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リストラーズバラードセレクション ①セーラー服と機関銃

はじめに

 「脳内実況」シリーズがとりあえず一周したということで、次に書くものについて考えてみました。
 もちろん、同じシリーズで取り上げたい動画は他にもあるし、続けるのも一案。けれど、ちょっと気分転換で、毛色の違う物も書いてみたい。
ということで、せっかくなら「脳内実況」のスタイルでは書きづらいバラード曲、それも視覚的な演出が抑えめの動画について、じっくりと味わいながら書いてみようと思います。
 そもそも筆者は、フリータイムヒトカラ8時間のうち6時間以上はバラードを歌っているくらいのバラード好き。もちろん、聴くのも大好き。「脳内実況」シリーズで扱えない以上、遅かれ早かれ、こうするしかないのです。うん。

 ちなみに、「脳内実況」の方と同じく、こちらもあくまで筆者の感想というか、鑑賞メモ的なものと言えば聞こえはいいけれど、ある意味酔っ払いの戯言に近い何かを書き連ねていくだけなので、その点はご容赦いただきますよう。表現がまどろっこしくなるのを避けるために断定型の書き方になっている部分が多いのですが、それは筆者の脳内での話。基本すべての文に「たぶん」「と思う」「ような気がする」がついているということでご理解ください。

 このシリーズ(続くとは言っていない)の1本目は、大好きな動画「セーラー服と機関銃」から!


イントロについて

 まずはイントロについて。
 時間で区切るスタイルにはしない予定だが、この曲に関してはイントロに語ることが多すぎ、しかも歌詞の部分とは一味違うので、別枠で語ってみたい。
 上村さんによるカウントの時点で、音に他の曲とは一味違う深みを感じる。音響には全く無知なのであやふやな印象だが、ボイパに限らず全体的に、リバーブが強めなのではないだろうか。
 これは収録環境の影響なのか、MIXの際に意図されたものなのか。いずれにしても筆者好みで、この時点で続きが聴きたくて仕方なくなる。
 続いて澤田さんによるメロディとコーラス3人の和音。ここのメロディに澤田さんを持ってきたところにも、編曲の妙を感じる。音域的なことで言えば、高くも低くもなく、男性にとっては歌いやすい音域なので、ほかのメンバーでも問題なかったはず。コーラスの一番下の音と比較しても明らかに低いという印象ではないので、加藤さんと澤田さん、お二人がどちらのパートを担当するのかは、何かしらの理由があって決められたのではないだろうか。
 個人的にそれは、澤田さんの声の太さや重さにあるのではないかと思う。メロディの動きを全体の下の方、土台に近い部分に置いて、そこに柔らかいコーラスの和音を載せるバランス。特に0:16あたりからの、コーラスが幻想的な和音を奏でる部分で、特に分かりやすく感じられる。重みのある澤田さんの声をメロディに置き、ふわりと柔らかい加藤さんの声をコーラスに持っていくことで、イメージがより立体的になり、空間的な広がりを感じられるように思う。(非常に感覚的なことなので、うまく表現できなくて申し訳ありません)
 続いて、澤田さんを含めたコーラスが2人ずつに分かれての掛け合い。このようにコーラスが2組に分かれる場面は他の動画でも時々出てくるが、今回の「野村さん&加藤さん」「草野さん&澤田さん」の組み合わせが一番多のではないだろうか。個人的に、2つのペアの個性がはっきり出て、それでいて両者のバランスがとてもいい、この組み合わせがとても好きだ。
 この部分では特に、草野さんと澤田さんの声の合わせ方が最高だ。割と細かい動きをしているのに音の輪郭がはっきりしているし、草野さんが敢えて声を張らずに抑えていることで、華やかになりすぎない落ち着いた旋律になっているのだ。
 え、野村さんの話をしないのかって?それはこの後いくらでも出てくるのでご心配なく。(書いてしまうとイントロだけでとんでもない分量になってしまうのです)

リードボーカルについて

 …さて、いよいよ本題である。ただでさえ野村さんが最推しの筆者が、最も好きな野村さんのリード曲。がんばって書きます。うう、少しお腹が痛くなってきた…。
 歌い出しから、透き通った美声にうっとりしてしまう。そもそも最初の音はG4#と、男性にとっては割と高い音域のはずなのだが、野村さんの歌声を聴いているとそれを忘れそうになるほど、まったく無理がなく、自然な響きである。 
 ただ、この曲における野村さんの「良さ」は、そんな技術的なことで説明できるものではない。高音を無理なく出せる発声技術はもう大前提として、声の表現が素晴らしすぎるのだ。

