することのないよう、格段のご配慮をお願い申し上げます。

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大事なことは、この文書を受けて、どのように具体的に対処するかです。この文書が免罪符となっては意味がないのです。

神戸では、保健福祉局を通して、神戸ホテル6社会(神戸市内の大手都市型ホテル・オークラ、ポートピア、オータニ、シェラトンなどが加盟する業界団体)とともに、「性的少数者についての勉強会」を開催して頂きました。↓の過去の日記にも書き留めています。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=654190635&owner_id=7664071

つまり、「旅館業法違反=差別はだめ」ではなく、ホテルの持つホスピタリティを高めるということを大事にして(ホテルのみなさんを信じて)、おもてなしのプロとしての彼らのプライドを呼び起こすことを選択したのです。

さて、今夜のお題である「カムアウトする必要のない社会」なんですが、少し補足をしますと、

「自分からカムアウトする必要のない」

ということです。つまり、現在は、カムアウトする必要を感じたときに、性的少数者からカムアウトする必要があります。それには、リスクも抱えますし、言わざるを得ないという追い詰められた場合もあるでしょう。ここが問題なのです。

神戸は、日ごろから行政、教育委員会と向かい合う中で、市民に優しい表現を使用しています。その一つが、「カムアウトする必要がない社会」なんです。

たとえば、友達に、

「○○は、ひょっとしてゲイ?」

って聞かれて、

「そうだよ」って言える社会。

つまり、聞きやすい、聞いてもいい社会を目指すということなんです。分からないことを聞いていいのは当然です。タブーにしてはいけません。無知に起因する言動は、「差別」ではありませんが、どうしても少数者からみれば、差別・偏見だと言いたくなるのでしょうが、あまり得策では有りません。溝を深めるだけです。

教育委員会とは、「性的少数者の子どもの個性を否定しない性教育」について話を進めています。この文言は、ある兵庫県立の高校の校長をされている方と考えた文言です。

「いじめ(差別・偏見の対象)となってる性的少数者の子どもがいるからけしからん!!」、「性的少数者の人権教育を推進しろ!!」ではなく、より教育委員会が受け入れやすい文言に言い換えているのです。

教育委員会が受け入れやすいということは、学校が受け入れやすいということです。そして、先生方が児童・生徒にも、保護者もに説明しやすいということです。

「性的少数者の人権教育の推進」では、地方では、あまりにハードルが高すぎて交渉がしにくいだけではなく、声の大きな保守層を刺激して得策ではありません。

「○○は、ゲイ?」

「そうだよ」

「あんまり女の話題ないもんなぁ」

「あたりまえだよ、ゲイなんだから!!」(笑)

って、いう社会は、性的少数者が暴かれ、蔑まされる社会では、そうはいきません。だから、隠さなければいけないのです。

「ちょっと薬の時間だから席を外すね」

「何の薬?」

「HIVだよ」

「ちゃんとお薬飲んでね」

みたいな会話が自然に成り立つ心優しい市民社会を目指したいですね。

これは、市民との闘いの中からは芽生えにくいと思います。男性優位社会がまかり通る、感染させられたら困るという社会防衛反応がある市民社会といつまでも対峙していては、市民社会を変えることは難しいと思います。

しっかり啓発が必要ですが、神戸の啓発は、全て、「YES」の方向です。「STOP」、「NO」ではありません。

神戸LGBTIQフライドマーチは、日本で初めて市民まつりに市民として一緒に参加することを発信しました。つまり、「ともに生きる」の実践なんですね。

まだまだ時間が掛かりますが、神戸の仲間は、「YES」の方向を信じて新たな道を歩み始めています。きっと実ると信じて、私も活動を続けたいと考えています。

学問や理論では、市民社会に馴染まないばかりか、難解なことばかりでは、相手にされないこともあります。既存の理論から導き出されたことが、必ずしも正しいとは限りません。

自分たちの街をしっかり見極めて、大好きな街、大好きな市民といつもいっしょに歩んで行きたいと願っているのです。これなら、クローゼット仲間にも、全てのHIV陽性者の仲間にも優しいと思います。

私たちはいつか言いたいと思っています。

クローゼットの仲間に、

「もうこっちに来てもいいんたよ!!」って。

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