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二次創作者のための「物語以前」の小説技法

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物語以前05 欠如を埋める

 物語、キャラクター、舞台における過去、バックグラウンドのありかたについていろいろなお話をしましたが、さて、では、「未来」とは何かについて、最後に考えてみたいと思います。

 物語とは「現在」から「未来」へ移動するものであるという点に関しては繰り返し書いた通りです。「現在」から「未来」への移動をどのように考えていくかという点において、

・「現在」持っていないものを「未来」手に入れる
・「現在」欠

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物語以前03 「舞台」というキャラクターと、都合の良い唐突な壁

 ここまでお話したことは、つまり、

・「描きたいこと」を簡潔にまとめること
・「描きたいこと」が起こるまでに至った経緯
・描かれた「描きたいこと」はこれからどのように変化していくのか

 を明確にすることで、物語やキャラクターの簡単な輪郭を捉えることができる、というお話です。これは物語の大枠や、そのなかで活躍するキャラクターだけではなく、物語やキャラクターが動く「舞台」にも適用されます。

 物

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物語以前02 キャラクターの「過去」

 さて、物語における現在と過去と未来についてお話をし、それは人物にも適応できるという話をしましたが、このテキストは基本的に二次創作者を対象にしたものであり、つまり、キャラクターを新規で用意することはあまり一般的な行為ではないのですが、新規でキャラクターを用意する場合も、既存のキャラクターに肉付けをしていく場合も、同じようにそのキャラクターの「現在」そして「過去」と「未来」を設定することは、そのキャ

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物語以前02 「現在」と「過去」と「未来」

物語以前02 「現在」と「過去」と「未来」

 前項では「現在」と「出来事」を踏まえた「変化」についてお話しました。

 つまり、「現在」から「未来」へ移行していくということが「物語」であるといえます。

 さて、物語は「現在」からスタートしますが、この「現在」について、「なぜそのようになったのか」を考える必要があります。「なぜそのようになったのか」を考えるということが「設定をつける」ということです。

 これはひいては「過去」を考える、と言

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物語以前01-3 ストーリー

物語以前01-3 ストーリー

 前項までで、物語の基本的な構造について話しました。

・物語とは「現在」から「移動」することである

・「現在」という「日常」は「非日常」によって「移動」する

・「非日常」はキャラクター(ないし任意の何か)の変身あるいは別の側面の強調のために用意される

 さて、もう少し複雑な物語にチャレンジしてみましょう。

1、キャラクター、舞台、もともとあるもの、つまり「現在」「日常」の提示

2、出来

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物語以前01-2 AからA´への変身

物語以前01-2 AからA´への変身

 前項では、「現在」と「出来事」の関係、「日常」と「非日常」について書きました。

 重要なのは、「日常」に「非日常」が置かれると、キャラクターは必ず「変化」する、もしくは「日常」においては描かれていなかった側面にスポットが当たる、という点を外してはならない、ということです。その「変化」こそが物語の本質であって、「変化」をしない場合、それは単なる出来事で終わってしまいます。出来事は変化を描くために

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物語以前01-1 物語の基本的な捉え方

物語以前01-1 物語の基本的な捉え方

 さて「小説」とは、というより「お話」「物語」とはなんでしょうか?

 物語論という学問があります。そこではいろいろな難しい議論が行われていますが、基本的な考え方としては、物語の最小のかたちはこのように考えられています。

1、「誰か」が「時間的空間的に存在している」

2、「何か」が起こる

3、「誰か」は「何か」が起こった「あとの世界」に「移動」する

 たとえば「シンデレラ」は「虐げられて不

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「物語以前」のための序

「物語以前」のための序

 このマガジンは主として二次創作をはじめたいと考えているけれどなにをしたいかわからない人、そして小説を書くという行為に対して全くこれまで触れたことがなかったけれど書いてみたいと思っている人が、いったいなにから始めたらいいのか、という模索の一助として用意されたものです。2017年夏のコミックマーケット92にて冊子版の発行を予定しています。

 「特に二次創作者のために」と限定した理由は、「この胸に溢

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イメージから始まる物語

 さて、イメージとテーマについてお話ししましたが、これは必ずしも両方最初からそろっている必要はなく、イメージがあってテーマを立ち上げるということも、テーマに沿ってイメージを作り出すことも可能です。

 まずどちらかについてしっかり理解を深め、そこからもう一方を導き出していきましょう。

 ケーススタディとして自作についてお話しますと、『チュウレンジバチと薔薇』という小説は、

「パンケーキ人気店に

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物語の始まるところ イメージとテーマ その2

 前回のエントリでは、物語を「事件性」や「社会」というものとどう向き合っていくか、「ドラマティックであるとはどういうことか」「自然な伏線とは何か」という話をしていく際、まず最初に考えなくてはならないことは、

「物語を書こうとするとき、それを書くことでなにを描きたいのか」

「物語を書こうとするとき、それを書くことでなにを伝えたいのか」

 このふたつを明確にするということであり、これをイメージと

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物語の始まるところ イメージとテーマ

 小説技法講座として萩ゼミというのをやっております。

 で、最初は、まあ質問持ち寄りで、どういうことでお悩みですか、相談に乗って考えていきましょう、みたいな感じで6月やっていて、実際作品を作る方からの相談を受けてどうこう、というのが多かったのですが、やってみたところ、どうも、プロット以前、物語を作る以前のところの作業をもう少しやったほうがいいのではないか、ということがとても多かったのです。

 

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りるちゃんとユーハイムさん 1 物語の発生

「小説を書くにはなんらかのフィクションが必要だ」

 そうだね? とりるが言う。さらさらと落ちてくる髪を耳のうしろにおいやりながら、頬杖をついた彼は非常に優雅に笑っている。笑っているのは、彼自身がフィクションだからだ。

 ユーハイムは頷く。合意を取る。

「なんらかのフィクションが必要だね。フィクションがないものは、小説とは呼ばれない。それはドキュメンタリーとかそういう種類のものだと思う」

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※試聴版です。オリジナル版(20:46)は購入後に視聴できます。

10歳から17歳くらいまで、小説の書きだしだけを延々と書いていたことがあるのですが、それはどうしてだったのか、という話と、そのまわりのことなど、それから、何事もやりたいことをやってみたらいいよねみたいな話をしています。

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※試聴版です。オリジナル版(19:50)は購入後に視聴できます。

抽象から具体例を導き出すということ、イメージをモチーフにするということのケーススタディ、あるいは、自分にわかることから、キャラクターの輪郭をつかむ、ということについて