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「物語以前」のための序

 このマガジンは主として二次創作をはじめたいと考えているけれどなにをしたいかわからない人、そして小説を書くという行為に対して全くこれまで触れたことがなかったけれど書いてみたいと思っている人が、いったいなにから始めたらいいのか、という模索の一助として用意されたものです。2017年夏のコミックマーケット92にて冊子版の発行を予定しています。


 「特に二次創作者のために」と限定した理由は、「この胸に溢れる何かを、何かの形にしたい。でも、いったいどこから手をつけたりいいのかわからない」という衝動は、とくに二次創作者において顕著なものであり、また、そこに「何か」が存在していることは紛れもなく確かなことだからです。「書きたいことがある」、これを本稿では前提として扱います。ゆえに、「書きたいことはどのようにして探し出せばいいのか」に関しては触れません。

 「書きたいことはある。それが物語のかたちを取ることが出来るかどうかすらあいまいだけれど、すくなくとも、自分にとって特別だと感じられた、なにかは存在する」という衝動を抱いている二次創作者(あるいはそれを志している人)はたくさんいらっしゃいます。そして創作というかたちでその「特別さ」に接することは、「それが特別なものであるという証明」であり、また「その特別さが共有可能な具体的なものであるという可能性をかたちにすること」でありえます。

 創作全般ですが、ひとつの側面として、「架空の実在性を手に入れたい」とか「架空に接触したい」という感情、「そこにある何かを、『ある』と言いたい」という欲望、そういうものがあって、それはたとえば「可能性」を幻視するという行為だと、わたしは認識しています。そしてその「可能性」は、「絶対にこのかたちをしていなくてはならない」ことがあって、だから「わたしが幻視した彼らの人生やその続き」は「たとえほかの可能性を裏切るとしてもそのかたちをしていなくてはならない」ということがありえる、という意味において、その二次創作は書かれなくてはならない。そういった、「わたしは彼らの可能性を見ることができる」「彼らの可能性に触れることができる」という確信を、なんらかのかたちにしたい、感情のやり場がない、そういう欲求を、たとえば「小説を書く」というかたちで解消していく一助になれば幸いです。

 もちろん、二次創作者ではない方のお役にも立てれば、たいへん嬉しく思います。

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