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言葉は転がり続け

簡単なことがきっかけで喧嘩になってしまう。

ほんの少しの言い回しの選択や、声のトーン、目線、手元の動き、呼びかけたタイミング、等々。

何でもない内容で、時によっては楽しい冗談になるような話なのに。今朝は、言い回しが悪かったみたいで、少しだけ諍いになった。

最近、こんなことが増えた。


長く一緒にいると、気を付けていても気遣いや遠慮がなくなってきているみたいだ。とても大切に、尊く思っていて、彼の存在が既に自分の生活ないしは人生に組み込まれていることは、変わらないのに、毎日の一分一秒のふとした瞬間の気遣いが抜けてしまうなんて不思議だ。こんなに大切に思っているのに。


今日仕事がお休みの彼が、私のためにお弁当を作り、水筒を準備し、朝は最寄り駅まで送り届けてくれた。朝の小さな諍いは引きずったままだ。今謝っても、いいよと許してくれる優しさに全面的に甘えているみたいで、ほっとできないだろうな、と考えてしまう。だから、お弁当ありがとう、水筒ありがとう、送ってくれてありがとう、とだけ伝える。全然ニコニコは出来なかった。


車を降りる直前、彼は少しぶすっとした表情を崩さないまま、だけど気遣うように、「気を付けて行っておいで」と言った。



お昼休みにお弁当を開けて、笑ってしまった。彼が持たせてくれたのは、ゆで卵を目玉に見立てた、少しだけ不恰好なキャラ弁。今朝、何やらキッチンにこもって作業をしているなあ、と思っていたけれど、そういうことか。味付けが少し濃くて、お米の量が少し多くて。私が最後まで美味しく食べることができて、お腹いっぱいになるようにと考えてくれたのが、よく分かった。


今から帰るよ、とラインすると、近くまで来ているから迎えにきてあげるよと連絡があった。車を見つけて、乗り込む。

朝はごめんねと、お弁当面白くて美味しかったよ、を伝えて、朝の小さな諍いは終わりとなった。

家に帰るととんかつが揚げてあって、美味しいお味噌汁も作ってあって、至れり尽くせりだなあとにんまりした。



私と彼が大好きなくるりの「奇跡」という曲の歌詞に、こんな一節がある。

言葉は転がり続け 想いの丈を通り越し    上手く伝わるどころか 掛け違いのボタン 困ったな

喧嘩をする度、このフレーズが頭によぎるし、2人の結婚式を挙げることがあれば、この曲をエンドロールで使いたい。

たぶん、またあと何日かしたらちっちゃな喧嘩をするんだろうな。傷付きながら、許しあいながら、末永く一緒にいることができれば、と彼も思ってくれていたらいいな、と思うのだ。


2021.10.4 小鹿かの子

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