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一番元気な日に、17回目の結婚記念日を過ごす。

4月29日は17回目の結婚記念日だった。
お祝いはというと、ここ数年はだいたい「ちょっと良い温泉宿」に宿泊することにしている。
去年はそういえば、GWに富士山の麓へキャンプに行き、それから伊豆の「ちょっと良い温泉宿」に泊まったのだったなぁと思い出した。

今年は治療もあるし、何もできないかなと思っていたのだが、運良く(?)この間緊急入院して休薬期間ができたので、「今年もどこか行こう!」と夫が言い出した。
確かにチャンスだ。キイトルーダ(2回目)の点滴は4月1日だったので、もう4週間以上空いているし(本当は3週に一度点滴する)、レンビマも10日以上休薬しているので、今は薬が体から抜けている状態。食欲もあるし、お腹が痛い以外は元気だ(退院してからまたお腹の痛みが強くなってきた)。
それに5月1日から3回目のキイトルーダでまた入院するので、それ以降は動けなくなるだろうし、本当に「今」がベストなタイミングだった。

ギリギリだしGW中なので、もういい宿は空いていないかなぁと思ったが、ちょうどGW前半・後半の切れ目で30日が平日ということもあり、まだ29日に泊まれる宿はいくつかあった。
今回選んだのは、「ふふ奈良」という温泉宿。部屋に露天風呂がついている。家からも車で1時間かからないくらいなので、体への負担も最小限に抑えられる。部屋も空いていたので朝食付きで夫に予約してもらった。

奈良公園のすぐ隣で、便利な街中にあるのに、広い敷地に庭園があるので、部屋からは竹林が見えてとても自然豊か。
世界的建築家「隈研吾」氏のデザインで、部屋はグレーを基調とした色味で統一され、そこに味のある木製の家具が配置されている。大きな窓からは露天風呂が見え、その向こうには美しい竹林が風に揺れている。

間接照明など、調度品のひとつひとつがおしゃれ。(おしゃれすぎて何これ?というものも飾られている)

こんなのがある
おしゃれすぎてよくわからない


15時ちょうどにチェックインし、それから「ならまち」を歩いた。私は大学が奈良だったので、「うわ、まだこの店ある!」と懐かしい店を発見すると気持ちが盛り上がるが、やはり30年も経っているのであの頃から残っている店はそれほど多くはない。
私がたくさん食べられないので、宿に夕食は付けなかった。事前にネットで夫が好きそうな店を探してみると、あった。
「酒処 蔵」

宿を贅沢したので、夕食は普通の居酒屋にした。でも、私の「おいしいものアンテナ(非常に性能がいい)」が「ここはいいぞ!」と言っている。

本当に蔵が店になっている


16時オープンというのもうれしい。(早飲みが好きだ)
16時5分前に店の前に行くと、もう6人並んでいた。何人くらい入れるのかわからないが、とりあえず入れるだろうと思い、私たちもその後に並んだ。
16時ちょうどにおっちゃんが出てきて、「はい、じゃあ、最初に並んでいた方からどうぞ」と案内してくれ、順番にぞろぞろと入っていく。
私たちに「2名?」と聞き、「はい」と答えると、「じゃあ、すみませんが、ここまで」と、おっちゃんは私たちの後ろの人たちに言った。
おおー!ギリギリセーフだ。たった8人しか入れないのかとびっくりしたが、常連さんの予約があったようで、実際は11人入った。(それでも11人だけど

中はコの字型のカウンター席で、おでんの鍋がぐつぐつ煮込まれ、出汁の良い匂いを漂わせている。厨房は奥にあり、おでん以外はおっちゃんがいちいち奥まで引っ込んで料理を運んでくる。接客はおっちゃん一人なので、注文をとるのにもすごく時間はかかるが、そういうことが気にならないゆったりした空気が流れていた。
いつからあるのかわからない古い木のアサヒビールの看板などあり、なんともレトロな雰囲気。ザ・昭和!だ。
夫はこういう店が好きなので入ってすぐに興奮しているのがわかった。「いいなぁ、好きやわ~」とつぶやいている。
おっちゃんが順番に注文を聞いていき、みんなが刺身盛り合わせを注文していたので、絶対これは外せないのだろうと思い、私たちも刺身盛り合わせを頼んだ。それから、「真子のたいたん」とおでんをいくつか注文した。
「マコって何?」と夫。「魚の卵」と私。何の真子なのかはわからないが、私は魚卵や白子が好きなので楽しみだった。

