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「ほんとうに欲しい未来」を語るべきは若者だ──9月15日開催〈trialog summit〉に寄せて


「すでにして狭まった可能性と、自由な選択をもはや許さない現実が重くのしかかってしまっているおっさんには、『ほんとうに欲しい未来』なんていうお題はすでにしてあまり意味がない」「まだ見ぬ社会は、若者たちのものだ。いま『ほんとうに欲しい未来』を語るべきは若者だ」──「ほんとうに欲しい未来はなにか?」を考えるカンファレンス+ライブ《trialog summit》 (9.15 @渋谷ヒカリエ)に込めた思い本当の思いとは?  trialog共同企画者で、黒鳥社コンテンツディレクター若林恵が綴った。

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おっさんおばはんはそこにはもういないのだから

文・若林恵

SONYと黒鳥社のコラボによる「trialog」は、バックグラウンドの異なる三者が集い、「ほんとうに欲しい未来はなにか?」を語り合うトークイベントシリーズだ。今年で2年目、計7回開催された。

当代きっての鬼才ゲームクリエイターのデイヴィッド・オライリー、上海の気鋭の写真家・アートフォトパブリッシャーのシャオぺン・ユアン、電子音楽の先端を走るワンオートリクス・ポイント・ネヴァーから、文化人類学者の松村圭一郎さん、音楽家のtofubeatsさん中村佳穂さん、ハリウッドで活躍するコンセプトアーティストの田島光二さん、写真界のレジェンドの森山大道さんなど、分野の異なるユニークな方々に登壇いただき、毎回ユニークな議論が行われた。

回を重ねるなかで見えてきたのは、若いお客さんの反応の鋭さだ。熱心にメモを取り、ハッとするような質問を繰り出す彼らの切実さを受けて、登壇する側もいっそう前のめりになり、ことばにも熱がこもる。そこで改めて、「ほんとうに欲しい未来はなにか?」というお題の重たさに思いいたることとなる。自分みたいなおっさん(71年生まれ)の「ほんとうに欲しい未来」なんて、実際のところどうでもいいな、と。苦笑。

いや、ぶっちゃけ言うと、すでにして狭まった可能性と、自由な選択をもはや許さない現実が重くのしかかってしまっているおっさんには、「ほんとうに欲しい未来」なんていうお題はすでにしてあまり意味がない。それはせいぜい「こうだったらありがたいかもしれない老後」くらいのことしか意味しない。老後に必要とされる2000万円とやらをなんとかしないとな、とか。

もちろん、その間にやるべきことはやりたいものだが、それもまた自分の人生の話でしかない。「trialog」で語りたい「ほんとうに欲しい未来」は、そういうことではなくて、本来的には「社会」の話だ。10年後、20年後、あるいは50年後、100年後、この社会はどういう社会であって欲しいと願うのか。いまこの瞬間この社会でふんぞり返っているおっさんおばはんはそこにはもういない。とすれば、まだ見ぬ社会は、若者たちのものだ。

いま「ほんとうに欲しい未来」を語るべきは若者だ。優先されるべきは、いまここにいるおっさんおばはんの願いではなく、いずれその社会で成功したり失敗したり、泣いたり笑ったりすることになる、彼・彼女らの願いであるべきだ。おっさんおばはんのそこでの仕事は、彼ら・彼女らの声にきちんと耳を傾け、おっさんおばはんの見識において、その願いを鍛え、豊かなものにしてくことではないのか。「trialog」が回を重ねるごとに感じるようになったのは、そういうことだ。

今年に入って、お客さんを30歳以下と限定し、生真面目でいて遊び心のある20代の編集長が率いるメディア「NEUT Magazine」のサポートを得るなど、「trialog」をぐっと若者方面へとシフトさせたことにはそうした背景がある。それはおっさんである自分が、彼らのスコープを通して「未来のすがた」を学ぶプロセスでもあったと思う。

