かなむらさん、ちょっと質問したいことが:二次創作BLが隠れなくてもよい理由

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>こんにちは。最近また二次創作BL隠れろ論が話題になっていますが、かなむらさんはどう思われますか?私はまたか…何度目の話だ…と徒労感を覚えました。

 返事する余裕がなくなっている間にビックウェーブに乗り遅れたような気がしますが、まあ例年話題になりますし、一回まとめておくと「この件に関しては以前書きました」ができるのでちょっとまとめておこうかと思います。

 まずこの問題は二点に分かれています。

・二次創作は隠れなくてはならないのか

・BLは隠れなくてはならないのか

 併せて、

・二次創作のなかでBLだけが隠れなくてはならないのか

 という点も挙げられるでしょう。


 さて、「BLは隠れなくてはならないのか」はさらに以下のような問題に切り分けることができます。

・同性愛を扱ったフィクションは隠されるべきなのか(ゾーニングの対象にされるべきなのか)

・同性愛を扱ったフィクションのなかでもBLだけが特に隠されるべきなのか

 まず前提として、同性愛を扱ったフィクションが隠されなくてはならない理由は何ひとつありません。ここに関しては説明の必要を感じないので割愛します。

 もし「同性愛を扱ったフィクションは隠されなくてはならない」と感じている人がいるならば、それは「同性愛者は隠れなくてはならない」と自分が思っているのではないかという点を自身に問いかける必要があるでしょう。もちろん隠れる必要はありません。そして、隠れる自由があるということと隠れる必要があるということはもちろん別の話です。

 そのうえで、同性愛を扱ったフィクションのなかでもBLという表現方法だけが特に隠される必要性があるというほど、BLという表現方法が「異色」なものであるとは、少なくともわたしには考えることができません。BLとはラブストーリーを描くひとつの発表形態につけられた名前であり、その定義には男性同性愛が含まれるというだけにすぎません。

 であるならば、同性愛を扱っているという理由でゾーニングの必要がないように、BLがBLであるというだけではゾーニングの理由にはなりません(性的な表現の過激さ等、別の側面でのゾーニングの可否についてはここでは述べないものとします)。


 さて、それでは、二次創作は隠れなくてはならないのでしょうか。これは同性愛とBLに関する問題より不明瞭です。隠れることが望ましい場合もあるでしょうし、隠れる必要がない場合もあるでしょうし、隠れても無駄な場合もあるでしょう。これは二次創作の対象となっている版権元との関係の問題であって、いちがいに「これが絶対に正解」という答えを出すことはできません。

 ただ、基本的には、インターネットが普及し、各公式の公式Twitter担当が用意され、エゴサーチが当たり前になった現在、「二次創作者」を客層のひとつとして版権元はカウントすると考えるのが自然ですし、その場合版権元は当然マーケティングリサーチのために「二次創作者」の調査をすると考えるのが妥当でしょう。

 つまり、

・二次創作に対してよい感情を抱いていない公式は存在するかもしれないし(とくにいわゆるナマモノ同人における微妙さ)、その場合は隠れる意味はあるかもしれないが、二次創作ガイドラインを発表していない公式との「空気の読み合い」を行うのはある程度徒労である

・しかし、基本的には、現在「二次創作者」はファン層のひとつとして認識されているし、隠れることにリソースを費やしても「発見される」「観測されている」可能性のほうが高い

・「隠れること」に意味はあるかもしれないが、「隠れる意義があるかどうか」を判断するのは各々であり、その行為を強要することは不可能である

・「隠れたい」は尊重されるべきだし、「隠れたくない」も尊重されるべきである

 といったところでしょうか。


 さて、そのうえで、「二次創作のなかでもBLだけが隠れなくてはならない」理由はなにかあるでしょうか。

 二次創作が望まれていない版権元というものが存在するとして、そこに「BLだけをとくに望んでいない」と、版権元自体が明言したならばともかく(それはそれで別の問題がありますが)、ファンの間の「空気」が判断するのはきわめて危険な状態ではないでしょうか。それは結局「自分の目の前に同性愛的解釈が存在してほしくない」「自分の世界に同性愛が存在してほしくない」という認識を持っているということ、ひいては周囲にそのような考え方を強要すること、になるのではないでしょうか。


 といったところで今回のまとめは終わりたいと思います。前回はたしか三年くらい前に書きました。また三年後にお会いしましょう。

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