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物語以前01-2 AからA´への変身

 前項では、「現在」と「出来事」の関係、「日常」と「非日常」について書きました。

 重要なのは、「日常」に「非日常」が置かれると、キャラクターは必ず「変化」する、もしくは「日常」においては描かれていなかった側面にスポットが当たる、という点を外してはならない、ということです。その「変化」こそが物語の本質であって、「変化」をしない場合、それは単なる出来事で終わってしまいます。出来事は変化を描くために用意されたものであり、それがなんの変化ももたらさない場合、逆説的に言えば、それは「非日常」ではありません。

 「出来事」は、「以前」と「以後」をつなぐ存在であり、「AがAであることを証明するもの」ではありません。

・「AがAであることを証明する出来事」=「変化をもたらさない出来事」=「現在」「日常」

・「AがA´に、あるいはAがBに、Zに、変化する出来事」=「非日常」「ノイズ」

 として考えてください。


 この場合の「変化」とは、必ずしもキャラクターA自身の心境や状況が変化する、という必要はありません。

 前項で述べた、

1、やんちゃな男の子が

2、消しゴムを拾ってくれて

3、親切だなと思った

 における「やんちゃな男の子」はもともと親切であるとも考えられます(もちろん、何らかの心境の変化があってのことである可能性もありますが)が、読者にとって「やんちゃな男の子」は2を経て「親切な男の子」に変化しています。読者にとって、という点がポイントです。

 つまり、キャラクターの側面Aとキャラクターの側面A´を用意し、それを繋ぐ出来事を「非日常」として用意する、という考え方で、「日常から非日常への移動と日常の変身」という式を満たせます。


 前項で、扱うキャラクターの「現在」について考える必要がある、と述べました。

 さて、この「現在」では描ききれない部分、あるいは、特に強調したい部分、あるいは、「そういう側面があるとは言い切れないけど、でも、そうだったらもっと素敵だな」と思える側面が、キャラクターの「変身」した姿です。

・どのように変身する、あるいは特別な部分にスポットがあたるのか

・どのように変身すると素敵だ、あるいはおもしろいと思えるか

・より魅力的に見せることができるか

・よりキャラクターの性格等を読者に理解してもらえるか

「出来事」を考えて「その後の変化」を考えるより、「その後の変化」を考えてから、適切な「出来事」を考える方が得意、あるいは楽しい人も多いと思います。どちらが先でも構いません。楽しい方をやってみましょう。

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