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【CIIDの授業01. Team Building】 デザインスタジオにおけるチームワークのあるべき姿とは

CIID IDPの最初の1週間は、チームビルディングのクラスから始まる。前回の投稿でも触れた通り、CIIDのIDP参加者の属性はとにかく多様である。2019年の参加者は14カ国から来ており、年齢も22〜50歳程度と幅がある。参加者の9割は社会人経験があり、キャリアのバックグラウンドはUI/UXデザイン、プロダクトデザイン、グラフィックデザイン、アート、建築、ビジネス、エンジニア、ライターなど多岐に渡る。

この場所に「常識」など通用しない。価値観もスキルセットも大きく異なるメンバー同士で、どのようにデザインプロジェクトに取り組んでいくべきか。新しいアイディアを形にしていくチームにおける、成功要因は何なのだろうか。

1. メンバーが熱を持って取り組めるテーマを設定する

目指す姿への共感はどの組織運営に置いても重要な要素ではあるが、少人数で新しいアイディアを形にするプロジェクトにおいては、特に丁寧に心がけて進める必要がある。論点を設定し取り組むべきソリューションの大枠をチームで決めていく際、メンバーが熱を持って取り組めるテーマ・世界観を設定できるかどうかが、プロジェクト全体の質に大きく影響する。
「こんな世界が作れたらワクワクする」と本気で感じられるものを、自分達で作り上げていく工程は単純に楽しいものだ。具体的な形・機能・使い方に関するアイディアも自然に生まれやすいし、何よりチームにポジティブな空気が生まれていく。逆に言うと、人は自分の興味関心の薄い、もしくは何かが心に引っかかる世界を作るために全力で頑張り抜く事は難しい。メンバー1人1人が取り組みたいと思えるテーマになっているかどうかが、プロジェクトの全ての工程に少しずつ影響し、結果として表れ、チームの外にも伝わっていく。
チームで議論を重ねていくと、「あぁ、これだ」とカチッと全員の歯車が合う答えに辿り着く瞬間がある。ここに辿り着くのはなかなか大変なので、妥協したり声の大きい人の意見に従う方が楽と感じることも多いのだが、後々のチーム崩壊を防ぐためにも慎重に進めるべきである。
しかしこの共感テーマの設定が重要だと分かっているが故に、限られた制作時間の多くを取り組む対象を決めるためのディスカッションに費やしてしまい、時間が足りずに失敗する事もよくある。煮詰まった時には、まず目に見える形で具体化してしまうと良い。

2. 手を動かしながら考える

議論が煮詰まる時は、机上の空論での対決となっている場合が多い。どんなに優雅な言葉を並べてアイディアを説明したところで、そこから連想するものは人それぞれ異なる。また、アイディアを出した本人すら、実際に形にしてみると想像していた世界観と食い違うという事もよくある。そのため、早い段階で手を動かして形にしながら考える事がとても大切だ。形にすると言っても、最初は紙とハサミで1分で作れるような単純なもので構わない。一旦形にしてみると、違和感を感じるポイントが明確になり、チームメンバーに説明しやすくなり、メンバー間で議論している対象レベルが揃う事で、議論が前に進みやすい。
逆に最初に議論だけで世界観の共有が上手くいったと感じる場合にも、形にするタイミングが遅くなれば、後からズレが生じてくる事がある。「話すより、動く」「動きながら考える」事を基本スタンスとすると、上手くいくケースが多い。

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お互いの癖(価値観・強み弱み)を尊重し、信頼する

プロジェクトの方向性・進め方などに何か違和感を感じた時、それを躊躇せずに口に出せる環境作りも非常に重要である。チームメンバー全員が心理的安全性を感じながらフラットに意見交換ができる環境作りは、結局のところ、互いを尊重して信頼関係を構築していくプロセスに尽きるのだと思う。
チームにおいて「自分の意見がきちんと聞かれている」と感じる事ができなければ、相手への不信感からやる気を失ったり、相手をぞんざいに扱ったり、相手のいないところで議論を進め出すなどといった現象が発生しやすい。
例え意識的に相手を尊重するように気を配っていても、流暢に喋る人の発言の方が良い意見に聞こえやすいし、声の大きい人の意見が通りやすいというのは、ヒエラルキーの全く無いCIIDにおいても同じだ。
互いの事をよく知らない初期であれば、1人1人の発言時間を均等にするなどのルールを活用して全員の意見を拾う方法もある。しかしながら、やはりお互いの考え方の癖や強み・弱みを理解した後の方がスムーズに協業しやすくなるのは言うまでもない。お互いを知って信頼関係を構築していく過程においては、自分の癖を客観的に捉えて伝えるスキル、相手が強みを発揮しやすいようにコミュニケーションを調整していく姿勢が、互いに求められる。

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改めて振り返ってみても、CIIDは世界でも稀な心理的安全性の高さを誇る環境であると思う。CIIDには、成績という概念は存在しない。誰かの評価を気にしたアウトプットを出す必要も無い。「ここまでできたら十分」という指標が誰からも与えられない環境では、常にモチベーションの源泉は自分達の中だけに存在する。参加者の多くは、キャリアを中断し、時間とお金を投資してCIIDに来ている。自分を誤魔化せば自分に返ってくるだけ、チームで満足の行く結果を出せなければそれも自分に返ってくるだけである。一般社会とは種類の異なる高いプレッシャーの中で、自分と相手の価値観に真っ直ぐに向き合い、密なコミュニケーションを重ねながら新しいアイディアをどんどん形にしていく環境。強みも弱みも含めて、互いを認め合って補完し合うチーム。このようなチームワークを通して構築される信頼関係が、長期的な資産になる事だけは間違いない。


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