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ビジネスモデル講義05:パタン・ランゲージとビジネスモデル・アーキタイプ

前回、デザイン思考を「個人的な創造プロセス」として捉え直すべきだという議論をした。個人の内省的な暗黙のプロセスにこそ、発見の秘密があると指摘した。

一方で、個人の暗黙的な思考のはたらきに閉じ込めてしまうのではなく、デザインを共創プロセスとして開いていくことも重要だ。デザイン思考の「共創のデザインプロセス」として今回触れたいのが、クリストファー・アレグザンダーによって提唱されたパタン・ランゲージである。

1. 生成のデザイン思考としてのパタン・ランゲージ

デザイン思考に関する流れのひとつとして、都市設計や建築家の思考プロセスを追った『デザインの思考過程(原題:Design Thinking)』にあることを指摘したが、パタン・ランゲージもまた、建築の領域から生まれてきた。

アレグザンダーは、建築家ひとりの作業となっていた設計プロセスを、誰もが参加できるオープンなものへと開いていこうとした。利用者が自分自身で、いわばDIYで都市や建築を設計するための共通言語をつくろうと考えた。

この言語は都市や建築を構成するさまざまな原型(パタン)によって構成される。パタンの組み合わせは無数に存在し、その組み合わせから生まれる効果もまた、多様である。アレグザンダーは、デザイン過程の複雑性を、できるだけそのまま取り扱えるようなアプローチを模索した。その結果生まれたパタン・ランゲージは、まずひとつには、共創プロセスであり、生命的な全体性をもったデザインを生成することができる方法であった。

具体的にパタン・ランゲージとはどのようなものなのだろうか。『パタン・ランゲージー環境設計の手引』で提示される253のパタンには、一定の状況下(コンテクスト)において、どのような問題がおこり、それをどのように解決していくということが記述されている。そして、そのパタンが他のパタンとどのように連携していくかが記されている。

パタンには、大きく都市のパタン、建築のパタン、建築細部のパタンに分けられる。ひとつめの都市のパタンは、「仕事場の分散」「環状道路」「連続住宅」「路上カフェ」など、建築については「正面玄関」「南向きの屋外」「屋上庭」「日のあたるカウンター」など、また建築細部として「低い戸口」「いっぱいに開く窓」「玄関先のベンチ」「柔らかいタイルとレンガ」など、計253のパタンが示されている。

また、各パタンの記述については、たとえば路上カフェについて、次のように記述される。

まず、路上カフェがどのようなパタンとのつながりから要請されるかが示され、パタンの特性が簡単に記述される。ここでは割愛するが、この後、カフェに関する詳細な記述が続き、次のような注意事項と図が示される。また最後には、他のパタンとの接続が示される。

アレグザンダーはこうしたパタン・ランゲージという共通言語によって、都市や建築の利用者たちが自分たち自身で、ウォーターフォールで設計するのではなくボトムアップ型で、かつ一度にすべてをデザインするのではなく、効果を見ながら漸進的に設計・施工を進めるようにした。いまでいうアジャイルな開発方式である。

たとえば、ある空地に建築物を建てる場合、図面で検討するのではなく、その場所に実際に身を置き、そこにさまざまなパタンを実物大で配置した場合のイメージを共有し、実際の利用者たちによる対話を繰り返しながら、作り上げていくということが想定されていた。その背景にあるのは、生命としての都市・建築であり、建設されて終わりではなく、漸進的な成長プロセスをも組み込んでおく必要があると考えた。あらゆるものがトップダウンで計画されたような「人工都市」ではなく、生命的な「自然都市」を目指したのである。

そうした都市や建築は、生き生きとし(alive)全一的な(whole)、そして居心地の良い(comfortable)な質を備えている。この質は、「特定の場所で、特定の姿で出現するので、二度と同じ形は取らない」(アレグザンダー『時を超えた建設の道』P23)と考えた。こうした唯一無二の質をアレグザンダーは、名付けようのない「無名の質(Quality without a name)」と呼んだ。

