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ビールが美味しく感じるきっかけは思い出と共に。

学生の頃、なぜだか「とりあえずビール」が憧れだった私。
きっと、父の影響だったと思う。

私がまだ小さな頃、仕事帰りの父はすぐに冷蔵庫へと向かう。
夏のわが家には、いつもキンキンに冷えた瓶ビールがはいっていて、
ビールの栓を抜くのと、グラスに注ぐのは私と弟の役目。

プシュッと栓を抜いて透明のグラスにビールを注いだあと、
ラベルに隠れている「キ」「リ」「ン」の文字を探すのが日課だった。

苦手だったビールの香り

瓶に顔を近づけたときに香る、
ホップの独特の香りが「うえっ」って感じだったけど、
大人になったらきっと好きになれるものだと思っていた。

それから数年が経ち、ビールを飲める年齢になったけれど、
相変わらず、あの独特の匂いが得意になれないままの日が続く。

念願の「とりあえずビール」デビューはしたものの、
(うぅ〜〜〜〜苦い…)と頑張って飲み干すのがやっとだった。

ビールが美味しく感じた瞬間

いつからだろう、ビールが美味しいと感じるようになったのは。

社会人になって数年がたった頃、
出張先で飲んだビールの味は今でも忘れられない。

はじめて仕事で大役を任されて、取引先の前でプレゼンを終えた日のこと。
ちょうど今日みたいに、暑い夏の日だった。

緊張と焦りと不安やらで、その時のことはほとんど覚えていない。

無事に大役を果たして、はぁっとひと息ついたあと、
宿泊先の近くでいつも通り「とりあえずビール」で乾杯した。
すべてを出し尽くして抜け殻のようになった私を、チームのみんなが労ってくれた。

あのときは、肩の荷がおりた開放感と達成感と、
暑さのせいなのか、気が抜けたせいなのかはわからないけれど、
喉の渇きを思いだして、勢いよくグイグイと飲み干したのを覚えいる。

(ビール、うまっ!!!)

と少し驚きながらも、はじめてビールを美味しいと感じられたのは、
あのとき、あの場所で、いろんな経験をして、
それを分かち合う人の存在があったからなのかもしれない。

きっとあの時が、はじめて大人になった瞬間だったのだと思う。
あれから、ビールの苦味さえ心地よく感じるようになった。

ビールは思い出と共に味わうべし

仕事終わりに飲むビールも、お風呂上がりに飲むビールも、
友人や同僚たちと一緒に飲むビールも、
いまではどんなシーンでも美味しいと思えるようになった。

だけどやっぱりあの時のビールの味は忘れられない。

ビールそのものの味だけじゃなくて、その時の思い出や感情が一緒になって、
特別なものに感じられるようになるのだと思う。

人生の酸いも甘いも苦味も知って、ちょっとずつ大人になっていくのかな。

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