ショールーミング、D2Cって特に新しいことは何もない件

◉バズワードに踊らされるな

今仕事をしているライフスタイル業態や近しい業態であるアパレル業態、ひいては小売業態は、本当にバズワードが好きです。

魔法の杖みたいに、深く物事の本質を考えずに、思考停止して、新たなツールを用いれば問題が全て解決すると思いがちです。

でも、そんなうまくいくはずもありません。
最近では、AIでしょうか。

以前の記事「AIを少しだけ研究してみて思うこと」にも書きましたが、
そんなにうまくいくはずもありません。
現在は、記事に書いたような定性的なAIを新たに開発するのは一旦諦めて、完全に定量的で数値を予測できるような既に存在するAIを新たに導入してますが、これは多くの変数を絡めて、一定の結果を導出するというものですが、融通がきかないこと多いです。
詳細は長くなるので省きますが、常に毎週教師データやロジックのチューニングを繰り返して、ベンダと定例ミーティングを行って、やっと使えそうな代物になるという感じです。


◉バズワードは、既存のものを新しく見せる、ある種の「企画」である。



いきなり結論じみてますが、最初の記事「企画は、難しくない。誰にでもできること」に書いてますように、企画は「ことばを紡ぐこと」から始まります。

概ねこういったバズワードは、どこかの広告代理店や企画会社など、バズらせたい、バズらせることで自分たちに経済的なメリットが発生する人たちサイドが仕掛けることが多い印象です。

例えば、ショールーミング。
ググってみますとだいたいこうあります。

実店舗で商品の下見をし、現物のサイズや性能の確認を行うが、店舗では買わず、確かめた商品の購入をオンライン上で行う購買行動のこと

ふむふむ・・。

ん?それって、ネットがあるかどうかだけで、ある業種では昔からそうじゃねーか?と思うのです。

私の業務領域はライフスタイル分野、つまりインテリアがメインです。

インテリアといえば家具ですが、家具屋さんって昔からいわゆるショールーミングです。
その場で家具買って、店頭在庫持って帰りますーって人ほとんどいないですよね。失敗したらいやなんで、もう少し他の店舗うろうろ見てみますーって感じだと思います。
その後気に入ればその店に電話して取り置きしてもらうなり確保の方法はいくらでもあったと思われます。

それを、あたかも新しいことしました的な感じで、インテリアショップや家具屋さんが「ショールーミングはじめました」的な打ち出しをしてたら違和感があります。

ところが、企画というスタンスでいえば、それはそれでいいんです。
今までやってたことが伝わっておらず、切り口を変えて伝わる。あるいはもっと新たな意味をもって付加価値が付いたように伝わる。それは企画の勝ちです。
問題は、本質を知った上であえて使うか、何も考えずにバズワードだから使うかですね。後者だと単なる販促ワードになって、結局何の取り組みもなく終焉しがちです。

伝わらなければ存在してないことと同じなので。


と、もう1つ「D2C」。

こちらのほうがイキった感じはします。

さて、ググってみると、こんな感じの記述を見つけました

Direct To Consumer」の略です。 メーカーが直で顧客と売買取引するビジネス形態を指します。 製造から販売まで一貫する企業が増えています。


To を2って書くところがイキってる感じがして、それだけで虫酸が走るというおじさんも見たことがありますが、私は気にしません。どうだっていいです。

ただ、簡単にいうと、メーカー直販、もしくは小売や商社を介さずに商売することかなと思いますが、これも昔からあります。

製造から販売まで一貫する企業が・・とありますが、それって20年ほど前から流行っているSPA(specialty store retailer of private label apparel)と何が違うんだろうと・・。

SPAにアパレルとありますが、いまはニトリなどアパレル以外の業種も取り入れており、小売系では半ば標準装備となってます。*厳密にはメーカー母体と小売母体と2種類のアプローチがあり得意不得意があったりするのですが、ここでは省きます。

では、SPAとD2Cの違いをググってみていくつか見てみましたが、どれも納得いく答えはなく。(もちろん周りにも答えられる人間はおらず)
こんな感じの内容の記事もありました。

今までの小売業の欠点は、間に卸売業を挟む事による消費者情報の遮断であった。つまり、メーカーには消費者のニーズを汲み取る仕組みが存在しなかった。SPAでは、販売も自社で行う事により、消費者の声を製造・企画の場にフィードバックできる。 D2Cでは、この精神をより『濃縮』する事を目指している。 SPAでは、まだ不十分であり、例えば、服のサイズで見てみるとメーカーは全てのサイズを製造する事は不可能だ。その為、一般的なデータから平均値を算出して、それらのサイズのラインナップを在庫する。しかし、忘れてはならないのが、置き去りにされたサイズや体形の消費者が存在するという事なのである。この考えを突き詰めると、やがて店舗は必要無いというD2Cの考えに行き着くのである。


前半はふーんという感じですが、後半は何となく、大失敗に終わったゾゾスーツのことを言ってるような感じがします。

ちなみに、D2CはSPAの精神(精神って何だ?)をさらに濃縮することを目指すとありますが、となるとSPAの進化版がD2Cということになります。

しかし、最終的に論理の終結が、D2Cを突き詰めると店舗は必要ないという考えに行き着くといった、店舗があるかどうかなんかあまり関係がないと思うのですが、一気に最後に店舗不要論をたたみかけてきます。

たぶん、あまりD2Cのことを知らなくて、ネットの行先は店舗のない世界で、それがいいことだと単純に思ってるからかもしれませんが、どう見ても論理の飛躍です。

そうであれば、アメリカのD2Cの有名どころであるwarby parker(メガネ)やeverlane(衣料品)が店舗を増やしだしていることの説明がつきません。

このように、よくよく調べるとよくわからない無意味な言説がネットでは飛び交ってます。

ところが、企画というスタンスでいえば、それはそれでいいんです。
今までやってたことが伝わっておらず、切り口を変えて伝わる。あるいはもっと新たな意味をもって付加価値が付いたように伝わる。それは企画の勝ちです。
問題は、本質を知った上であえて使うか、何も考えずにバズワードだから使うかですね。後者だと単なる販促ワードになって、結局何の取り組みもなく終焉しがちです。

伝わらなければ存在してないことと同じなので。
(コピペw)


◉本質を見極めよう


ショールーミング、D2Cと昨今の気になるバズワードをちょっとディスってみたわけですが、別に古びたことを新しく呼び換えて、新たな価値をつける(ような気にさせる)ということに関してはいいと思ってます。

チョッキ→ベスト→ジレ とか、
ジーンズ→ジーパン→デニム とか、

今適当に思いつくだけでも2つほど出てきますが、世の中に真新しいものなんて10年に1つくらいですので、消費や商売を活気づけようと思ったら表現のキレ味がどれくらい秀逸かということは実はマーケティング上非常に大事だと思ってます。

問題は、そういうバズワードの本質をそもそも論で見極めて、分かった上で戦略的に使って行動するか、上っ面だけ知って、適当にバズワードだけ並べて終わりになるか、そこができる人とできない人の分水嶺ではないでしょうか。


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