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物語以前02 「現在」と「過去」と「未来」

 前項では「現在」と「出来事」を踏まえた「変化」についてお話しました。

 つまり、「現在」から「未来」へ移行していくということが「物語」であるといえます。


 さて、物語は「現在」からスタートしますが、この「現在」について、「なぜそのようになったのか」を考える必要があります。「なぜそのようになったのか」を考えるということが「設定をつける」ということです。

 これはひいては「過去」を考える、と言い換えることもできます。

 物語という「未来」が無数の「出来事」の上に成り立っていくように、「現在」もまた、無数の「出来事」の集積によって成り立っています。「現在」以前に起こった出来事が「過去」であり、「過去」を考えるとは、「現在を構成しているものを考える」ということです。

 そして、「過去=現在を構成しているもの」を考えることが、「設定をつける」ということです。

 二次創作の場合、「設定」は既に用意されていることも多いでしょう。しかし、全てが開示されているわけではありません。開示されていない(あるいはそもそも用意されていない)設定を夢見ることもまた二次創作の醍醐味のひとつでしょう。

 また、ここで必要とされる「過去」とは、必ずしも「そうであるべきこと」である必要はありません。少し極端な話をすれば、「開示された情報と矛盾する過去を用意すること」も手段として選択することができます。作者は自分の物語において「自分にとって必要な設定」を選択することができますし、それは作品にとって必要な選択である限り、どのようなかたちをとっていても構いません。

 物語を作成する上で、必要なのは「自分が書きたいもの」を明確にすることであり、それはときに「誰ひとり必要としないもの」であることも「誰の持っている設定とも噛み合わないもの」であることも有り得ますが、まず第一義として「自分の書きたいもの」と一致したものを書く(それが「誰かが求めているもの」であってもそれはそれで構わない)ことを目標にすることが物語を書き上げるモチベーションに繋がります。


 物語が出来事と出来事を受けて起こる変化によって構成されており、読者は最初から読み始めて最後まで読むという形態が一般的である以上、物語には「現在」を起点とした「過去」と「未来」が存在します。

 ここでいう「未来」とは先に述べたとおり「出来事を経たうえで変化すること」です。

 そして「過去」は「現在に至るまでに起こった出来事」です。

 「現在」とは、「過去の出来事を経て変化を重ねた上で、物語が出発する地点」です。

 として当然、「過去」と「未来」が「現在」によって繋がっている以上、「過去」に起こった出来事は「未来」に干渉します。逆に考えれば、「至って欲しい未来」がある場合、「未来につながりそうな過去」を導き出していくということも可能です。


 このような考え方は物語の構造だけではなく、「舞台」や「人物」に対しても適用できます。

 つまり、「この物語の始まる『場所』の過去」、そして「この物語の『登場人物』の過去」という、出来事の集積を考えていくことで、「現在の『それ』が至るべき『未来』」を導き出すことができます。

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