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バロックから古典派へ/アルゲリッチのピアノ

 もうすぐ夏至。晴れた日は19時近くなっても、まだ明るいですね。夕暮れの空気は、水色とピンクが混ざったような色をして、辺りを柔らかく包んでいるようでした。


 この頃好きな音楽の年代が、18世紀前半(バロック)から18世紀後半(古典派)へ、微妙にシフトしつつあります。いや、もう少し正確にいうとバロックは変わらず好きで、そこからさらに興味の幅が広がって、古典派もだんだん「いいなあ」と思えるようになってきました。そのきっかけとなったのが、5月に聴いたバンジャマン・アラールのチェンバロリサイタルです。
 
 全てバッハの作品のプログラムだったのですが、アンコールに1曲だけ、別の作曲家の作品を弾いたんです。その衝撃がすごくて・・・ずっとバッハに浸っていたところに、突然違うものが耳に入ってきて、ものすごく「新しい感じ」がしたんです。伝統的なお料理のフルコースの最後に突然、見たことないような斬新なデザートが出てきてびっくり!みたいな。
 その曲はチェンバロで演奏されているのに、私にはまるで、ピアノを弾いているように感じられました。
 旋律と伴奏がきちっと分かれていて整った感じがしたし、同じフレーズの繰り返しも多かったから、モーツァルトかな?と私は予想したのだけど、結局それはスカルラッティという、バッハと同い年のイタリア出身の作曲家の作品でした。

↑聴いたのはこの曲。
 スカルラッティもバロック時代の作曲家という区分ではあるけれど、この一件がきっかけで、バッハの後の世代・・・いわゆる「古典派」と言われる楽曲様式への興味がわいてきました。旋律が編まれているようなバッハの音楽もいいけど、きれいにそろった和音の伴奏の軽やかさ、新鮮さも素敵だなあと思えるようになりました。


 また、6月の頭には、マルタ・アルゲリッチ&フレンズのコンサートに行きました。アルゲリッチは先日81歳を迎えた、世界的なピアニスト。私は彼女の生き生きとした演奏でバッハが好きになりました。そのアルゲリッチのピアノ・・・生で聴くと、心底驚くことばかりでした。
 まず弾いた音が、透明なキラキラとはまた違って、色濃くて・・・宝石でいうならオパールのような、不思議な輝きを放っているよう。音ひとつ弾いただけで、どこまでも響きが伸びていくんです。
 そして、バイオリニストの辻彩奈さんと演奏する時と、ピアニストの酒井茜さんと演奏する時とでは、キャラクターが完全に違っていました。共演者によって、これだけ振れ幅を変えられる、その表現力の豊かさにも驚かされました。
 もともとの演目にあったアルゲリッチのソロは「無し」という連絡が事前に来ていたのですが、当日になって、ショパンの「パガニーニの思い出」をやっぱり演奏してくれる!ということになり嬉しかったです。実は、この曲は中学生の頃に弾いたことがあったので、自分の弾き方とはどう違うだろう?って気になっていたんです。で、聴いてみると、私だったら力入れて押しちゃうだろうなあ~というところで彼女はまったく反対で、スッと力を抜いて、音を響かせていました!!!本当に一瞬で脱力してる・・・。私もそういう弾き方もできるように、研究していきたいなと思いました。
 アルゲリッチは現代のピアノという楽器の魅力を、極限まで引き出せる人なんだなあと感じました。ピアノという楽器が今ここにあって良かったなと・・・より良い響きをつくりだそうという、これまでの楽器制作者のたゆまぬ努力に感謝というか・・・そんな気持ちになりました。


 私は古い時代の音楽が好きでよく弾くので、当時の演奏様式や楽器の響きを想像しながら練習することが多いですが、そのうえで、現代のピアノの響きの美しさも上手く取り入れて、演奏できるようになれたらいいなあ~と思うこの頃です。

#音楽 #チェンバロ #ピアノ #クラシック