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2021年7月19日のTOKYO854の放送内容です|Blooming Days -日々是好日-|倉嶋桃子

みなさん、こんにちは。倉嶋桃子です。

昨年に続き、感染症予防対策の一環から、夏の大規模なイベントや花火大会の中止が相次いでいる中、花火を販売するお店では少人数で楽しめる「手持ち花火」が売り上げを伸ばしています。

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昨年より早い時期から購入されている方達の声としては、「もうすぐ夏休みになるので、できる範囲で夏の楽しい思い出を作ってあげたい」という声や、「手持ち花火は夏を感じるられるので…。」といった声があるようです。

手持ち花火の代表的なものと言えば「線香花火」。

「線香花火」のはじまりは、江戸時代と言われており、ゼラチンで練った黒色火薬を稲藁の先に塗って火をつけ、香炉の灰にお線香のように立てて鑑賞していたことから「線香花火」という名前で呼ばれるようになったとのこと。

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この線香花火には、基本的な構造として「スボ手」と「長手(ながて)」とあり、「スボ手」は西日本に、「長手」は東日本に多いスタイルです。

「スボ手」は、竹ひごや藁でできた柄の先に、黒色火薬がむき出しに付着しているもので、使うときには先を上げて遊びます。

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元々は、稲作の盛んだった上方で作られ、公家の遊びとして用いられ、やがて江戸にも広まりましたが、江戸では藁が手に入りにくかったことから、藁の代わりに和紙(こうぞ紙)を使ってこよりの先に黒色火薬が包まれているタイプの「長手」が作られるようになりました。このスタイルは、現在関東を中心に一般的に知られている線香花火と同様のものです。

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線香花火に使われる黒色火薬は、硝石・硫黄・松煙から作られます。
「松煙(しょうえん)」とは、切り倒して30年程経った松の切り株をいぶして作る火薬のことで、花火づくりには欠かせない油分を豊富に含んでいるものですが、近年は入手が困難で代用品を使うことも多いようです。
また、線香花火には長く火花が出るように燃えやすい炭と燃えにくい炭を一定の割合で混ぜ合わせますが、大きな火花を出すための燃えやすい炭として「麻炭(あさすみ)」が用いられます。ただし、現在ではコストの問題で木炭を使う場合もあるそうです。

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線香花火の産地は全国各地にありましたが、特に福岡県、愛知県、長野県では花火の生産が盛んで多くの花火職人や花火業者がいました。ちなみに、これらの地域は、強い戦国武将がいた地域で、武器として火薬を多く保有していた為、花火の生産も活発になり、線香花火の産地としても栄えたとのこと。

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日本国内で長らく生産されていた線香花火ですが、1970年代から徐々に安い外国産の商品が出回るようになり、1980年代になると、価格差におされて廃業する花火業者が出始め、1998年、福岡にあった最後の一社が廃業したことで、国産の線香花火が市場から姿を消してしまうことがありました。

この事態を受け、「日本の伝統を消してはならない」と危機感を抱いた、東京都台東区蔵前にある老舗の花火問屋「山縣商店」の山縣常浩会長らが、花火の産地に再び生産を呼びかけ、これに応じた数社が生産を始め、今では稀少な高級品としてブランド化され、安い外国産のものとは異なる市場を広げつつあります。

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国産の線香花火は、この道数十年の熟練の花火職人が、丁寧に心を込めて、厳選された材料を元に火薬を調合し、手染めした和紙で火薬をつつみ、手作業で作られています。
手染めした和紙の細かい繊維の中に火薬が入ることで、美しい火花を散らすことができ、さらに、職人さんの手によってひとつひとつ作られる線香花火は、火花の出方や持続時間も微妙に異なり、その線香花火の違いも楽しむことができるとのこと。

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線香花火は、燃焼時間によって温度変化があり、それぞれに名前が付けられています。
着火して火球ができる状態を「蕾」、火球内の燃える火薬が温度が上昇によって液体状に変わり力強く火花が飛び出す状態を「牡丹」、多くの火花が四方八方に飛び出す状態を「松葉」、火花の勢いが衰え、火花が細く垂れ下がる状態を「柳」、火花が次第に分裂しなくなり、火球が燃え尽きる状態を「散り菊」と言われます。
国産の花火はこの火花の移り変わりを、じっくり味わえるのも魅力です。

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1本約5円ほどの外国産の線香花火に対し、愛知県の三州火工と山縣商店さんが約2年をかけて共同開発した「大江戸牡丹」と名付けられた線香花火は、1袋10本入りで660円(参考価格)なので、1本66円。外国産に比べて10倍以上の差があるものの、この国産の線香花火の魅力を見てみれば、このお値段は納得かもしれません。

職人さんが火薬を調合し、一本ずつ和紙を縒って作っている国産の線香花火。

今年の夏の思い出に、試してみようかと思います。

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さて、今回は、今から21年前の7/19に二千円札が発行されたことから、「お金」をテーマにお送りいたしました。

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番組では、ポッドキャストによる配信をおこなっています。
従来のPodcastは、著作権の問題で音楽を除外したトークのみのものでしたが、クラウド音楽サービスを利用することによって、ラジオ放送と同じ構成で、トーク・番組内でかけた音楽、両方をお聞きいただくことが出来ます。

番組では皆様からのメッセージをお待ちしております。「試してみたよ」「作ってみたよ」といった番組で取り上げた内容のご感想、皆さんが感じる幸せのひとときなど、ぜひお聞かせくださいませ。

それから、番組の構成上、時間の都合でリクエスト曲にはお応えできない場合がございます。ご容赦くださいませ。

今週も皆様にとって素敵な1週間になりますように。

倉嶋桃子でした。

<参考資料>

近場で楽しめる「手持ち花火」が人気集める…花火大会の中止が相次ぐ中 趣向こらした商品が人気(関西テレビ) – Yahoo!ニュース
https://blooming-days.njs.xyz/g124

【線香花火 – Wikipedia
https://blooming-days.njs.xyz/o41h

線香花火の意味や歴史は?「国産線香花火」復活に下町の玩具問屋が挑む | 和樂web 日本文化の入り口マガジン
https://blooming-days.njs.xyz/shjg

松煙の収穫 | 玩具花火研究所
https://fireworks-lab.com/article/tsutsui_2/

麻の関連商品・詳細
http://asahouse.com/related_product.html

線香花火 筒井時正 | 筒井時正玩具花火製造所|福岡の玩具花火製造所
https://tsutsuitokimasa.jp/senkohanabi-tokimasa

株式会社山縣商店
https://www.hanabiya.co.jp/

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