9月15日に開催するtrialog初のカンファレンスは、そうした思いが凝縮されたイベントになることを願ってプログラムを組んだ。「メディア」「ファッション」「会社」「アイデンティティ」というお題のもと、それぞれに対して、「ほんとうに欲しいそれは何か?」という問いが振り当てられる。語るのは若きメディア編集長やTVディレクター、スタイリストやモデル、起業家やラッパーなどだ。彼ら・彼女らの願いを通して、来場者の皆さんには、いまの現実と未来への距離を推し量り、いまここにある現実を再想像するきっかけを探してもらえたらと思う。

今年からはトークセッションだけではなく、ミュージックセッションと題した音楽パートも増設した。わたしたちの言語は、それが政治的なものであるか、経済的なものであるかの二択しかないところで、とてつもなく貧しくなっている。そうしたなか、「政治的な意味」や「経済的な意味」から、ときに身を引き離し、逃走し、非言語の言語をもって集うことの大切さをいま改めて強く感じている。

「意味」に回収されてしまわないこと。答えなどないと知ること。わからないものをわからないまま大切にしておくこと。文化のことばは、政治や経済のことばとは、真逆のことを人に求める。その力に身を委ねることの尊さを知ることを、いま、この貧しい社会は決定的に欠いている。

ミュージックセッションのゲストとして登場する betcover!!と、会場VJ+DJを担当するtokyovitaminには、そうした欠落を埋めてくれることを願って、今回のカンファレンスへの参加を打診した。

若林恵
trialog共同企画者・黒鳥社コンテンツディレクター

trilog Vol.7「時代 Times」より。30歳以下の来場者で埋まって客席(上)、森山大道、長澤章生のお二方のトークをサマリーしたグラフィックレコード(中)Music Sessionに登場したエレクトロアーティスト〈Machina〉(下)。
Photographs by Kaori Nishida


trialog summit 概要


【TALK SESSION】

出演者には、上出 遼平(テレビ東京『ハイパーハードボイルドグルメリポート』 ディレクター)、haru.(HIGH(er) magazine編集長)、平山 潤(NEUT Magazine編集長)、ラブリ(モデル)、Shun Watanabe(スタイリスト)、佐久間 裕美子(文筆家)、酒向萌美(GoodMorning代表)、對馬哲平(ソニー)、篠田 真貴子(元ほぼ日 CFO)、陳暁夏代(DIGDOG llc.代表)、Dos Monos(ミュージシャン)、若林 恵(黒鳥社コンテンツディレクター)など世代も職種も様々なクリエイターが決定!

◎SESSION 1|News
「ほんとうに欲しい情報はなにか?」
登壇|haru. + 上出遼平 + 平山潤

◎SESSION 2|Fashion
「ほんとうに欲しい見た目はなにか?」
登壇|ラブリ + Shun Watanabe + 佐久間裕美子

◎SESSION 3|Company
「ほんとうに欲しい会社はなにか?」
登壇|酒向萌実 + 對馬哲平 + 篠田真貴子

◎SESSION 4|Identity
「ほんとうに欲しいアイデンティティはなにか?」
登壇|陳暁夏代 + TAITAN MAN(Dos Monos) + 若林恵

VJ+DJ|tokyovitamin


【MUSIC SESSION】

注目のミュージシャンbetcover!!の出演が決定!


【OUTLINE】

「年齢制限なし」の席を増席いたしました。奮ってご参加ください!

日時:
2019年9月15日(日)13:00-20:00(12:30受付開始)

会場:
渋谷ヒカリエ 9階 ホールB
東京都渋谷区渋谷2-21-1
http://www.hikarie.jp/access

定員:
一般(年齢制限なし) 30名
一般(30歳以下限定) 75名
学生(要学生証提示、30歳以下限定) 75名

参加費:
一般 3,000円/学生 1,500円

主催:trialog project事務局
企画協力:NEUT Magazine
パートナー:ソニー株式会社

〈チケットのお申し込みはこちらから!〉

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黒鳥社はコンテンツ・レーベルです。いまの当たり前を疑い、あらゆる物事について、「別のありようを再想像(Re-Imagine)する」ことをミッションに、雑誌、ウェブ、映像、イベント、旅などメディアを問わず、コンテンツをプロダクション(制作)しています。
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