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カラーシフトの基本と応用 (最終更新日:Sept.26, 2023)


1.始めに

(1) 目的

写真撮影技法の中でも、特にコスプレ撮影で好んで使われる手法の一つが、ストロボ+カラーフィルターで被写体や背景に着色する「カラーシフト」であろう
筆者もまだ十分に使いこなせている訳ではないが、自分のための理論整理の意味も含めて、その基本と応用についてまとめることがこの記事の目的である

(2) カラーシフトとは?

最初に、本記事で取り扱う「カラーシフト」とは何かを定義しておく
ストロボにカラーフィルターを付けて白ホリや黒ホリの背景に着色するような撮影手法があるが、これが全て「カラーシフト」に当たる訳ではない
この記事ではカラーシフトを『スロボトにカラーフィルターを付け、且つ、デジタルカメラのホワイトバランスを調整することで、ストロボ光の届かない範囲まで含めて色を変化させる手法のこと』と定義する
この「ホワイトバランスの調整」が重要である (詳細後述)
なお広義には「カラーフィルターを使用した色被り補正」も上記の定義に当てはまるが、色被り補正よりも積極的に演色することが、カラーシフトの特徴であると考える

2.カラーシフトの基本

(1) 何が基本か?

基本的なカラーシフトの撮影手順は、以下の通りである

  1. ストロボにカラーフィルターを装着する

  2. カメラのホワイトバランスを色温度で設定する (オートホワイトバランスは使わない)

  3. ストロボを主たる被写体 (通常、モデル) に対して照射して撮影する

  4. ホワイトバランスは、主たる被写体の色味が「正しく」なる設定とする

ホワイトバランスの調整を行わなければモデルまでフィルターの色に着色されてしまう (これはカラーシフトとは考えない)
適切にホワイトバランスを設定することで、主要被写体の色調は正常 (モデルであれば肌色) に保ったままで背景のみ着色できる
ただし背景の色はフィルターの色ではない

この手法で使えるフィルターの色は、青とオレンジ(アンバー)である
例えば、

  • 青シフト:アンバー系のフィルターを使用し、色温度を2,500~3,500Kぐらいに設定することで、モデルの顔色を本来の色にした状態で、ストロボ光の届かない範囲を青みがかった色 (寒色系) に着色できる

  • オレンジシフト:青系のフィルターを使用し、色温度を6,500~7,500Kぐらいに設定することで、モデルの顔色を本来の色にした状態で、ストロボ光の届かない範囲をオレンジがかった色 (暖色系) に着色できる

色温度を何度に設定すれば主要被写体の本来の色が再現出せるかは使用するカラーフィルターごとに異なるため、適正値は試行錯誤で見つける必要がある
また例えば敢えて顔色を青白く表現したりする場合は、適正値より更に極端に色温度を下げるなどする手法もある
これがカラーシフトの基本である

カラーシフトの基本構成図

上図の通り、ストロボ光が届く範囲は、
カラーフィルターの色 + ホワイトバランス設定の影響 = 本来の色
となる
ストロボ光が届かない範囲 (背景など) は、ホワイトバランス設定だけが影響した色になる

写真1

写真1:通常撮影=ストロボにはカラーフィルターは装着せずに被写体 (人形) に照射し、ホワイトバランスはストロボに設定、背景にもストロボ(フィルター無し)を照射

写真2

写真2:全体に寒色系=ストロボ (カラーフィルターなし) を被写体に照射し、ホワイトバランスは3,200Kで設定、背景にもストロボ(フィルター無し)を照射

写真3

写真3:全体に暖色系=ストロボ (カラーフィルターなし) を被写体に照射し、ホワイトバランスは9,000Kで設定、背景にもストロボ(フィルター無し)を照射

写真4

写真4:寒色系カラーシフト=ストロボにアンバーのフィルターを装着し、被写体に照射、ホワイトバランスは3,200Kで設定、背景にもストロボ(フィルター無し)を照射

写真5

写真5:暖色色系カラーシフト=ストロボに薄い青のフィルターを装着し、被写体に照射、ホワイトバランスは9000Kで設定、背景にもストロボ(フィルター無し)を照射

カラーシフトに該当するのは、写真4と5である
写真2では、全体に青白くなるが、写真4では人形はほぼ適正な色調で表現されている
写真3と5の関係も同様である

(2) カラーシフトの原理

上の説明で「青いフィルターを付けると背景はオレンジ、アンバーのフィルターを付けると背景は青」と説明した
一見、フィルターの色と反対の色が背景につくように見える (ホワイトバランスを適切に設定している場合)
この関係を「補色」と呼ぶ
補色についてはWikipediaなどを参照頂きたい

(3) なぜカラーシフトを使うのか?

背景に色を付けた写真を撮る方法としては、カラーフィルター付きストロボを背景に照射する方法がある
この方法であればホワイトバランスや補色といった複雑なことを考える必要はない
スタジオのように背景(壁)が存在する場所なら、この方法でも問題ない

だが、屋外でのポートレートなどの場合は、背景 (空や都市空間) にはストロボの光は届かないため、背景を着色することは難しい
カラーシフトであれば、そのような場合でも背景の色を変えることが出来る

3.カラーシフトの応用

(1) 応用:マニュアルホワイトバランスとカラーフィルター

デジタル一眼カメラではほとんどの機種で、任意の画像をホワイトバランスの基準に設定することが出来る
キヤノンでは「マニュアルホワイトバランス」、ニコンなら「プリセットマニュアル」、ソニーなら「カスタムセット」と呼ぶようだが、筆者はキヤノンのカメラを使い続けているので、本稿ではマニュアルホワイトバランスと表記する

カラーフィルターを装着したストロボを白い面に対して照射して撮影した画像をホワイトバランスの基準画像に設定すると、背景が補色関係の色に演色される
これが、カラーシフトの応用である
以下、実施例を上げる
撮影した写真と、その写真を撮るためにマニュアルホワイトバランスの基準に設定した画像を右上に併せて掲載する

写真6
写真7
写真8
写真9
写真10
写真11
写真12
写真13
写真14
写真15

更新履歴

2023/09/26 新規作成