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話を聞き続けることは良いことか?

以前に、長々と自分の辛い日々の生活を語られる患者さんの話を書いた。

話をできる限り聞いて差し上げることも立派な治療の一環であると、自分が患者になった時の経験から思ったからだ。

病気は、孤独だ。
同じ病名で括られると同じ状態にいる人はそれなりにたくさんいるのかもしれないが、その人その人で抱えている背景や問題が異なるので、陥る状況や精神状態は人の数だけあると言っていいと思う。

一人で抱え込んだいろいろな問題や気持ちを、解放したい。
誰かに聞いてもらえるだけでもいい。
少しでもわかってもらいたい。
自分が頑張っていることを認めてほしい。

それは近しい人でもできることかもしれない。
でも上記のnoteにも書いた通り、親しいからこそ言えないこと、打ち明けられないこともあると自身の経験から知った。

だからこそ、薬局で長々とご自身の身の上話をされる患者さんの話を、どうしても切り上げることができなかったのだ。

ふと書店でタイトルが気になり手に取った。

この本の中で著者は、何度も下記のようなことを書いていた。

「医師は、医療という枠組みの中で患者さんとの関わりを保つべきであり、患者さんのプライベートにあまり深く入り込んで、患者さんの話を延々と聞いたりすれば依存などといった好ましくない関係を形成することにもなる。」

もちろん、話を聞くな、と言っているのではない。
どこまでも親身に、どこまでも話を切らずに、どんな内容でも時間に区切りをつけずに話を聞き続ける、というのは、医師としての関わり方ではない、というのだ。

医師がすべきことは、病気の診断、病気の進行状況や治療状況を把握するための周辺情報を患者さんや周りの方から聞くこと。
極端な言い方をすれば、心を軽くするために、ケアするために聞くのではない。

それらは医師としての仕事の範疇を超えているということ。

心にたまって沈んでいきそうな思いを聞き、本人から解放してあげるべき役割は、カウンセラーや心理セラピストなどが担う。

きっとそれは医師に限らず、看護師や薬剤師も一緒ではないか。

薬剤師であれば、その方がきちんと正しく服薬を遂行できるように補助したり、飲み忘れがあれば対策を考えたり、また副作用などの好ましくない症状が出ていれば、薬剤を中止あるいは変更、減量することを医師に提案したり、そのための情報を患者さんから得るということが、仕事の範疇であろう。

その情報収集の中で、患者さんが漏らす不安な気持ち、普段語る機会がない心の内をとめどなく話される状況であれば、患者さんの気持ちを損ねない形で切り上げるべきではなかったのか。

はっきりと、そして冷徹に、「ハイここからは私の仕事じゃないので!」と線引きをするのではなく、あくまで患者さんから見たら‟やんわり”と。


私はいい人のふりをして、自分の仕事の範疇を間違え、さらには患者さんの治療にとって好ましくないことをしていたのだと、この本に現実を突きつけられた気持ちになった。

もちろん話は聞きたいと思うし、それで少し気持ちが軽くなればいいのだけれど、度を超えてしまえば、依存関係になってしまう。

恥ずかしい話であるが、
自分が一体何を目指し、何をすることが自分の仕事であるのか、よくもう一度立ち返って考えるべきだと思わせてくれた本であった。

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