昔々、腐女子がいました。

　腐女子は受攻固定でした。キャラクターの１対１の組み合わせと立ち位置を絶対に変更しないという意味です。厳密な言い方をすれば攻受固定ということになります。

　腐女子は受攻固定であることこそが最も正しいと考え、それ以外の、攻をすすんで取り換えるいわゆる総受厨のことを忌み嫌っていました。それくらいなら逆カップリングの方が全然マシというか、むしろそれはありでした。その組み合わせならむしろありでした。些細な問題でした。

　と考えるほかないほどに腐女子は追い詰められた環境にいました。

　そのようにして腐女子は固定の人々としっかりした関係を築き楽しく生活をしていました。そしてある日公式の供給を見て、腐女子はふと思いました。

「ＣＡ。わかった」

　腐女子はＡＢ固定でした。

　腐女子はＡＢ固定腐女子でした。

　腐女子は萌えてしまった自分に愕然としました。自分の出した答えがいったい何なのか腐女子には全くわかりませんでした。たしかに総受ではありません。だから何だというのか。固定はどこへ行ったのか。ＢＡを読みすぎたのだろうか。それはそれで間違っているのではないか。

　しかし腐女子はもはや妄想をやめられませんでした。

　腐女子は仲間たちには黙ってpixivのアカウントを新しく取り、できるだけ違う雰囲気のハンドルネームで、できるだけ違う作風で、作品の投稿を始めました。

　そしてある日、腐女子は、一人の友人が、Twitterのタイムラインに、pixivアドレスを貼っているのを見つけました。腐女子はそのアドレスを見、そこにつけられた短いコメントを見て、深呼吸をして、そして、LINEを開きました。