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スライダー系球種を深掘りしてみよう #3

こんにちは。
先ほどJRAに有馬記念で4,900円ほどカツアゲされてきました。

最近自分の心の中の女子がお菓子作りをしたがっているので時々作っていますが、チョコバナナスコーンがとても簡単でおいしいです。
板チョコ1枚・バナナ1本・ホットケーキミックス200g・サラダ油大さじ2を袋に入れて適当に混ぜて、4~6等分して180℃のオーブンで20分弱。
みなさんも心の中の女子とぜひ。

さて前々回、前回と続けてきた"スライダー系球種を深掘りしてみよう"シリーズの第3弾です。
前回の振り返りといきたいところですが、振り返っているうちに終わってしまいそうなのでリンクを貼っておきます。
復習したい方、まだ読んでいない方はどうぞ。

今回は球速別・投打の左右別・投球コース別にスライダー系球種を見ていきます。

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1. 右投手 vs 右打者

前回も触れていますが、右対右の対戦はスライダー系球種の40%を占めています。
SwStr%は対戦の組み合わせの中で最も高く(14.1%)、基本的には外に逃げるボール球として使用されていることが推測されます。
そのSwStr%は135~139km/hでピークとなり、一方で打撃結果の得点価値を示すwOBAは140~144km/hの球速帯で低くなる傾向があります。

それでは以下にコース・球速帯別の各指標を示します。

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自分で作っておいてアレですが死ぬほど見にくいですね。
上から順に投球割合・Swing%・Contact%・SwStr%・wOBA、左から順に球速帯が上昇するよう並べています

投球割合に注目すると、これまでの見立て通り基本的には外角低めボールゾーンに集められています。
最も遅い球速帯では比較的ゾーン内にも投じられていますが、球速が上昇するにつれてボールゾーン中心になり、最もSwStr%が高い130キロ後半で外角低めボールゾーンの割合が最大に、140キロ以上ではまたストライクゾーン割合がやや上昇しています。
また、どの球速帯でもフロントドア的な使い方はほとんどされていません。

打者のスイング傾向は、基本的には真ん中より外もしくは高めが中心。
120キロ台ではゾーン内でもスイングを仕掛けない傾向が見られます。

Contact%・SwStr%を合わせて確認すると、やはり高めのボールはバットに当てやすいようです。一方で投球割合が高い外角低めボールゾーンはSwStr%が概ね18%以上と空振りを最も奪いやすいゾーンになっていることが分かります。
135~139km/hの球速帯では外角低めボールゾーンに加え、ゾーン内でも18.3%をマークしており、"振れば空振り・見逃せばストライク"の理想形を実現しています。
一方、ストライクゾーン高めでは基本的に空振りが少ない傾向がありますが、140~144km/hの球速帯では一定程度空振りが発生しています。スライダー(スラッター)が高めに抜けていく軌道になる、いわゆる"抜けスラ"的なボールが集まっている可能性が推測されます。

最後にwOBAを見ていくと、やはり外角低めは低い傾向を示すものの、ストライクゾーンの真ん中周辺では高くなってしまうようです。
しかし、140~144km/hの球速帯ではゾーン内でも相対的にwOBAを低く抑えることができており、先ほどの"抜けスラ"的な要素のボールも含め"バットには当たるが凡打"という状況になっているようです。
スライダー平均のGO/FO・1.16に対し、右対右のこの球速帯におけるGO/FOは1.43。ゾーン内に投じることでゴロアウトを獲得する目的で使用されていることが推測されます。


2. 左投手 vs 左打者

投打が同じ対決を続けます。
右対右に比べるとSwStr%等は劣りますが、wOBAは4パターンの対戦の中で最も低くなっています。
基本的には右対右と似た傾向ですが、SwStr%とwOBAが120~124km/hの球速帯で最も良い値を示す点が特徴です。前回触れたように、このあたりの球速のスライダーを武器とする左投手が多く存在することが要因になっているようですが、どのようなコースに投じているのでしょうか。

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投球コースは基本的に右対右とほぼ同様。ただ、外角低めへの意識はこちらの方が強そうです。120キロ台前半では外角低め(ゾーン内外)への投球割合が40%を超え、右対右の対戦を5%近く上回ります。
また、球速上昇に伴ってゾーンが上がっていくのも同傾向ですね。

Swing%についても同様で、ゾーン内スイング率に注目しても前述の120キロ台前半に関して右対右と比較した際に極端な違いは見られません(55.3%と58.5%)。

Contact%およびSwStr%も、高めはコンタクトしやすく、低め、とりわけ外角低めボールゾーンは空振りになりやすいという傾向は変わりません。
全体的には右対右のほうがSwStr%は高いものの、120キロ台前半では左対左の方が高く、逆転が見られます。
先ほどから再三触れている120キロ台前半の球速帯に関しては、右同士の対戦と比較して極端に差異はないものの、徹底した外角低めへの配球がこのような結果を生んでいるのではないかと思われます。

wOBAでも右と同様、真ん中のゾーンでは高くなる傾向を示します。
一方で120キロ台前半ではボールゾーンのみならずゾーン内でもwOBAが低く抑えられており、右同士の対戦とは異なる点の一つです。
同球速帯でのGO/FOは、右対右0.90に対し左対左は1.14。かなり主観的ですが、曲がりの大きなスライダーに対して左打者が腰の引けたようなスイングで弱いゴロを打っているシーンは少なくない印象ですので、スライダーのアウトローへの集中と左打者のスイングの特性(一塁側に体が流れやすい)が合いまった結果なのではないかと思っています。