アレグザンダーはそうした自然都市が備える構造的な特徴としてセミラティス構造をあげた。ツリー構造が、上位概念に下位の要素がダブルことなく整然と位置付けられ、同レベルの要素間での連携のない構造(図c,d)であるのに対し、セミラティ図構造はさまざまに連携し合う要素群(サブセット)が都市という上位概念を支えている構造である(図a,b)。

さきほど紹介したパタン・ランゲージの例にもあったように、要素間の関係が示されているのは、こうしたセミラティス構造を利用者が作ることができるようにという設計と考えていいだろう。都市や建築の要素がさまざまに繋がり合うセミラティス構造から、無名の質が生成されていくと考えたのである。

2. ビジネスモデルのパタン・ランゲージ展開は可能か

アレグザンダーはさらに、彼の提示した253のパタンについて、「パタンは生き物であり、進化していく」とし、新しいパタンが展開されることを期待した。パタン自体も生成的であるのだと考えたのである。

そうしたアレグザンダーの期待にこたえ、さまざまな領域でパタン・ランゲージを生み出しているのが井庭崇である。質の高いプレゼンを行うための「Presentation Pattern」や、学びを深めるための「Learning Pattern」、共同作業を促進する「Collabolation Pattern」など、建築領域に留まらないさまざまなパタンを発表している。創造のための道具の創造という、いわばメタメソッドとしてのパタン・ランゲージの可能性の先端を走っている。

また、江渡浩一郎は、こうしたパタン・ランゲージのアプローチはその後、多くの集合知を集めるコラボレーションシステムであるWikiや、アジャイルなXP(エクストリームプログラミング)に展開されていることを指摘する。知らずしらずのうちに、我々はアレグザンダーの影響圏にいるのである。

ちなみに、私自身の出世作でもあるライフハック関連書籍において、ライフハックは「仕事のパタン・ランゲージ」であることを意識していた。そのことは、『ライフハックのつくり方』という本のなかで「つくりかたのつくりかた」としてのライフハックについて触れている。2007年のことだった。

このように、一般的なデザイン思考の潮流とは別に、パタンの有機的なつながりから全体構造を作り出していくというアプローチがあり、コラボレーションの方法として実践が積み重ねられている。そしてこれは、ビジネスの領域にも適用可能な方法だろう。ビジネスも都市や建築物同様、生命体としての質を有している。ビジネスモデルは日々、変化、成長しており、それぞれの現場において漸進的に設計・施工され続けている。ビジネスモデル・キャンバスを活用したデザイン思考プロセスを考える場合、こうした有機的構造の共創デザインに、パタン・ランゲージはふさわしい。

そこで着想したのが、ビジネスモデル設計のパタン・ランゲージがつくれないかということだった。しかし、結論から言えばこの試みはうまく行かなかった。「生成」的であるということと、ビジネスモデルが「制作」的であるということが、どうしてもぶつかり合ってしまうのだ。

ビジネスモデル・キャンバスにおいては、9つのブロックにさまざまなパタンを配置することで、いわば都市設計するようにして「無名の質」をつくりあげることになる。都市設計や建築とは違って実物大での検討はできないまでも、それぞれの構成要素(パタン)のあいだの関係性を図示しながら、全体性を見ることができる。


図 ビジネスモデル・キャンバス

アレグザンダーのパタンと異なるのは、アレグザンダーがパタン間のつながりをパタン・ランゲージのなかで細かく指示しなければならなかったのに対し、ビジネスモデル・キャンバスではあらかじめ要素間のつながりが見出しやすいよう位置が固定されている点である。顧客セグメントと価値提案の間に、顧客との関係とチャネルが位置づけられているのは、それらが互いに関連しあっているからである。ビジネスモデル・キャンバスは各要素の配置されている位置に重要な意味があり、トポロジー的な考え方のもと、デザインされているのである。

