水彩の遊び

アオスジアゲハの黒い羽には、青い窓がいくつも開いて並んでいる
とてもきれいなグラデーションなんだ
その様はまるで映画のフィルムみたいだと思う
アゲハが羽ばたくたびに、映画が少しずつ進んでいるとしたら、どんなにすてきだろう

ひらいた透明傘をぷらぷらとふって歩く
君の目元まで落ちてくる
細い 細い 雨
それを見るたびに、僕は古いテレビの中
流れる、白くとぎれとぎれのノイズ
を思いだすんだ
黒い画面のなか 写っている二人
ふと、ゆりの花が咲いていると思ったけれど
錯覚だった
彼らの後ろには何も咲いていない
何かしゃべっている けれど、
声はきこえない
いや、しゃべってはいないのか? どうだろう
ただ、ぎこちない様子で 目をあわせたりしているのはわかる
ただ、それだけ

どくだみの匂いがする
ほら、雨にふれて、

いつか話したろう
遠い国の昼下がりのカフェテラスで
注文されたのに 口をつけられずに
誰にも知られないまま
ゆっくりとさめていくミルクティーのこと
それに静かに降りる午後のひかりのこと

窓のむこう
螺旋階段の像は滴る雨の雫で歪んでほどけて、、

、花の香りがしている どくだみの
雨にふれて、強く


モノクロ写真のなかの人の、瞳のような優しさを探して、
羽を休ませる彼の肢体を
ウスアオミドリに染め上げて
地平線の夢をみる、君の
背骨から 夜に染みて香る孤独が
どうしようもない
どうしようもなく 、
この体の音色を覚ます

木洩れ日と、いつかの雪と 月
僕の瞼を踏み荒らして、
優しく撫でていく
モノクロームの君の傘

どくだみの花の匂いがする
ほら 雨にふれて、強く

、 君が 歌っている

また少し、羽に傷がつく

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