鼻が低い。
歯並びが悪い。
胸が大きさ的に寂しい。
喉が弱い。
やたらと心配性。
きちんとしていない自分は価値がないと思ってしまう。
キャパシティが小さいのでマルチタスクに向かない。
...

自分というものに関していくらでも欠点は挙げられる。キリがない。
世界の中で、宇宙の中で他の誰よりも一番近い存在が自分だから。
だからこそ、一番厳しく辛く評価をしてしまう。

嫌な部分を見て、すぐ近くの他人を見てみると、自分にはない良さが見える。
その人自身も欠点と自覚しているところはあるのだろうが、外からはわからない。
だから単純に自分と、その輝いて見える他人とを比較してしまう。
そして、落ち込む。

自分に関して嫌だなぁ、見たく無いなぁということ、それとどう向き合っていったらいいのか。

＊＊＊

《NHK プロフェッショナル 仕事の流儀》の最新の放送を見ていたら、美尻トレーナー 岡部 友さんという方が出ていて、普段の仕事、そして私生活について密着取材を受けていた。

流行に疎い私は、申し訳ないことに岡部さんを存じ上げていなかった。
ただ少し「美尻」というワードに反応して番組を見てみよう、という不純な動機であった。

彼女は都内のスタジオで、個人あるいはグループに対し、女性らしいふっくらとしたシルエットに盛り上がる筋肉をプラスした、上向きの美しいお尻作りをレクチャーされているそうなのだが、

見るからに目力があり、言葉の話し方もサバサバしているけど刺がなく、
私生活もストイックにお尻のこと、女性が美しく変わるためにはどうしたらいいのかを、精神面、身体面から考え続けていて、強い芯のある女性だという印象を受けた。

でも今の彼女に至るまでには、学生時代に頑張ってきた陸上とその挫折、大失恋で悩んだり沢山泣いたりした経験があったようだ。

彼女はいう。

「努力で変えられる部分にコンプレックスを持つ必要はない。」

「変えられない部分はもう変えられないんだから、それもコンプレックスに思う必要はない。」

「ってことは、どちらにしろコンプレックスに思うことはなくていい。」

一番目の、努力で変えられる部分にコンプレックスを持つ必要はない、は多分なんとなくは多くの人がわかる、実感しやすいことであると思う。

私がすごいなと思ったのは二番目の言葉。

「変えられない部分はもう変えられないんだから、それもコンプレックスに思う必要はない。」

人はどこか自分が他人と同じだったり、他人より秀でていると安心する。
だから自分のことで、劣っている、あまり好きじゃないと思うところをコンプレックスだ、と思うことがもうデフォルトになってしまっている。
それを、単に本で読んだ知識ではなく、個人の経験をもとにこのように発言して体現できているということがすごいと思った。
頭だけでわかっているのではなくて、完全に腑に落ちている、のだろう。

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最近読み返した、養老孟司さんの“バカの壁”。
こちらでは、人の個性を発揮するための◯◯、とか、個性を開花させるような教育を、とか言っている今の日本の社会について、以下のように書かれている。

個性が大事だといいながら 、実際には 、よその人の顔色を窺ってばかり 、というのが今の日本人のやっていること。
がんじがらめの 「共通了解 」を求められつつも 、意味不明の 「個性 」を求められるという矛盾した境遇にあるところです 。会社でもどこでも組織に入れば徹底的に 「共通了解 」を求められるにもかかわらず 、口では 「個性を発揮しろ 」と言われる 。どうすりゃいいんだ 、と思うのも無理の無い話 。
すなわち 、 「個性 」なんていうのは初めから与えられているものであって 、それ以上のものでもなければ 、それ以下のものでもない 。産みの親とだって 、それだけ違うのに 、何で安心して 、違う人間に決まっていると言えないのか 。逆に意識の世界というのは 、互いに通じることを中心としている 。私たちには 、もともと与えられているものしかないのです 。

人との違いをコンプレックスに思うということの原因のひとつには、社会の「みんなおんなじがいいよね。」という強制、その一方で個性を新たに探し出し追加するかのような風潮も関係しているのかもしれない。

養老孟司さんの言う通り、多分探さなくたって、新たにくっつけたりしなくたって、もう自分は充分自分だ。
そしてそれが悪いとか劣ってるとかいうことでは決してないはずだ。

どこか後ろめたく思うことはない。

だからといって、欠点だと自覚しながらそれを全て無理にポジティブに変換するのも違う。

ただ、私にはそういう特徴があるのだ、というだけ。

それを岡部さんみたいに、頭だけではなく、体現していきたい。

私自身のためだけでなく、周りにいる大切な人たちのためにも。

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