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成功に向かって変化できる変化と変化しない変化

落とした財布を見つけることができない男の話

ある男が財布を落としていることに気づきました。男は、財布をいつもズボンの左後ろのポケットに入れています。家に帰ってソファに腰を下ろしたところで、財布がないことに気づきました。どこで財布を落としたのか、男はその日の行き先を思い返しました。ランチはお店を出る時に会計をしたので財布はあったはず。その後に行ったカフェでは前払いだったので、お店を出る時に財布があったかどうかを確かめていない。そうだ。カフェに忘れたに違いない。

男はカフェに電話をしました。電話に出た店員は店内を探してくれましたが、財布の落とし物はないと言います。男は「そんなはずはない。もっとよく探せ!」と言い張ります。困った店員は、見つかったら電話をしますと言い、男の電話番号を聞きました。

数日経ってもカフェからの電話はありません。男はカフェに行きました。今度は、自分で店内を探させてほしいと頼み、座っていた席の周辺を見て回りましたが、財布は見つかりません。「誰かが盗んだのだろう。」と思い、仕方なく、男は新しい財布を買いました。

男が落としたと思った財布は、座った際に、ポケットから落ちて、ソファの奥に挟まっていました。男は、気づかずに何ヶ月も過ごしました。

一旦、こうだと思い込んだら、考えを変えるのは簡単ではありません。カフェで財布を落としたと思い込んだら、他の可能性を考えず、カフェをくまなく探します。そして、どんなに探してもなかったら、あきらめます。

男が財布を落としたのは、自分の部屋の中だったのですが、そのことには気づきません。

変化するべきは、自分かノウハウか?

人には思い込みがあります。自分の考えは正しいと思っているので、考えを変えることは簡単ではありません。少し柔軟な考えの人でも、カフェでなければ、他の店なのか、道で落としたのかなど、「外」で財布を落としたと思い込みます。部屋の中に落としたという可能性に気づかない限り、財布は見つかりません。

同じようなことは、成功を求める人にも当てはまります。たとえば、何らかの成功ノウハウを手に入れたとします。「成功間違いなし」と考えて、そのノウハウを実践します。しかし、思うように成功しません。そこで、「このノウハウではダメだ」と別のノウハウを探します。

もちろん、ノウハウがデマだという可能性もありますが、自分に合っていないノウハウを採用してしまった可能性もあるのです。

成功をするとは、今の自分から変化することでもあります。変化をする際に、自分を変えようとするのか、ノウハウを変えるのかで結果は違ってきます。

変化する変化と変化しない変化

変化する方法には2つの種類があります。

1:変化するつもりで変化しない。それどころか事態を悪化させる方法
2:期待通りに変化する方法

たとえば、あなたが寝坊してしまう自分に悩んでいるとします。そこで、あなたは強力な目覚まし時計を購入します。目覚まし時計はけたたましく鳴りますが、目覚ましを止めて、二度寝してしまいます。あなたは2台目の目覚まし時計を購入します。今度は、2台を止めて、2度寝をしてしまいました。次は、安眠のサプリメントを購入します。寝る前に飲むと翌日にはすっきりと起きることができると紹介されています。しかし、やはり寝坊は治りませんでした。

朝早く起きたい(変化したい)のに、起きることができない(変化がない)自分に、あなたはどんどん嫌悪感を持つようになります。おそらく、延々とあなたは寝坊を繰り返すことになります。その理由は、変化をしようとする「解決策」を間違っているからです。

ここでもうひとつのアプローチを考えてみます。それは、自分の生活習慣を見直すということです。

あなたが朝起きることができない理由は、寝る前にお酒を飲み、動画を見ながら夜更かしをしているからかもしれません。この場合、前夜のお酒を控え、早めにベッドに入ることで、朝すっきりと起きることができるかもしれません。

しかし、「お酒と動画はストレス発散なので、やめられない」とあなたは変化を拒み、間違った解決策を採用し続けます。

間違った解決策は問題を深刻化させる

あなたが、目覚まし時計やサプリメントやモーニングコール(対処療法と言います)を繰り返しても、生活習慣(根本療法と言います)を変えない限り、朝すっきりと起きることはできません。対処療法を繰り返す限り、何をやっても起きることができないと思うようになり、問題が深刻になります。

