悪役

 昔々、悪役であることだけのために作られた悪役がいました。

 作品のファンはみんな彼が嫌いでした。

 作品のファンはみんな彼が嫌いだということになっているので、作品のファンは彼を罵っていいということになっていました。

 彼はそもそもそのために作られたキャラクターでした。なにもかも全部彼のせいであるというシステムでした。責められるためのスケープゴートでした。実際全部彼が悪いということになっていました。彼を生み出した作者もたぶんそう思っています。

 そして彼を好きな誰かが部屋の隅で言います。

「どうせわたしの言っていることなんてわからないんだろうけど」

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