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「日清食品みたいなマーケがしたい」という方に伝えたいこと


ダイヤモンド・オンラインで日清食品 安藤社長と対談記事掲載

昨日~今日と、ダイヤモンド・オンラインさんで日清食品 安藤徳隆社長との対談記事が掲載されました。

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記事の内容は、安藤社長のお話が非常に面白いので、ぜひ読んでいただきたいのですが、日清食品さんは、私が知る限り、ソフトバンクさん、ユニクロさんと並び、オーナー社長のガバナンスの良さ(最後はトップダウンでジャッジが明確)が明確な強みとなっている会社だと思います。

そして何よりも、単なる話題化ではなく、成熟市場の国内で売上が伸び続けていることがすごいことです。

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このnoteでは、私がよく耳にする「日清食品みたいなマーケティングをやりたい」という話に関して思うことを速記で。

そもそも「日清食品みたいなマーケとは何か?」の定義はひとまずおいておき、近いやり方をしたいという方には、3つの自問自答が必須だと思っています。


「日清食品みたいなマーケ」がしたい人が、自問自答すべき3つの問い

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1:ブランドのマインドシェアが、購買に直結する商品カテゴリであるか?

カップ麺のようなカテゴリは、事前に入念な下調べして比較検討することもなく、単価も数百円と安い商品であるため、スーパーやコンビニに入ったとき、どれだけ「あ、あれ買ってみようかな?」とブランド想起が維持されるよう、マインドシェアを高く保つことが、購買を増やすうえで非常に重要になります。(もちろん棚が確保されている、という前提も大事)

つまり、日清食品さんの「狂ってる」と称される面白い話題化コミュニケーション施策は、常に話題化することでマインドシェアを維持するという、カップ麺のマーケティング成功要件と直結した業種となります。

話題化を続けることが、本当に優先順位の高い業種なのか?まず、ここでズレてないか注意が必要です。

購買の下調べ~比較検討を丁寧に行う商品・サービスのカテゴリであれば、バズのような話題化を常に起こす優先順位は高くないはずです。

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2:「狂ってる」施策なら、社内外で軋轢も増える。それを受け止めつつ、はねのける覚悟はあるのか?

話題化にも色々手法がありますが、賛否両論をうむような施策であれば、当然、社内外から強烈な支持者だけでなく、クレームも増えます。そのとき、ときに受け止めつつ、ときにかわす、ときに開き直ってはねのける・・・という、不動のポリシーを持って社内外に対峙する覚悟はありますか?

ここで、オーナーではない雇われビジネスパーソンの90%は脱落する印象です。いや、その90%を非難しているのではなく、それが普通です。10%側で、それらの異論と戦い続けるのは相当なエネルギーが必要です。

少なくともオーナー経営者ではない方は、経営層がその葛藤や戦いを支援してくれそうか?冷静に顔を思い浮かべてみましょう。経営層に強い支持者ひとりは必須です。

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3:伝えたいメッセージや、表現のトンマナ、それらは、小手先のバズらせテクニックではなく、深い思想や信念に基づいているか?

記事では、日清食品さんも顧客を理解する努力を怠らず、施策の結果のフィードバックからもしっかり学び、ズレを修正する、という話があります。でも、それらのビジネステクニックを身につければ、日清食品のようなブランドは築けるのでしょうか?

私の主観的な考察ですが、「テクニックだけ」では同じ成果は出ません。

私が、日清食品さんのマーケティング施策に触れて感じるのは、安藤徳隆社長の個人的な価値観や信念そのものです。正確に言えば、社長個人から感じるキャラクター~コミュニケーションのトンマナと、CMの印象は、極めて近い。更に言えば、それは日清食品ホールディングスの安藤宏基CEOの印象とも重なるものがあり、オーナー家と企業で脈々と継承されているismを感じます。

それだけの確固たるismに沿って、数十年も一貫性を持ってメッセージしているから、おバカに見える施策も、最終的には企業やブランドとしての尊敬や信頼を勝ち得ていると感じます。(その蓄積なく、普通の会社がある日突然に日清食品風な尖ったやり方をしたら、相当な違和感があるはずです)

問いたいのは、そのブランドのメッセージや表現は、企業としての信念と合致しているのか?です。

そうでなければ一過性のバズで終わり、ブランド構築には至りません。

私の交友関係でも、CMOクラスの名だたるマーケターの方々の多くが、リスペクトする会社、お手本とする会社として日清食品を挙げられていますが、その根本的なリスペクトの背景は、表面的なテクニックよりも、この揺るがない信念にあると感じます。

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この3つの問いかけに対してYes!!!といえるならば、それが「何か」はひとまず置いておき、日清食品的マーケティングにトライする価値はあるかもしれません。(もちろん表面的なモノマネは論外ですが・・・)


全ての企業が日清食品から学ぶべき「マーケのOS品質」

個人的には、日清食品さんのマーケティングから全ての企業が学ぶべき汎用的な要素は、

・顧客理解を徹底する
・マーケティング施策の振り返りレビューを徹底し、次に活かす
・会議では、その場でスピーディーに意思決定し、結果にコミットする

この3点、基礎のレベル向上の徹底だと思います。

長く成長している企業は、単にイノベーションに挑む大胆さだけでなく、しっかり顧客視点のフィードバックを得て、組織的に学びを蓄積する仕掛けを持っています。。

これが、いわゆるマーケティングにおけるOSであり、表面的なメッセージやクリエイティブのトンマナはアプリケーションレベルの話は多くの企業にそのまま適用すべきではありません。


イノベーションと市場・顧客理解は二項対立ではない

弊社のクライアントで、大きなイノベーションを仕掛けている企業も、最初のプロダクトが大ヒットしなくても、そのプロダクト・サービスの課題をしっかり顧客視点の調査であぶり出したうえで、第二弾の準備を進めている。そういう基礎動作がしっかりしています。

イノベーション=顧客調査否定みたいな安直な話がSNSやメディアで多いのが気になりますが、持続的な成長企業は、ちゃんとバランス良くやっているのですよ。(顧客調査で新しい発想は出てこないは、概ね同意しますが、斬新な発想のコンセプトや商品が、どうすれば顧客に受け入れられるか?という目的では、調査は大いに有効です)

そこの機微は言語化が難しいし、メディアの記事もキャッチーさが不足するから、極論を煽る紋切り型になりがちですが、現実のマーケティングの成否は基礎のOSレベルのクオリティにあります。

それが私が強く伝えたいメッセージで、こんなnoteを書きました。

この「マーケティングにおけるOSとはなんぞや?アプリとはなんぞや?」話は、需要がありそうならnoteで近々書くので、リクエストをTwitterやコメントでいただければ、がんばります。

ではでは!

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