「成功するために努力をしているけれど、うまくいかない」

そんな風に感じる人は、対処療法に力を入れすぎているかもしれません。

たとえば、サラリーマンで起業したいけど、起業できない人がこれに該当します。彼らの話は、売上の見込みが立てば会社をやめるということです。しかし、売上を上げるための活動に当てている時間が少ないとうまく行きません。サラリーマンとして本望ではない活動に仕事時間の大部分を使って、本来やりたい仕事に使う時間が少ない場合というのは、方法論を間違っています。

この話をすると「生活があるので、収入をなくすことはできない」と反論されます。もちろん、生活をするための収入は大切です。時間がないので、簡単に成功できるというノウハウに手を出し続けても、おそらく結果は変わらないでしょう。

だから、この場合の解決策は、売上を上げるための時間を作るということです。サラリーマンとして仕事をする時間を減らすか、収入の2割を預金するのです。収入の2割を5ヶ月間預金すると、1ヶ月分の生活費になります。これで1ヶ月分の生活はできるのですから、その1ヶ月間は起業に向けて、すべての時間を使えばいいのです。

もちろん、「起業して本当にうまく行くかどうかが不安」という考えは理解できます。

実は、この「不安」こそが、最大の問題です。不安を払拭せずに、対処療養的な成功ノウハウを学んでも、自分という根本的な存在が変化していない以上、成功という変化は起きません。

あなたは成功するためには、そのビビリを何とかすることが最重要の問題なのです。

目標の過大評価

もう1点、変化が起きない理由は、「目標を過大評価している」という点が考えられます。
起業することを、過大に難しく感じてしまうと、行動が先延ばしになります。

起業した人の6割が1年以内に撤退とか、飲食店の倒産率が高いなどの情報があります。データはあくまでデータです。無視する必要はありませんが、あなたにデータに該当するかどうかはわかりません。

起業というハードルを高く設定してしまうと、簡単にはできないという思い込みを発生させます。結果、「すぐには起業ができない」と準備の時間を長く取り、最終的には準備をしている自分に満足をしてしまいます。

「3年間準備をすることに価値がある」

逆に言い方をすれば、3年間先延ばしにしているということです。

目標の過小評価

逆に、目標を過小評価することも、成功を遅らせます。問題が起こっているのに、問題を認識できないと解決に着手することすらやりません。

自己啓発などの、「あなたはあなたのままでいい」「きっと大丈夫」という類は、問題を見えなくさせてしまいます。

起業をして成功するためのスキルがないまま、この大きな問題を見ずに、勢いでツッパするのは危険でしょう。実際、「行き当たりバッチリ」「なんとかなるさ」で、失敗している人も少なくありません。

能力に関する残酷なデータ

なぜ、起業にビビるのかと言いますと、それは、起業すること自体や、起業しようとしている内容が自分に合っていないと、あなたが薄々感じているからでしょう。

自分に合っていないものを採用する場合、努力でなんとかするか勢いに任せるということになりますが、どっちも危険です。

『ザ・フォーミュラ 科学が解き明かした成功の普遍的な法則』(光文社)では、成功法則に関する残酷なデータが示されています。

成功に必要なのは、アイデアや情報を形にする能力です。このアイデアを形にする能力(Qファクターと呼ばれる)は、時間を経ても変化しないというのです。つまり、Qファクターは努力によって上がるものではないということです。経験を積めば、能力は上がると思いがちですが、それは事実ではないとデータは示しました。新人時代の自分とベテランになった自分のQファクターが同じであるとは到底思えません。しかし、事実を示すデータは私たちの期待を裏切りました。

経験により、知識や作業の質は向上します。しかし、独自のアイデアを形にする能力であるQファクターは固定されたままなのです。

あなたが前に進みたいのに停滞しているとしたら、Qファクターが低いのにその仕事をしている可能性があります。

本書でのアドバイスは、「職業を変えろ」ということでした。

おそらく、こんなアドバイスには納得できないでしょう。私もそうでした。人間は自分で思う方法で、自分が期待する方向に成功したいと思うものです。しかし、それが、変化するつもりで変化しない方法を採用しているとしたら、永遠に期待する変化は訪れません。

目覚まし時計でなく、生活習慣を変えるように、成功の関する思考を変化させなければならないのかもしれません。


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