 野村さんの表現力については、他の記事でもあれこれと書いているのだが、何かが憑依したかのように、その曲の魂のようなものを表現できてしまう方だ。歌詞に感情を乗せる、という域を超越している。 
 この曲でいうと、歌詞の主人公は少女(セーラー服を着た女子高校生)だが、視点としては彼女を見守る男性である。そして、野村さんの歌声に「憑依」しているのは、少女そのものでもなければ、もう一人の登場人物というべき男性でもない。 
 限りなく透き通って純粋で、それゆえにブレることのない頑なな強さと、「少女」という存在が内包する儚さと危うさ。これらは、少女自身の視界には映らない。きっと、「男性」の目に映る少女の姿なのだ。

 原曲の薬師丸ひろ子さんの場合は少女自身に近い印象で、どことなく生々しさや現実感のようなものがあるのだが、野村さんの場合、リアルに、しかし芸術作品として描かれた肖像画のようなイメージがある。もうひと段階、偶像化されているというのか…。これも、第三者の目に映った姿、ということで納得できてしまう。
 しかも、これがまた美しいのだ。限りなく透明で頑なで、でも繊細で、触れると壊れてしまいそうな脆さを孕んだ目が離せない存在感。そして、男性を惹きつける艶めかしさ。筆者は、クリスタルガラスの細工物のようだと感じている。歌詞の語り手である男性の目には、少女がどんな存在に見えていたのか。男性である野村さんの声を介しているからか、「少女」が抽象的になっている代わりに「男性」の視点の存在をリアルに感じてしまう。いやもう、本当にすごい…。

 野村さんはこれを歌声で表現してしまう。もちろん、先に挙げた印象は筆者が勝手に抱いた印象を無理やり言語化したものに過ぎない。野村さんご本人はこんなふうに言葉や理屈をこねくり回していたわけではなく、曲から受け取ったイメージをご自身の解釈で表現した、という感じだと思うのだけれど。それでこれほどの表現を、というあたりが、役者が違うということなのだろう。

 ちなみに、ここでは歌声の表現力として語っているが、野村さんは表情や何気ない身振りなども、曲によって驚くほど違う印象になる。この曲では、曲の世界に半分くらい浸っているように見える(残りの部分で冷静に、それをどう表現して伝えるかを考えていらっしゃると思う)。曲が終わった後のあの部分は、野村さんご自身が余韻をかみしめているようで、歌っていて気持ちいいんだろうなぁと、少しうらやましくなってしまった。

 本来ならここから好きなフレーズなどを挙げて紹介していくのがいいと思うのだが、この曲に関しては「全部!」となるので、さすがに人様に読んでいただくようなものではなくなってしまう。ということで、無理やりにでも一番印象的だった部分を選んでみた。「夢のいた場所に未練残しても 心寒いだけさ」のあたりだ。
 最初のフレーズよりも一段高い音になり、澄み渡った、それでいて幻想的な歌の世界が広がっていく。そして、気づけばうっとりと聴き入ってしまうのだ。記事を書くために再生していたなんてことはすっかり頭から抜け、一時停止ボタンなど押せずに最後まで聴いてしまう。ここに到達するまでに、これを何回やったことか…。結局、大半を脳内再生に頼る羽目になったのは本当の話である。
 それほどまでに、筆者にとっては魔力と言っていいほどの魅力を感じさせてくれる。筆者の持つ野村さんの歌声のイメージは、この部分がベースの一つになっている気がする。

 野村さんのリード曲は数あれど、個人的に一番好きな声を聴けるのがこの曲だ。ラブリーアイドルも男性曲も、もちろん大好きなのだけれども、別腹だ。このタイプの声で踊るのは想定できないわけで、でも野村さんの振り付けも大好きなわけで…ゴニョゴニョ。
 元々曲が好きだというのも影響しているが、野村さんの歌声の繊細な表現力が最も生かされている曲と言ってもいいのではないだろうか。

リズム隊&コーラスについて

 筆者がこの曲のリードボーカル、野村さんの歌声が好きすぎるのは、ここまでお読みいただければご理解いただけたかと思うのだが、リードだけが好きなわけではない。この曲は、他のパートも聴きどころが満載だ。

