マガジンのカバー画像

おいしい。

12
覚えておきたいペアリング、食卓実験、良かった食のワークショップなどの記録。
運営しているクリエイター

記事一覧

私的記録としての『茶禅華』

◼️インプレッション 漢字四字

有料
100

追憶の味 ニンニクと唐辛子のスープパスタ

その昔、代官山の旧山手通り沿いに「peco」というイタリア料理店があった。あの辺りでは珍しく野ざらしの食堂みたいな店で、でも来ている人たちは結構イケイケで、結局やっぱり代官山だよね、ここは、みたいな腑の落ち方をする店だった。当時勤めていた恵比寿の会社から近かったので、仲の良かった仕事仲間とまあよく通った。だいたいオーダーするものは一緒で、サラダ食べて、ピッツァ食べて、あともう一つくらい食べて、締めは絶対に「ニンニクと唐辛子のスープパスタ」。このパスタに行き着くために、他のメニ

Ricetta per una buona giornata 〜良い一日の作り方(レシピ)〜

本棚を整理していたら、ノートに挟んでいた自分の走り書きを発見しました。詠み人不明なのですが、思わずメモったようです。また紛れて見つけられなくなってしまいそうなので、ここに残しておこうと思います。 Ricetta per una buona giornata 良い一日の作り方(レシピ) Prendete due dita di pazienza  指2本分の我慢と Una tazza di BONTA  善意を1杯 Quatro cucchiaini di b

おむすびリレーでおもったこと

とうとう回ってきてしまったリレーのバトン。学校の授業で当たる感じと似てるんだな。当たれば答えるけどできれば当たらない方がいいな、みたいな。私だけだろうかそんな感覚。嫌っていうのではないけれど、積極的に来てほしいものでもない。人がリレーであげてるのはちゃっかり楽しませてもらっているし料理レシピリレーなんて参考になったものがたくさんある。本のリレーも、あーこれ読んでみたいなと基本楽しんでるんだけど、なんですかね、大喜利っぽい感じでみてしまう。この人こうきたかーみたいな。それがちょ

今、世の中は清貧な欲望があふれている

朝、デコポンを手絞りして飲んでみた。普段なら絶対しないような料理や料理的な行為が、今の自分の日々を占めている。"時間がある時に”としまいこんでいた意識的なものや無意識的なものを行動に移している。移動自粛という未曾有の制限の中で、それでも私たちは刺激や喜びを欲しがり、普段とは違う種類の欲望と向き合っている。食べることで今多くの人たちが発揮しているのは、清貧な欲望かもしれない。 パンの耳や豆が引っかかる散歩中、初めての道で初めてのパン屋に入った。街パンぽい雰囲気で納豆トルティー

年越しの「最後の晩餐」@開高健

ここ2、3年のことだけれど、大晦日に本棚から「最後の晩餐」を引っ張り出して、目についた章を順序不動に読むのが気に入っている。そもそもこの本を教えてくれたのは、今は閉店してしまった広尾のフランス料理の名店「プチ・ポアン」のムッシュ北岡だった。もう10年ほど前のこと、ムッシュのところで打ち合わせがあり、確か肉の部位の話になったところで得意気に見せてくれたのが「最後の晩餐」だった。 タイトルから想像するのと全く違った「最後の晩餐」ムッシュ北岡は、本の中に2回登場している。「若い北

2019年総括 細胞が小躍りした店

まもなく2020年。今年も色んな店や人との出会いありました。純粋に美味しかった店、行ってよかった店は多々ありますが、一年の中でリピートした店は他の店と何が違ったのか?あらためて自分に問いかけてみました。特に美味しかった、コスパがいい、楽しかったというのとも違うし、話題の店に行った満足感でもない。よくよく考えれば、細胞レベルへの訴えかけがあったのではと思うのです。細胞が喜んで踊っている感覚。その感覚を細胞が覚えていているので自然とまた行きたくなる。自分もまた行きたくなるし、その

マルケの食卓&ワインを復習してみた(2)

マルケの旅の続き。マルケ州は、イタリアのアドリア海側の州。思うのに、イタリアのアドリア海側と日本の日本海側のポジションって似ているような。行くのに不便で、行ってみると手つかずで、お宝がたくさん。テンションあがります。普通の観光地では満足できない人向け旅のデスティネーションでしょう。海路の時代は、大国との窓口で、文化度が高いことも共通しています。日本海と古代中国、アドリア海と古代ギリシャ。とか言っているとどんどん話がそれるので9月の旅に話を戻します。(マルケ州は赤のところ)

マルケの食卓&ワインを復習してみた(1)

昨年9/12〜9/20、イタリア中部、アドリア海側のマルケ州に食とワインの旅に出かけました。出張でもないのにワイナリーを5軒、観光らしき名所には一つも行かない食とワインの旅。どこかに書きたいなーと思っても、マルケ州というイタリア人でもなかなか行かないような州なので、企画を持ち込んでもまずはマニアックすぎると言われる。でもこういうところほど行ってみると面白いのです。仕事でイタリアに行くと、どうしても北部中心になってしまうので、今回は久々にこれこれ、イタリアの面白いとこ、って旅で

コーヒー、至福の一杯への道のり

国、品種、農園名。スペシャリティコーヒーを扱う場合、大概こんな順で豆が紹介されることが多い。しかし、2017年4月、丸山珈琲の「Discover Coffe Project」は、”生産者でコーヒーを選んでほしい。コーヒーの個性を語るのは、国より品種より人”の考えで始まった。この年、シングル・オリジンの取材で辿り着いたのが同プロジェクトだった。折しも、この考えを体現するために「表参道 Single Origin Store」がオープンする(2017年9月)タイミングだった。丸山

NO RECIPE 炊き込みご飯<原木干し椎茸とエビ飯>

料理研究家でもなし、マメでもなし、でも食い意地は張っている。自宅ご飯で最も気にかけるのは、いかにレシピを見ることなく、長い時間調理することなく、美味しいご飯が食べられるか。これに尽きます。家でながらご飯を作りながら美味しくできた時、そこに何か共通することがあるんでないの、的な時だけ書いてみます。 炊飯器を捨てる炊飯器を捨ててかれこれ20年。炊飯器を使わなくなったのは多層鍋(アルミとステンレスが多層構造になっている鍋)で炊くようになってからです。元々保温したご飯があまり好きじ

ワインは空手で、日本酒は合気道なのだ。

イタリア人の酒サムライ、マルコ・マッサロットに出会ったのは、2015年のミラノ国際万博の年。知人から「日本酒をイタリアで広めるために一番頑張っているイタリア人」と紹介された。以来、彼が主催する日本の食文化ツアーを少しお手伝いしている。そして今年5月、彼の来日に合わせて実施したのが、イタリアのチーズと日本酒を合わせる会だ。マルコは、ワインよりも日本酒の方がチーズに合うと力説する。題して「SAKE × FORMAGGI Lab」。せっかくだから、イタリアではやらないようなペアリン