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スライダー系球種を深掘りしてみよう #2

こんばんは。
M-1おもしろかったですね(日曜日に書きはじめた)。
個人的推しはオズワルド見取り図でした。

今回は"スライダー系球種を深掘りしてみよう"の続きです。


1. 前回の振り返り

前回の記事"スライダー系球種を深掘りしてみよう #1"では、2020年のNPBにおけるスライダー系球種(スライダー・カットボール・スラーブ)の球速帯による各種指標の差異や特徴を見てきました。

内容を以下で簡単に振り返ります。

・スライダー系球種はNPBで最もポピュラーな変化球
・球速上昇に伴いZone%・Swing%は上昇するが、打者は変化量の小さいボールの方が捕えやすいと判断する傾向があるのではないかと推測される
・Contact%は120~139km/hで低く、"バットに当てさせない"という観点では同球速帯が球速と変化量のバランスは良さそう
・打者にコンタクトされにくくストライクゾーンへの投球割合が比較的高い、135~139km/hでSwStr%が最も高くなる
・wOBAが低い球速帯は120~124km/hおよび140~144km/h、前者はバットに当てづらいボール、後者は凡打を誘うボールであることが要因ではないか

太字部分(打者は変化量の小さいボールの方が捕えやすいと判断する傾向があるのではないかと推測される)については、Namiki_Baseballさん(@Baseball_Namiki)より、"球速そのものにSwingを誘発させる要素があるのではないでしょうか?"とのコメントを頂きました。

確かに打者がスイングを仕掛ける際には「変化量が小さそうだからスイングしよう」と考えているのではなく、「球速が速いから(ストレートもしくは変化量の小さいボールを予測して)スイングしよう」というように反応していると考えた方が自然な気がします。
したがって、"変化量の小さいボールの方が捕えやすいと判断する"という推測は正確ではなく、"打者は球速から変化量を予測するため、同じ球種でも球速が速い方がスイングを仕掛ける割合は上昇する"というロジックの方が適切かもしれません。
ありがとうございます!


2. 左右別のスライダー系球種

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今回は投手の左右・打者の左右に分けて特徴を見ていきます。
投球の割合は、左左:左右:右左:右右=20%:10%:30%:40%。
前回はトータルで指標を見ていきましたが、右対右の対戦の影響を強く受けていたようです。

まずは球速。スライダー系球種に関しては右投手が左投手を5km/hほど上回ります
ストレートの平均球速の差はおよそ3km/h(右:145.9km/h・左:142.8km/h)であり、ストレート以上に左右の球速差が生じているのは興味深い点です。

Zone%は投打が逆の対戦(LHP vs RHB・RHP vs LHB)の方が高く、一方でSwStr%は投打が同じ対戦(LHP vs LHB・RHP vs RHB)の方が高いことから、投手は打者の左右に応じて異なるスライダーの使い方をしていることが窺い知れます。

wOBAは投打が同じ対戦の方が低く、外に逃げるボールの強力さによるものと推測されます。


3. 球速別・左右別のスライダー系球種

ここからは投打左右別かつ球速別で見ていきましょう。

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Zone%に関しては前回述べた通り、球速による違いは大きくありません(強いて言うなら割合の多い右対右の対戦で球速上昇に伴いやや上昇傾向)。
いずれの球速帯においても投打が逆の対戦(緑系の2色)の方がZone%は高く、外に逃げるボールにならない分、ゾーン内で動かす、もしくはバックドア的な用法がメインになっていることが考えられます。


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Swing%は球速上昇に伴い上昇する傾向を示します。
遅い球速帯に注目すると、投打が同じ対戦に比べ、Zone%が相対的に高い投打逆の対戦の方がSwing%が低いようです。
一般的にゾーン内の方が打者のSwing%が高いという性質に反していますが、前回記事で述べた"遅く、変化量の大きい(と推測される)ボール"はたとえゾーン内であっても「捕えにくい」と打者に感じられている"という推測を補強する結果となりました。