3. ビジネスモデル・キャンバスのトポロジー

トポロジーとは、穴が空いている図形に対して、実際の図形の形や空いている穴の位置は無視し、図形に空いている穴の数といった構造へと抽象化して捉える数学的処理である。たとえば、穴が一つあるドーナツとコーヒーカップは、トポロジー的観点からは同一である。ビジネスモデル・キャンバスにおいては、その事業が製造業なのか流通業なのかといった業種や、富裕層向けなのかマス向けなのかというビジネスの細部を一旦捨象して、トポロジー的な類似を見る。ドーナツとコーヒーカップが同一であるように。

ビジネスモデル・キャンバスがこうしたトポロジー的な作られ方をされているように、ビジネスモデルは都市よりも構造が先行する。細部よりも先に、トポロジー的な位相が想定されないとビジネスモデルを生み出せないのである。そのため、パタン・ランゲージで想定されているような詳細なパタンを組み合わせたところで、ビジネスモデルとして成立しうる構造が生成されないのだ。構造への意思がなければ、ビジネスが構造として立ち上がらないのである。それが小売業であるのか、製造業であるのかということ以前に、ドーナツ的なものなのか、パンケーキ的なものなのかという位相が問題になるのである。

それを一言で言えば、ビジネスモデルのデザインは建築と比べて、生成的ではなく制作的だ、ということになる。そのため、具体的なパタン(たとえば、「企業のビジョン」「サプライチェーンを支える情報システム」「共創の生まれるオフィス」「顧客との対話の場」など)よりも、まずどのように制作するのかということが問われるのである。

4. ビジネスモデル・アーキタイプ

このように、ビジネスモデルについては、各ブロックに入る要素を詳細なパタンを示すよりも、要素間の関係をメカニズムとしてつなげて示した構造のほうを原型(アーキタイプ)として示したほうが良いのではないかと考えた。これを、ビジネスモデル・アーキタイプと呼ぶことにした。

このビジネスモデル・アーキタイプには例えば、以下のようなものがある。まだ開発中であり、これはあくまで一例である。ただ、それぞれ特定の業界だけに有効なアーキタイプではなく、さまざまに適用可能なものとなっていることを確認しながら見ていきたい。

(1)大量単一生産とコストリーダーシップ

これは製品を大量単一生産することによって大幅なコストダウンを図る方法であり、T型フォード以来の製造業における王道と呼べるモデルである。さらに、サプライチェーン全体を飲み込むようにして原料調達から販売まであわせもつ垂直統合モデルも、このアーキタイプの類似モデルである。垂直統合が有効なのは大量安定供給が求められるケースであり、大量生産モデルが前提となっていることが多い。規模の経済による優位性の確立を目指すものだからだ。

大量生産型の製造業だけでなく、アパレルのSPA、工場で製造した料理を各レストランで温め直して提供するファミレスのセントラルキッチンなども、この大量生産モデルのアーキタイプを共有している。この大量生産モデルは、基本的に顧客のニーズが単一かつはっきりと分かっており、そのニーズに対していかに低コストに商品を提供するかというコストリーダーシップが競争優位につながる領域で有効となる。

(2)多品種少量生産とジャストインタイム

大量単一生産とは異なり、多品種少量生産では、サプライヤーとの有機的なつながりによる柔軟で多様な生産プロセスが特徴である。もともと流通から着想されスーパーマーケット方式と呼ばれたジャストインタイムによる生産方式も、さまざまなオプションや選択による多品種生産を低コストで実現するために洗練されていった。その過程で、いわゆる系列と呼ばれる巨大なサプライチェーンが構築されていった。

多能工、自働化、カイゼン、アンドンなどのさまざまな細部(パタン)を内包するこのアーキタイプは、他の業界にもさまざまに転用された。最近では、Amazonが多くのトヨタOBを採用して物流のジャストインタイムを究極まで推し進めようとしていることが挙げられる。Amazonの取得した特許によれば、顧客が注文するよりも前に発送をするというところまでいくつもりのようだ。多品種を用意しようとすると基本的にコストと納期が犠牲になる。そのトレードオフを乗り越えた企業が競争優位を獲得する。