3. 右投手 vs 左打者

ここからは投打が逆の対戦。
右対左はスライダー系球種全体のおよそ30%を占め、Zone%が最も高く、SwStr%が最も低い対戦となっています。

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投球割合を見ていくと、どの球速帯でもバッターの足元への投球がメインになっているようです。
一方ゾーン内への投球では球速帯により異なる傾向が見られ、120キロ台ではバックドア中心、球速が上昇するにつれインコースへの投球が増加しています。

続いてSwing%
特徴的な点としてアウトコースのスイング率の低さが目立ちます。特に120キロ台についてはある程度アウトコースへの投球も存在する中でスイングを仕掛ける割合が低いことから、左打者へのバックドアスライダーでカウントを稼ぐことが有効である可能性を感じます。
一方、135~139km/hでは内角ボールゾーンのSwing%がボールゾーンとしては比較的高い傾向にあるように見えます。速度・曲がり幅的に見極めの難しいボールなのかもしれません。

Contact%SwStr%を合わせて見ていきましょう。
バックフットスライダーの空振り率は球速が上がるにつれ上昇し、例のごとく130キロ台後半でピークとなります。
また、130キロ台後半を含めてアウトハイの空振り率が比較的高いことも特徴的です。先ほどもあったように、抜けスラ的な要素のボールがこのコースに投じられている可能性があります。

これまで見てきた投打が同じ対戦に比べ、wOBAは高い値を記録しています。ゾーン内に加え、投球割合の高いインローのボール球に関してもwOBAは高めの数値を示します。
対してアウトコースについては比較的優秀な数値をマーク。Swing%の項で触れたように打者の想定にないボールの可能性があり、活用の余地が残されているのかもしれません。


4. 左投手 vs 右投手

最後に全体の10%程度と最も占率の低い組み合わせである左対右を見ていきます。

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投球割合については右対左を裏返したような分布になっていますが、こちらの対戦の方がより顕著にインローへの投球割合が高いようです。
左対左の対戦でも右対右に比べ外角低めへの投球傾向が強かったことと同様に、左投手特有の傾向なのかもしれません。

Swing%についても同様に裏返しになっています。バックドアの傾向も同じようになっていますが、全体的にこちらの方がSwing%はやや高めです。
この対戦では打者がある程度スライダー系球種に張っているのかなと思いましたが、スライダー系投球割合は右対左の18.4%に対し左対左は19.7%と大きくは変わらず、どのような要因があるのかは現時点で想像がつきません。

右対左と比較すると、左対左のContact%はやや低く、SwStr%はやや高い傾向が見られます。
インローのSwStr%は全球速帯を通じて右対左に比べ高い一方、ゾーン内での空振りはやや少ない印象を受けます。先ほどのSwing%も含め、左投手特有の事情(プレート上の立ち位置やクロスファイア等)が絡んでいるのでしょうか。

最後にwOBAですが、上述のようにインローのSwStr%が高いことによる影響か、同コースのwOBAは右対左よりも低い数値となっています。
また、バックドアのボールは120~134km/hの球速帯でこちらでも有効になっており、こうしたボールを活用できることは大きな強みになりうるように思いました。


5. まとめ

全3回にわたるスライダー系球種の連載もいよいよフィナーレです。
お疲れさまでした。

ここまでで明らかになった傾向や特徴をまとめていきます。

・スライダー系球種はNPBで最もポピュラーな変化球
・球速上昇に伴いZone%・Swing%は上昇するが、打者は球速から変化量を予測するため、同じ球種でも球速が速い方がスイングを仕掛ける割合は上昇するものと推測される
・Contact%は120~139km/hで低く、"バットに当てさせない"という観点では同球速帯が球速と変化量のバランスは良さそう
・打者にコンタクトされにくくストライクゾーンへの投球割合が比較的高い、135~139km/hでSwStr%が最も高くなる
・wOBAが低い球速帯は120~124km/hおよび140~144km/h、前者はバットに当てづらいボール、後者は凡打を誘うボールであることが要因ではないか
・Swing%は球速上昇に伴い上昇する傾向を示すとともに、遅い球速帯では投打が同じ対戦に比べ、投打が逆の対戦の方がSwing%が低い
・投打が逆の対戦の方がContact%は高く、スライダーが外に逃げるボールにならないことによるものと考えられる
・135~139km/hの球速帯でSwStr%は高くなる傾向があるが、120キロ台のスライダーを武器とする左投手が多いことを一因として、左対左の対戦では120~124km/hの球速帯でもSwStr%が高まる
右対右、左対左の対戦
・基本的に外角低めのボールゾーンが投球の中心で、130キロ台後半で最も割合が高くなり、左投手の方がその傾向は強い
・高めのボールはバットに当てやすい一方、外角低めボールゾーンが空振りを最も奪いやすいゾーンであり、135~139km/hの球速帯では外角低めゾーン内で"振れば空振り・見逃せばストライク"の理想形を実現
・ストライクゾーン高めでは基本的に空振りが少ないものの、140~144km/hの球速帯では一定程度空振りが発生しており、いわゆる"抜けスラ"的なボールが集まっている可能性がある
右対左、左対右の対戦
・バッターの足元への投球がメインであり、ゾーン内への投球は120キロ台ではバックドア中心、球速が上昇するにつれインコースへの投球が増加
・SwStr%はバックフットのコースで高く、130キロ台後半でピークとなる
・バックドアのボールの投球割合は決して高くないが、Swing%やwOBAが低いことから、まだ活用の余地が残されている可能性がある

長すぎてまとまってないですね。

球速・左右・コースによってかなり傾向に差があり、改めて奥の深い球種であることを感じました。
今後の課題として、勉強中のStatcastの数値も使いつつ変化量の視点からもより詳細に見ていきたいと思っています。

次回は「この"スライダー"がすごい!2020」を予定しています。
2020年のうちに出せるかどうか、おたのしみに。

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