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続いてContact%。
いずれの球速帯においても投打が逆の対戦(緑系の2色)の方がContact%は高く、Zone%と同様にスライダーが外に逃げるボールにならないことによるものと考えられます。

投打を合算していた前回の記事では、"Contact%は120~139km/hのゾーンで低い"ことを確認しましたが、投打を分けてみると右投手・左投手でその傾向に違いが見られます。
右投手(RHP)は120キロ台よりも130キロ台の方がContact%が低く、一方で左投手(LHP)は120キロ台の方が低い傾向にあるようです。


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次はSwStr%
投打合算では135~139km/hの球速帯で最も高くなったSwStr%ですが、投打別に細分化しても概ね同様の傾向を示しました。

左対左の対戦に注目すると、この対戦のみ2つ山があるような歪な折れ線となっています。120~124km/hの球速帯において左対左のSwStr%が高い要因として、以下に示すように120キロ台のスライダーを武器とする投手が左投手に多く集まっていることが要因の一つとして考えられます。

120~124km/hのスライダー系球種 SwStr%上位
(50球以上、太字は左投手)
山田修義(オ) スライダー 27.9%
福田 俊(日) スライダー 22.7%
中澤雅人(ヤ) スライダー 21.5%
岡田俊哉(中) スライダー 19.8%
堀 瑞輝(日) スライダー 19.4%
齋藤綱記(オ) スライダー 17.8%
大江竜聖(巨) スライダー 16.5%
田嶋大樹(オ) カットボール 15.4%

平良拳太郎(D) スライダー 14.8%
中村祐太(広) スライダー 14.5%

左投手は遅い球速帯でContct%が低い傾向を示していましたが、これについても上記の要因が影響していそうです。
この球速帯のスライダーを活用できることは、特に左打者との対戦において大きな武器となりうることが示唆されます。



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最後にwOBAを確認します。
前回トータルで見たときには以下のような傾向を示していました。

・最も遅い・速い球速帯では高い一方、隣に位置する球速帯(120~124・140~144)で低下、中間の球速帯(125~139)ではスライダー系球種の平均的水準
・120~124km/hはバットに当てづらいボール、140~144km/hは凡打を誘うボールであることが要因ではないか

今回のように投打別に見ると、投打が同じ対戦の方が逆の対戦に比べwOBAは低い傾向にあります。
さらに球速帯による差に注目すると、なかなか解釈の難しい結果を示しています。

まず左対左に着目すると、先ほどのSwStr%と同様に120~124km/hの球速帯でwOBAが大きく低下しています。SwStr%と同じく、この球速帯で質の高いスライダーを操る投手が多く存在することが要因と考えられます。
左対右では130~134km/hでwOBAが上昇しています。これは左投手の平均よりやや速い球速帯ですが、何が生じているのかもう少し深掘りする必要がありそうです。
右対左では120~124km/hでwOBAは低下。バックドアのようなスライダーが効果を上げている可能性がありますが、これもコース別に確認してみたいと思います。
最後に右対右は、前述のようにスライダー系球種の総投球数の4割をこの右同士の対戦が占めることから、トータルの結果に近い傾向を示しました。


4. ここまでのまとめ

なんと2回では終わりませんでした(ゲッソリ)。
今回のまとめは以下の通りです。

・投打が逆の対戦(緑系の2色)の方がZone%は高く、ゾーン内で動かす、もしくはバックドア的な用法が中心であることが考えられる
・Swing%は球速上昇に伴い上昇する傾向を示すとともに、遅い球速帯では投打が同じ対戦に比べ、投打が逆の対戦の方がSwing%が低い
・投打が逆の対戦の方がContact%は高く、スライダーが外に逃げるボールにならないことによるものと考えられる
・135~139km/hの球速帯でSwStr%は高くなる傾向があるが、120キロ台のスライダーを武器とする左投手が多いことを一因として、左対左の対戦では120~124km/hの球速帯でもSwStr%が高まる

次回は球速・投打の左右に加えコース別でもスライダー系球種の投球を見ていきたいと思います。

"スキ"の一発ギャグは全5種類、特に当たりはないです。
よろしくお願いします。

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