(3)マス・カスタマイゼーションとタイムベース競争

また、DELLのBTOモデルは、こうした多品種少量生産をマス・カスタマイゼーションというところまで徹底するものである。ほかにも、大量生産モデルとして紹介したアパレルのSPAは、売れ行きに応じて柔軟に生産計画を変更したり、流行に合わせて迅速に新しいデザインを導入するといった多品種生産のアーキタイプも持ち合わせている。

タイムベース競争というコンセプトでは、市場の変化に対応する短期間での商品企画開発力など、時間を競争優位の源泉として捉えた。生産現場でのカイゼン活動だけでなく、より上位の経営の意思決定のレイヤーまでこのアーキタイプが機能する。マーケットの変化が激しい時代において、即時的な対応のできるビジネスモデル・アーキタイプを組み込んでおくことは、経営戦略においても重要な要素である。

(4)マルチサイドプラットフォームとエコシステム

多品種少量生産を実現するためには、すべてを自社で行う自前主義では早々に限界が来てしまう。多様な製品、サービスを実現するには、多様な企業とつながる、いわばエコシステムの構築が欠かせない。企業と顧客とのつながりを生み出すこうしたビジネスモデルを、マルチサイドプラットフォームと呼ぶ。複数の立場の異なる顧客を出会わせることによって価値を生み出すビジネスモデルである。

iTunes Storeは、Appleのデバイスを使うユーザーを片方に、もう片方にはレコード会社、映画会社、テレビ局、ラジオ局、コンテンツプロバイダをおいたマルチサイドプラットフォームを形成している。Androidに比べてクレジットカード登録率が高く使う金額も多いiTunesユーザーの存在によって、iTunesには多くのコンテンツが集まってきている。Samsungは残念ながらこうしたプラットフォーム形成ができず、シャオミやファーウェイなどをライバルとする価格競争、機能競争に巻き込まれている。

Amazonは、音声AIプラットフォームであるAlexaを無料で開放することによって、短期間のうちに何万という「スキル」(音声AIシステムにおける「アプリ」)を用意することができた。シーメンスやGEは、IoTプラットフォームを用意し、さまざまなセンサー情報をクラウドに集め、それを競合他社も含めたさまざまなアプリで利用できるプラットフォームを構築している。

エコシステムにおいては、単に自前主義をやめるだけでなく、ときにライバルとも手を組みながら、顧客への新しい価値を提供しようとしている。お互いがライバルであるAmazonとGoogleは、それぞれが抱える映像配信サービス「Prime Video」と「YouTube」を、お互いのプラットフォームでも提供することに合意した。AppleのiTunesも、Amazon Echoで再生することができる。見かけの競争関係を超えて、エコシステム内では共創関係が生まれているのである。

会社間競争というよりも、今はエコシステム間競争/共創の時代となっているのである。

(5)フリーミアムと資本集約産業

一部の有料ユーザーからの収益によって無料サービスを提供し、未来の潜在顧客を獲得するビジネスモデルにフリーミアムがある。インターネットサービスではよく見られる形態であり、馴染みもあるだろう。インターネットだけでなく、たとえば航空便は一部のファーストクラス、ビジネスクラスからの収益によって運行されていることはよく知られている。無料とまでは行かなくとも、一部の顧客からの収益に頼るのがフリーミアムの特徴である。

これは、いわゆる装置産業において、ユーザーが増えても(もしくは空席で運行しても)コストがあまり変わらない場合、すなわち限界利益の高い業界においてよく採用される。下部のコスト構造が、上部のビジネスモデル構造を規定するのである。労働集約的な産業は、比較的規模の小さい企業が乱立する産業構造となるのに対して、装置産業として資本集約的な側面が強いフリーミアムは規模の経済が働きやすく、規模の大きな企業への寡占が進みやすい。

(6)サブスクリプションとビッグデータ

サブスクリプションは、そうしたフリーミアムの別の表現と見ることができる。月額会費で運営されているスポーツクラブは典型的な装置産業だが、一定割合の利用頻度の少ない会員によって支えられている。動画や音楽などのデジタルコンテンツサービスがサブスクリプションを採用するのも、利用頻度の少ないユーザーを一定数想定するからこそである。月額980円という値段設定は、CDアルバム一枚にも満たない金額ではあるものの、一般の人は一ヶ月に1枚もCDを買うわけでもなく、全体の音楽マーケットとしては広がるのである。

