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今日も、明日を信じてる。『坂本真綾 LIVE TOUR 2023 「記憶の図書館」東京振替公演(1月3日)』

茨城から東京へ向かう電車に乗って、窓の外を流れていく街並みを眺めていると、いつも「自分が今まで一度も訪れたことがない場所に住んで、一度も見たことがない景色を日常にして生活している人がいるんだな」と思う。

過ぎていく景色の中の一軒家や集合住宅一つ一つに住んでいる人がいて、自分とはまったく違う場所で違う人生を送っている人たちがこんなにもたくさんいる。そう考えると途方もないような気持ちになる。

この日東京に向かったのは、『坂本真綾 LIVE TOUR 2023 「記憶の図書館」東京振替公演』に参加するため。
このライブは本来、昨年の6月25日(日)に開催される予定だった。しかし真綾さんの喉のコンディション不調のためやむを得ず延期となった。
そして1月3日(水)、ようやく待ちに待った振替公演の日がやってきたのだ。

日常を生きる活力をくれるライブ

ライブ自体の流れやセトリについては、他にもライブレポが上がっているのでそちらをご覧いただければと思う。

東京1日目(1月2日)

東京2日目(1月3日)

この記事では、わたしが感じたことを中心に書きます。
ちなみに6月2日に行われた越谷でのファンクラブ会員限定公演にも参加済みなので、このツアーのライブは2回目です。

で、毎回そうなんだけれど、真綾さんのライブは「ライブという非日常が終わっても、また会える日までそれぞれの場所で日常を営んでいこう」という励ましに溢れている。日常を力強く歩んでいこう、というような。
真綾さんもMCでそのようなことをよく話しているし、真綾さんのライブはわたしにとってほんとうに日常を生きる活力になっている。

新年早々大きな地震や飛行機事故が起きて、今年は一体どうなってしまうんだろうと不安になることが続いた、2024年の幕開け。けど、こんな状況だからこそ、その励ましのメッセージが強く感じられたし、今年もまっとうに前向きに生きていこう……!という気持ちになった。

それでもまだ あきれるくらい 明日を信じてる

『マジックナンバー』より

真綾さんが『マジックナンバー』の歌詞にMCで触れていたように、こんなときだからこそ「明日を信じてる」と言いたい。

そしてこういうときに聴く『菫』は今までで一番沁みた。6月の公演で聴いたときよりも沁みた。
ライブ中にあたりを見渡したとき目に入った、いくつかの空席。もしかしたらやむを得ない事情で今日来られなかった人がいるのかもしれないと思うと、少し胸がギュッとなった。
その来られなかった人たちはもちろん、会場にいる人たちすべてにそれぞれの人生があって、さまざまな思いを抱えている。
そんなことを急にはっきりと認識して、この場にいる人たちすべてが愛おしいような、そんな気持ちになったのだ。

普通の人生なんてどこにもない そんな風に見えるだけ

『菫』より

真綾さんが『菫』を歌う前のMCで、この曲のことについて話していた。
歌詞を書くきっかけとなったのは、車で信号待ちをしているときのこと。真綾さんはそのとき少し塞いだ気持ちで、目の前の横断歩道を行き交う人たちを眺めながら「みんな楽しそうだなぁ、キラキラしてるなぁ」と思っていたらしい。
けど外から見れば、自分はただぼーっと信号待ちをしている人にしか見えないのだろうな、と気づいたのだそう。
他人の人生がどんなものなのか、どんな思いを抱えているのかなんて見た目だけではわからない。キラキラして見える人にも、実は何か悩みがあったりするのかもしれない。そんな視点が『菫』の歌詞の元になっているのだと。

ここにいる人たちがそれぞれに自分の人生を生きていて、今たまたま同じ場所にいるけれど、ライブが終わったらまたそれぞれの場所へ帰っていく。そしてまたそれぞれの日常を生きていく。
わたしが知らない場所に住んでいる人も、行ったことがない街に暮らしている人もみんな、そうやって日々仕事したりご飯を食べたりして生きている。
傍目にはわからないかもしれないけれど、誰もが各々の生を、懸命に全うしているんだ。
わかっていたつもりのこの事実が、『菫』を聞きながら全身に染み渡っていった感覚だった。

このコロナ禍の数年、そしてここ数日の出来事を見聞きしていると、そうやってそれぞれの場所でみんなが日常を生きて、ライブで同じ場所に集って同じ音楽を聴いて心を満たせることはすごく奇跡的なことなんだと、心の底から思う。
大変なことばかりだけど、このライブが終わった後の日常を戦い抜いて、また同じ場所にみんなで集えたらいいなと思う。それまで「明日を信じて」、1日1日を大事に生きていきたい。真綾さんのライブはいつもそう思わせてくれるけど、今回は特に強くそう感じた。

久々の声出し解禁ライブで、アンコールの定番『ポケットを空にして』をみんなで歌っていたら涙が出たけど、がんばって歌い切った。
お年玉として『シンガーソングライター』まで歌えるなんて思っていなかったから、めちゃめちゃ嬉しかった。生きることは音楽。ありがとう真綾さん。

新年始まったそばから、生きることとか人生とかについてしみじみ考えたライブだった。
ライブは終わってしまったけれど、また日常を淡々と、けど前向きに進んでいこうと思う。
真綾さんがライブを通して伝えてくれたメッセージを胸に、また会える日まで。今日のことは、わたしの記憶の図書館に大事にしまっておく。

ライブに向かう電車の中にて

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