「ほんまいろいろあったんじゃけー!」広島全盲子連れ旅!2日目(前編)

 広島旅行二日目は、ベッドから起きだしたひなちゃんの、元気なはしゃぐ声から始まった。
 もう少し寝かせてほしいと願う、我々の思いが勿論届くことはない。まだ午前7時にもなっていないというのにだ。
 ひなちゃんは、ホテルの部屋のお盆やティーポットの土台等備え付けの備品を活用しさっそくがちゃがちゃと遊び始めた。
 夫もひなちゃんほどではないが二日目には見事完全回復を果たし、朝から
「なんかお腹空かへん?」
とまあ、能天気なことを申していた。
 すごすごと起きだした私たちは朝ご飯をホテルのレストランに食べに行くため準備を始めた。服を着替え、エコバッグにひなちゃんのぷにぷにしたシリコン製のエプロンとおしりふき、ひなちゃんを椅子に固定するためのチェアベルトと私たちのスマホを放り込んだ。
 レストラン会場に着くとおばちゃんっぽい広島弁全開の店員さんが優しく席まで案内してくれた。
 朝食はビュッフェ形式となっていた。スタッフの方にお願いしてとってきてもらおうかとも思ったのだが、やはり全体的にどんなものがあるのかは気になる。ということで、スタッフの方に1度一緒に食べ物を取りに行ってもらえないかと頼むと、快く了承してくれた。
 ビュッフェには我らが広島のお好み焼きや、魚の練り物であるがんすてん、広島菜、尾道ラーメン等、広島らしいメニューが並べられていた。
 旅行で様々な場所のホテルに泊まるとビュッフェでその場所のご当地メニューを食べられることもある。ホテルの朝食も旅行の楽しみの一つだ。
 スタッフの方とビュッフェを回りながら私たち3人分のご飯を取ってもらっていると、
「ままー、ままー、ままー!!!」
とひなちゃんの怒ったような叫び声が会場に響いた。
 慌てて席に戻るとなかなか出てこないご飯にしびれを切らしたひなちゃんが椅子に立ち大声を出していたのだ。
 夫はそれまでひなちゃんに話しかけたり、水を上げたりして気を紛らわしてくれていたようだが、ついにひなちゃんは
「ままー、この人がご飯をくれませーん!」
と言いつけるかのような抗議行動を始めたとのことだった。
 ご飯が揃うと、ひなちゃんはそれまで何も無かったような顔をして、静かにゆでたブロッコリーやソースのかかっていないお好み焼き、フルーツをわしっと、手で掴み口いっぱいに頬張っていた。
 私たちもつかの間の休憩である。懐かしの広島メニューを楽しみ、ゆっくり紅茶までいただいた。
 ホテルの部屋に帰ってからは少し休憩をし、お風呂に入り身支度を始めた。
 ここで持参した紙袋に不要になった荷物を詰め込み、ガムテープで閉じると、ホテルのフロントまで夫に持って行ってもらい、一足先に大阪へ送ってもらう手はずを整えた。
 どうにか身支度を11時に終えホテルのフロントに行くと既にT先生は待っていてくださっていた。
 いざ大久野島に向け出発だ。

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