皆方探偵事務所異聞 得るものなし

「あっ」

「ゲッ」

「ちょっと、ゲッてなんですか」

「……入る?」

「パチ打つんだ、意外……」

「……入るなら入れば……べつにけーしゅくんは僕のことに詳しくはないし……」

「なに拗ねてんだ? 小学生か?」

「うるせえ」

「ねーミナカタさん、まえから思ってたけどそのカーディガンの色なんなの。顔色が悪く見えるよ」

「うるせえクソガキ」

「うわっ、大人気がない」

「入るなら入れば」

「どう、その後」

「話しかけるな」

「いやいやいや、おかしいでしょ。そこまで真剣にやる遊びじゃないでしょ」

「俺は遊びは真剣にやる主義なの。というかなんで隣に座るんだよ」

「おれ」

「……あっ」

「ミナカタさんさあ」

「……なに」

「なんなの?」

「なにが」

「まじのカマトトなの? それともまじのバカなの?」

「君に関係ない」

「ワッハッハ。よく言うよ。その後どう?」

「なにもないよ」

「セックスした?」

「ぶち殺すぞ。……一本ちょうだい」

「メンソだけど」

「いいよ」

「えー。えー、なんなんだよ小学生か? なんで? ふつうに疑問なんだけど」

「火をください」

「タバコこっち寄せて。吸って」

「……はあ!?」

「キスした仲でしょシガーキスくらいで慌てない」

「してない」

「アッハッハ。はい息吸って」

「……あのさあ。そもそも付き合いたいとは言っていない」

「意味わかんない。好きなんでしょ?」

「好きだからこそ引くべき線があるでしょ。上司と部下だよ。引くべき線を明確にしましょうと言っただけで、付き合いたいわけではない」

「あのね。でもミナカタさんさあ」

「……なに」

「つらそうに見えるけど」

「……そりゃそうだろ、僕が、罪人かどうか、判断を今、してもらってるところ、なんだから」

「あっ」

「おっ」

「ふはは。徳が高いからねー」

「そうだね」

「……ミナカタさんてバカなの?」

「けーしゅくんは格好良いし、良い奴だよ」

「バカか? あのさあアンタは罪人ではないよ」

「……それは君が決めることではない」

「頑固」

「倫理観の問題です」

「こっちに倫理観が欠如してるみたいに言われてもただのやつあたりにしか聞こえないんだけど」

「やつあたりってことでいいよ」

「拗ねるな。小学生か?」

「そろそろ出る?」

「あー。まいっか。出よ」

「なんか奢ってあげる」

「勝ったのこっちですけど」

「いいから。牛丼でいい?」

「牛丼て気分じゃないな」

「うどんは」

「丸亀製麺がいい」

「いいよ」

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