このサブスクリプションは、会員との長期的契約関係に基づく新しい価値提案にも特徴がある。SpotifyやNetflixにはユーザーの視聴履歴が残り、その履歴をビッグデータとして活用することで適切な、ユーザーに驚きをもたらすようなレコメンデーションが可能となる。

(7)シェアリングと資本のアンバンドル

シェアリングは、こうした装置産業について所有権を分散することにより、資本集約的な制約を取り払うものとして捉えることができる。今や世界最大の室数をほこる宿泊サービスとなったAirbnbは、ホテルという巨大な装置産業にビジネスモデルのイノベーションを起こした。装置の所有と購買マッチングを分離(アンバンドル)するアーキタイプである。ライトなフランチャイズモデルと見ることもできるだろう。事業者はあくまでマッチングだけを行い、サービス提供のための装置は各提供者が所有するのである。

5. ビジネスモデルの生成的デザインに向けて

こうしたビジネスモデルのアーキタイプは、ビジネスモデルを設計する上で示唆に富む。状況との対話の中でパタンを組み合わせ、都市や建築を生成していくパタン・ランゲージに対して、アーキタイプという構造を適用したときに起こるさまざまな現象と対話しながら作っていくこのやり方は、アレグザンダーとは別の意味で生成的である。「このサービスをシェアリングビジネスモデルで実現したらどうなるだろうか」という形で、最初はいい意味で無根拠に選ばれたアーキタイプによって、思わぬビジネスモデルが立ち上がってくるのである。

建築家の青木淳は、無根拠なルールを徹底することによって建築を生み出すという珍しいアプローチを取る。施主がなにかしら解決したい課題があり、その課題解決をするために建築を設計するというのが、建築家の一般的なあり方であろう。青木はそれを拒絶する。問題解決や何かの目的のために作られた建築は、あらかじめ遊び方を規定されている遊園地のようで、そこで遊ぶ子どもたちの創造性を既存してしまう。そうではなく、分譲のために整地されたものの未目的のままおかれた原っぱのように、そこでの遊び方の可能性が開かれた建築を目指す。

青木が強調するのは、ルールのオーバードライブ(暴走)である。ルールが過剰なまでに徹底されることで、そこから何かが生成する瞬間を生み出すということだ。2019年夏、青木の設計した「青森県立美術館」を訪問した。青森県立美術館は、すぐ隣りにある三内丸山の縄文遺跡のように、まず地面をトレンチ状にかきとったあとの凸凹の土地に、同じく凸凹の建築を覆いかぶせる形で設計されている。そうすると当然、普通の美術館にあるようなホワイトキューブ(白い立方体の空間)ではない、いびつな空間が生まれてくる。これは美術館がもつ要請に応えて作られた建築というよりは、青木が考えた建築ルールをオーバードライブさせたことによって生成された空間であった。

建築と写真のあいだに──青森県立美術館をめぐってより

こうした方法をとる青木にとっては、アレグザンダーのパタン・ランゲージも、遊園地のように準備されすぎている。アレグザンダーの準備するパタンは、生成的にみえるものの、あらかじめ準備されているという意味では本質的に生成そのものではない。そしてそのパタン内に記述される課題と対応策も、自然発生的な生成のロジックから遠ざけるものであった。

ビジネスモデル・アーキタイプによって実現しようとしている生成とは、こうした青木の議論に近いところがあるかもしれない。無根拠に選ばれたアーキタイプがもたらすビジネス空間から生成される意味を、あらかじめ計算するのではなくその場から生み出していくのである。

小山龍介(株式会社ブルームコンセプト代表取締役/名古屋商科大学大学院ビジネススクール准教授/ビジネスモデル学会プリンシパル)

未来のイノベーションを生み出す人に向けて、世界をInspireする人やできごとを取り上げてお届けしたいと思っています。 どうぞよろしくお願いします。