お客さんはみんな最初はビールを注文していたが、私たちだけが最初から日本酒。壁に貼ってある日本酒銘柄を見ると、奈良のお酒を少数精鋭で置いているのがわかった。
おお~!篠峯がある!風の森も!
今日は結婚記念日だからと、私も「篠峯」をグラスで頼み、60mlくらいだけ飲んだ。残りは夫が飲んでくれた。

篠峯はうすにごり

久しぶりの日本酒はたまらなく美味しかった。そして、運ばれてきた真子のたいたんが絶品!一口食べて、日本酒をくーっと一口やる。たまらん。

真子のたいたん

私が目を細めて「くぅ~!」と小さくうなっていると、夫が「おいしいの?そんなにおいしいの?」と嬉しそうに笑っていた。
おいしいよ、たまらんよ、またこうやって好きなだけ日本酒を楽しめるような体になりたいよ。絶対なるよ。

おでんはもちろんおいしかった。大根は分厚いのにきちんとしゅんでいて、口の中でじゅわーっと汁があふれる。

刺身も美しかった。おいしい刺身って、美しいのだといつも思う。輝きが違う。どれもこれも想像以上のうまさ。

でも1時間経つ頃には私はちょっとしんどくなってきて、たぶん夫はまだまだ飲み食いしたかっただろうけど、「しんどい?もう出ようか」と気遣ってくれた。
途中で何人も「入れます?」と新しいお客さんがやって来ては断られていたし、なかなか入れないお店だし、他のお客さんはしっかり飲み食いしていたので、なんだか1時間で出るのはもったいない気がしたが、もう私は座っているのが限界だった。

名残惜しい気持ちで店を出た。でもとてもおいしかったし、日本酒も少しだけ飲めたので満足!夫も「よかったなぁ。めっちゃいいお店やった。ありがとう。ほんま店探すのうまいなぁ」とお店も私のこともベタ褒めだった。

よかった。
私たちらしい、結婚記念日の夕食になった。

三条通りで名物の草餅を買って、近鉄奈良駅まで出て、ローソンで少し買い物をしてからタクシーで宿まで帰った。
GWということもあり、奈良公園付近も商店街も人でごった返していた。外国人も多い。
お腹が痛くなければ、少し奈良公園を散策したかったが、タクシーの中から見ているだけ。相変わらず鹿が多いなぁとか、そんなことを考えながらお腹の痛みを我慢していた。

宿について薬を飲み、少し休んでから部屋の露天風呂に入った。

天然温泉なのだが、「和漢の香りの湯」を楽しむというコンセプトがあり、薬草のようなものが入った入浴剤が用意されていたのもよかった。
竹林を見ながら入るお風呂は最高だった。
ベッドもちょうどよい硬さで、痛みで起きることなく4時間は連続して眠れた。

朝ごはんは付けていたので、場所を移動する。広い庭園を歩いて食事処の建物まで行くのだ。夜、雨が降っていたのが上がり、木々の色がくっきりと映えて美しかった。


朝食はとても豪華!こういう温泉宿の朝食って、ただ品数が多いだけのところもあるが、ここは「白ごはんを食べさせるためのおかず」にこだわってるなぁと感じた。

最初に温かい三輪素麺が出てくる

おかずは少しずつ種類がたくさんあるのもうれしく、朝から私もお茶碗1杯のごはんを食べることができた。おかずも全部食べた。(苦手なきゅうりと梅干だけ夫に食べてもらった)

2人分のおかず
鶏のすき焼き風

特に「鰈の西京焼き」が最高だった。鰈(かれい)って薄くて食べるところが少ない印象だが、ふっくらと身が厚く、やわらかく、上品な味付けの鰈だった。こんなに身が厚いということは、きっとすごく大きな鰈なんだろうなと思う。

鰈の西京焼き、最高!

朝からたくさん食べられたのはうれしかったが、さすがにちょっと苦しくなり、部屋で少し休んでから最後にもう一度温泉に浸かった。
スタッフの人たちもみんな感じがよく、最初から最後まで心地よく過ごせた。本当にいいお宿!おかげで最高の結婚記念日になった。
連れてきてくれた夫に感謝。
18年目も仲良く力を合わせて、毎日を笑顔で過ごしたい。

さあ、明日からまた治療が始まる。今度は無理しすぎないように、我慢しすぎないように、気をつけながらがんばろう。
治療前の最高の1日。神様からのプレゼントみたいだな。

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