 まずはリズム隊。
 先にイントロの項で上村さんのボイパについて述べたが、大西さんのベースも、他の動画以上に、音に深みがあるように感じられる。リズム隊のカッコよさが際立つ動画でもあるのではないだろうか。
 ボイパに関しては、迫力のあるバスドラ音もさることながら、少し普段より低めの音に調整されている気がするクラッシュシンバル音がとても印象的だ。上村さんが演奏したくて選んだ曲(※)だという点は、何か影響しているのだろうか。
 ベースはと言うと、他の曲にも増して、人の声に聞こえない。ゆったりした曲調の割に、ベースは案外忙しくリズムを刻んでいる。しかも、音の飛び幅がかなり大きい。それが変に耳に障ることがなく、凄みのある低音が、この曲が持つ少し不穏な気配を含んだミステリアスさを際立たせているように感じる。

※ リストラーズには、重要な活動の一つであるセ・リーグ順位予想で最も的中率が高かったメンバーが、翌年中に1曲好きな曲を選曲する権利を得るというシステムがある。「セーラー服と機関銃」は、2021年の順位予想で権利を得た上村さんが選曲した。なお、2022年も上村さんで、「今日もどこかでデビルマン」を選曲されている。詳しくは「昭和98年(西暦2023年)リストラーズ活動報告」参照。 

 続いてコーラス。まずは、加藤さんのリードに寄り添うようなハモリについて。
 加藤さんのコーラス時の歌声はとても柔らかく、周りに良く溶け込む音色だ。基本的に内声担当ということもあって、そこに音があるとわかっていても聴き取れないことが多い印象だが、今回はリードとのペアなので、分かりやすく加藤さんのハモリを堪能することができるのだ。
 特に後半、「恋もコンクリートの籠の中」。リード野村さんの後ろでなく、隣に出てくるような存在感をもって歌われるこのワンフレーズが、曲の持つ清潔な色気のようなものを鮮やかに表現している。合唱団のアルト経験者である筆者としては、何より美味しい大好物だ。

 最後に、伴奏としてのコーラスについて。
 いつものことながら、リストラーズのコーラスは声の寄せ方が素晴らしい。何がすごいって、在宅勤務でそれをやるのだ。寄せるべき相手の声が聴こえていない状況で。草野さんに至っては、集合練習への参加すら不可能なのに。このあたりの調整は、長年の経験による阿吽の呼吸なのか、収録方法に何か秘訣があるのか…。謎は深まるばかり。
 ともあれ、この曲でも一糸乱れぬコーラスは健在。特に好きなのが、これもリストラーズの得意技(と筆者が勝手に呼んでいる)、「ポポポポン♪」。3人でつなげているのに、何の違和感もなく一つのメロディに聞こえるのはかなりハイレベルな技術だと思う。普通は、どうしても多少の凸凹や音色のばらつきが出てしまいそうなのに。
 また、大サビ前の「あ~ああ~ああああ~♪」も好きなポイントだ。草野さんがかなりの高音(おそらくC5#)まで上がっていくのだが、普通に歌うと草野さんの声が飛び出しそうなところである。しかし、実際にはむしろ草野さんの声が抑えられていて、澤田さんの声がかなりの存在感をもって聞こえてくる。しかも、シンセサイザーなどで和音を弾いているかのように、音色が揃っているのだ。
 音量のバランスはMIXで調整できるだろうが、音色はそうはいかない。力強く、それでいて軽やかで力みすぎないバランス。草野さんが調整しているのはもちろんだが、澤田さんや加藤さんもおそらく、繊細な調整をしていると思う。
 普通にやったら目立つところが、さりげなく引っかかりなく、背景として流れていく。このようなさりげないところにこそ、職人芸を見つけられたりするのだ。鑑賞ポイントは無限大…。

おわりに

 いやはや、難産でした。ギンギラギンの時も難航したのですが、それどころではなかったですね…。3回、最初から書き直したくらい。最終的に、妙なテンションの文章に仕上がってしまったし。
 シリーズっぽいタイトルを付けたけれど、同じ勢いでほかの曲について書くなんてできないことに気づいてしまい、軽く頭を抱えています。続くのか??無理では??
 それでもバラード曲を扱うシリーズはやりたいので、この曲が別格ということでご理解いただければと思います。 次からはもう少し大人しいです…。