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警察官の不倫

不倫は文化だ。

そう言い放ったかの有名なJイチもいたし、ホテルから出たところを激写されたD悟はいたしてないわけないじゃろうと笑ってのけた。

SPEEDのI井さんは手つなぎ議員交際費湯煙不倫旅行をしていたし、Y尾さんだってガタイのいい弁護士といちゃついていた。

彼らは今でも表舞台で活躍されているし、なんとなく許されている感がある(Y尾さんは政界引退したけども)


かと思えば秋田が生んだ国民的女優をめとっておきながら、いくら多目的トイレだといっても、設置者の想像の斜め上をいく目的で使用したグルメ家もいたし、夫が帰ったらベッドで真っ最中の娘もいた。

彼らは自らの性癖まで日本中に晒された上に長期間の謹慎までつけられ、今でも許されていない感がある。


やってることの本質は何も変わらない。世間のイメージから叩きやすいところは徹底的にたたく日本人の悪いところだと思う。そう誘導するメディアが一番タチが悪いのは当然の大前提ではあるのだが。


不貞を働きやすい職業の特徴の1つには、【勤務が不定期】というものがあるだろう。政治家、医者などはその最たるもので、わたしがツイッターで見かけてきたお医者さんたちは心あたりがありすぎるはずだ。


警察官も例に漏れない。交番勤務の警察官は24時間勤務・非番・週休を繰り返す3交代制がほとんどだし、刑事課なんて夜も遅いし捜査で深夜まで張り込むなんてことも日常茶飯事、生活安全課だって夕方以降の街の風紀を守らなきゃいけない。ほぼ全員の警察官が「休みだけど仕事がある」「今日は遅い」という言い訳で家を留守にできるのだ。


『え、おめ知らねーの??交通の井川って生安の安藤と不倫してんだよ』

安藤さんは生安の係長。コワモテオールバック、イメージは鬼浜爆走愚連隊。

ちなみに交通の井川さんはというと、井川遥と倉持由香を足して3で割った感じの独身20代後半おっとり系おっぱいである。


『え、まじですか?全然そういうイメージないんですけど係長って結婚して子どももう高校生とかですよね?』

仕事終わりにはよく係長のBMWでホテルへ直行しているらしい。まだエアシューターがある海沿いのあのホテルによく行くと聞いた。たしかにヘビースモーカーの2人にはあの昔ながらの淀んだ空気はいいかもしれない。ちなみにわたしはそこに1回しか行ったことがないが、勢いよくベッドに倒れこんだところ意外に硬いベッドで腰をがちゃめかして至すどころではなくなって以来、行ったことはない。ラブホなのに硬いベッドのところは早く倒産しろ。ふかふかのベッドでびよんびよんしながらするのがいいんでしょうよ。


その不倫を聞いてから、係長のBMWもまだ若いなあとかいうことを考えながらたまに一緒になる仕事をこなしていた冬、わたしは連休がとれて仙台のクリスマスページェントを見に来ていた。


東北の人には馴染みのある結構大きなイベントで、わざわざ秋田の山奥から行くかいもあるイベントである。まあ光のイルミネーションを観るだけのイベントではあるが恋人同士がぶらぶら散歩するにはちょうどいい。

『とりあえずホテルチェックインしてからにしますかー』

仙台ウェスティンホテルにチェックインしたわたしたちは上にいくエレベーターを待っていた。

(ちーん・・・うぃーん)
『あ・・・ああ・・・お疲れ様です』

人間ほんとにどうもならない時は意味のわからない挨拶をしてしまう。不倫上司カップルのほかに何人か乗っていたのだが、ばっちり目があってしまった。あの時気付かなかったらどれだけの人が幸せになっただろう。わたしたち4人か。

その夜遅く、係長のBMWが落ち着いた頃に井川さんからメールがきた。

『お互い無かったことで手打ちね』

よかった。このまま音沙汰無しだったら次の出勤日どういう顔したらいいかわかったもんじゃない。助かった。


そして、その日の事はしばらく話題になることもなく時が過ぎた。

ある日の交番の飲み会。交通課からうちの交番に配置換えになった磯村さんの歓迎会だった。署長の悪口を肴に新政や雪の茅舎を飲みすぎたわたしはいつもより饒舌になっていた。下世話な話がすすんだ飲み会も終盤、交通課から来た磯村さんに、井川さんの不倫の件を伺ってみた。交通課内から見た彼女らの不倫はどう映っているのか、気になってしまったのだ。

『え、そうなの??全然知らなかったけど・・・いつからなのそれ?』

磯村さんも興味津々で、いつからなのかはわからないけど結構長いみたいで、わたしがこの署に来てからはそうだったみたいなことや、あのホテルよくいくって聞きましたとかいろんなことを話してたら会はお開きに。

やっぱ係長も井川さんもバレないようにうまくやってるんだな。そんなことに感心した飲み会だった。


『この前の飲み会磯村と何こそこそ話してらったんだー?』

次の交番勤務日、ソファにふんぞりかえっていた交番所長がわたしに問いかける。交番所長は噂話にめっぽう強い。井川さんと安藤係長の不倫も所長から聞いた話である。

(どうでもいい話だけれども、交番で一番偉いのは交番所長で、警察署で一番偉いのは警察署長。所長と署長。だいたい年齢は同じくらいだが所長は警部補、署長は警視なことが多いので聞き間違えは命取り。階級章をしっかり見ないと後でとてもとても大変な事になる。)

『井川さんと安藤係長の不倫のことちょっと聞いてましたー。磯村さん知らなかったみたいでめっちゃ色々聞かれましたよ。』

所長はおいおいまじかよみたいな顔をして天を仰いだ。

『井川と磯村つきあってんだよ。結構長い。』

終わった。コノヨノオワリ。ブラックマンデー確定。

ごめん井川さん。仙台のことは誰にも言ってないけど・・・あの約束破るよりやばいことしてしまいました・・・。

その後、井川さんと磯村さんがどうなったかは知らない。

ただ次の秋、安藤係長と井川さんは季節外れの県内2人だけの異動辞令を受けた。係長は県南の端に、井川さんは県北の端に配属され、井川さんは辞職した。

わたしは上手くやり通した。

あの仙台ウェスティンホテルのエレベーター待ちで手をつないでいた人と結婚して、秋田の山奥で平々凡々と生きている。

井川さんほんとごめん()いつか会ったら謝りたい。


この物語はふぃくしょんです。

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