承認欲求

 昔々、腐女子がいました。

 腐女子は創作をする腐女子でした。

 いまではインターネットに、とても気軽に、創作物を投稿することができます。それは価値が数値化され、嫌が応にも、腐女子はその数値に振り回されて行きました。

 まわりのみんなはとても落ち着き払っているように見えます。どうして自分はこんなに気にしてしまうのか、どうしてこんなに数字ばかりを気にしてしまうのか。

 腐女子は周囲の投稿作品の傾向について調べあげ、分析して、その通りにトレースした作品を作りました。けっこう伸びました。

 けれどそれで満たされるかというと、そんなことはありませんでした。満たされないまま彼女は必死で、読まれるためには、そして満足するためには、どうしたらいいのかを考え続けました。

 数字以外の何かを、彼女はもう信じることができません。良い作品だったと言われても、数字が伸びていなければ意味がないと思っています。たくさんの人に読まれなければと思いながら、焦り続けています。彼女の世界には敵がいます。彼女をけっして認めてくれない敵が。

 ジェノサイドの夜です。誰かが死ねばいいと思う。

 わたし以外の全部が死んでしまえば、わたしだけが特別なのに。

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