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物語以前01-1 物語の基本的な捉え方

 さて「小説」とは、というより「お話」「物語」とはなんでしょうか?

 物語論という学問があります。そこではいろいろな難しい議論が行われていますが、基本的な考え方としては、物語の最小のかたちはこのように考えられています。

1、「誰か」が「時間的空間的に存在している」

2、「何か」が起こる

3、「誰か」は「何か」が起こった「あとの世界」に「移動」する

 たとえば「シンデレラ」は「虐げられて不幸」という現在から、舞踏会を経て、「幸福な結婚」に至ります。「桃太郎」は「桃から生まれて育った」という現在から「鬼ヶ島」を経て「勝利、そして帰還」します。

 これらの物語は実際はもっと複雑な構造をしており、つまりこの「出来事と移動」をたくさん含んでいます。つまり、シンデレラは「父との幸福な生活」から「義理の母姉との不幸な生活」に移動し、また、「王子様へのあこがれ」から「王子様との対面」に移動します。

 しかしひとまず、今回のポイントは、物語とは「出来事と移動」である、という点です。そして重要な点ですが、「移動」をするためには、「現在」を明瞭にしなくてはなりません。


 二次創作において、大抵の場合、主題となるのは「好ましいと思っているキャラクターの魅力を描くこと」ではないかと思います。つまり、

1、「現在」とは「好ましいと思っているキャラクターは、作者本人にとって、どのようなキャラクターであり、かれにとって現在とはどのような場所、どのような時間軸であり、キャラクター自身にとってその状況は何であるか」を明確にすること

2、「出来事」とは、「そのキャラクターにとって、特別なこと、意外なこと、それが起こることによってキャラクターの心が揺さぶられること」あるいは「そのキャラクターの魅力がよりいっそう引き出されること、どのような人物であるかが描き出せること」

3、「移動」は、「1で描いたキャラクターの側面とは違う側面を描き出すことができること」

 といった使い方ができます。これは一例ですが、基本的に、「魅力的なキャラクターを、更に魅力的に描く」ために「出来事」を置く、というパターンがわかりやすいのではないかと思います。

 この「出来事」は、必ずしも特別なものである必要はなく、

1、やんちゃな男の子が

2、落とした消しゴムを拾ってくれて

3、親切なところもあると知った

 とか、

1、寝ている横顔が可愛かったので見ていたら

2、そのあと不機嫌になったので

3、起きていたことがわかってちょっと揉める

 とか、とにかく「ちょっとしたノイズ」くらいの感覚でひとまず十分です。「シンデレラ」がたくさんの「出来事と移動」によって成り立っているように、複雑な物語は、「ちょっとしたノイズとそれを受けての発展」の繰り返しで成り立っています。

 まず最初は「キャラクターの現在」をよく考えること、そこに「もしもこんなことが起こったら」を追加してみるところからはじめましょう。


 とにかく、作劇を始めるために最初に必要なのは、自分にとってそのキャラクター、もしくは任意のモチーフでも場面でもなんでもいいのですが、とにかく「始めに用意するもの」はいったいどんなものなのか、どこが素晴らしいのか、どこが魅力的なのかを明確にすることです。これが明確にならないと、なにを書いたらいいのかも全くわかりません。まつげが長いところでも腰の位置が高いところでも気難しいところでも、あるいは物憂げな雰囲気でも食事をとらないところでも、なんでもいいので言語化するところから始めましょう。

 次に大切なのは、生活における「移動」「ノイズ」「非日常」を認識することです。これは自分にとって興味のあることで構いません。「食パンが半額になっていた」が特別な非日常である人もいれば、「ライブに出かけていく」が非日常の人もいるでしょう。あるいは「人が死ぬ」くらいじゃないと非日常ではないと思う人もいるかもしれません。自分にとって好ましい非日常を集めてみましょう。そして、それがなぜ非日常なのか、そして、そこではいったい何が起こるのかを考えましょう。パンが半額だった場合、たとえばしばらくの間半額のパンが食べられて、お金が浮きます。うれしい! 


 どんな壮大な物語もまずここから始まります。まず自分の、つまりキャラクターの、日常と非日常、現在と出来事について考えましょう。

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