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続・競艇の本質について


誰もが気軽に情報へとアクセスできる時代。
競艇においてもその傾向は顕著です。

少しネットサーフィンをすれば、過去半年のコース別勝率がわかり、展示での直線タイムがわかり、平均スタート順位がわかる。
電光掲示板を見ずともオッズは手元のスマホが表示してくれ、合成オッズはいとも簡単に導き出せる。

そんな時代に競艇をやっているあなたは、頭でいくらわかっていても、時折、選手ではなくて「数字が走っている」ような錯覚を覚えるのです。

「なんで逃げ率80%のインが飛ぶんだよ!」
「あれだけタイムが出ていて舟券に絡まないのはおかしい!」
「こんなオッズ買えないよ!」

数字って怖いです。
ひとたび目にしてしまえば、その魔力にとりつかれ、いまそのレースを走っているのは「過去の数字ではない」という当たり前のことを忘れてしまいます。
一度だって同じレースはありません。
あるとすれば「近似しているレース」だけなのです。

俺は感覚派だから大丈夫。そんな人がいます。
あなたの「感覚」とやらは、いつも「同じ感覚」でしょうか。
先ほど書いたように、数字とは極めて危ういものですが、それでも嘘だけはつきません。逃げ率80%という「数字の意味」は、絶対に変容することはありません。
しかし感覚は違います。1分で変わります。勝っているときと負けているときでも変わります。お腹が空いているとき、恋人と喧嘩したとき、仕事で失敗したとき、あなたの感覚はいとも簡単に壊れます。
数字とは違う危うさがありますよね。

ここで書いていきたいのは、数字にしろ感覚にしろ、せっかく使うのならその「再現可能性」を考えよう、ということです。
あなたが目にしている統計、あなたが経験から導き出した感覚、それは「いま目の前のそのレース」にどのくらい適用できますか。
逃げ率ではなく「そのレースでその選手が逃げる確率」を真剣に考えたことがありますか。
直線タイム1位の選手が、そのレースでどのくらいの結果を出せるかは「他の選手次第」だということを忘れていませんか。
オッズの高い安いなんて、大衆の導き出した「選挙結果」です。その「中身」まで目を通しましたか。

我々がやろうとしていることは、過去の統計なり経験から、未来を的中させ、なおかつその的中が回収に繋がるかを競うギャンブルです。
言い換えるなら、再現可能性と回収期待値の臨界点を探るギャンブルです。

以前私は「競艇の本質について」という長い記事を書きました。
そこで書いた「的中期待値」「回収期待値」という大雑把かつ本質的な概念の、その奥にある「データや経験の使い方」を、そろそろ言葉にしてみようと思った次第です。

どうすればその曖昧な概念を使って、回収率プラスという強大な壁を飛び越えられるか。

その扉を開けてみましょう。

もしかしたらあなたがまだ知らない、競艇のさらなる本質が待っているかもしれません。


毒島1-3の法則の罠


いまや知らない人はほとんどいない毒島1-3の法則。毒島のイン戦は1-3の出目が多い、というのがその法則のあらわすところです。事実、毒島のイン戦では1-2よりも1-3を買い続けた方が回収率は高くなっています。
しかし、それは単なる「過去」であり、誤解を招きやすい「数字」であり、淡々と示された「現象」です。
現象の「意味」を解釈しなければ、いま、目の前のそのレース、毒島から誰を買うのが効率いいか、その答えは導き出せません。

毒島のイン旋回は、極端に舳先をターンマークに向けるのが遅く、そのせいで2コースは窮屈な旋回を求められます。
一方で3コースは「それより早く」握ってしまえば何とかなるケースが多いので、相対的に見て追走は容易です。
これが毒島1-3の法則の「現象の意味」です。
この意味を解釈できていれば、そうです、応用が利くのです。

我々が毒島の旋回を知っているように、いや、それよりはるかに深く、選手は毒島を研究しています。一流選手ならなおさら、どうやって攻めるかを考え抜いています。
それでも一瞬の判断で2コースの選手が凡走してしまいがちだから、こうして統計としてあらわれているのですが、現実に走っている選手は「統計通り」ではありません。

たとえば2コースの選手が握ったらどうでしょう。本来握ってしまえば簡単に舟券に絡める3コースが、今度は一気に形勢が不利になります。
たとえば2コースの選手がマイシロを十分にとって牽制差しをしたらどうでしょう。差し抜けられないまでも、追走には十分のお釣りがくるかもしれません。
そのとき2コースの選手がどうするか、そして3コースの選手がそれを見てどう立ち回るか、その起点となるのは間違いなく毒島誠という選手なのです。けっして1-3という数字なんかではありません。普遍的なものなんてなにひとつない。
競艇は、多くの「固有性」に囲まれながら、その集合体がときに「数字」に見えてしまう、なんとも厄介な公営ギャンブルなのです。

5月27日、若松オールスターの第12R。向かい風5mで安定板使用という「固有性」の中でそのレースは行われました。直線足が強くスタート巧者の菊地孝平が2コース。3コースには田村隆信。こちらもコース巧者。
菊地は毒島よりやや立ち遅れたスタートからも存分に伸ばしていって、1M手前では半艇身ほど毒島から覗かせていました。誰もが「握る」と思った瞬間でしょう。田村ですらそう思ったのか、やや迷うような立ち回りになりました。毒島もいつもよりターンマークを外して握りマイの牽制に。その刹那、菊地は急減速を行い、ブイ際を綺麗に差し、結果は2-1でした。
このレベルのことが平気で行われるのが競艇のリアルであり、我々が「予想」しようとしているものの正体です。まぁ、どだい無理でしょう。ここまで考えて2-1を獲れる人はほんの一握りだと思います。

これを獲れるようになれ、とは言いません。私だって到底できません。それでもこのレースからは大切な知見が得られます。
我々は統計というものから現象を取り出し、解釈し、それを「固有性」の枠組みに放り込んだ上で予想しないといけない。このことを真に理解してからが「競艇」です。
ここで重要になってくるのが、その統計、つまり過去の、その目の前のレースにおける「再現可能性」という考え方です。

分かりやすい例を出します。毒島のイン、過去2年117走で実は「4-3」を買い続けても回収率プラスなんですよ。回数は2回。出現率2%、回収率は155%。
「じゃあこれからは毒島のインでは4-3を買い続けてみよう!」
ってなる人いませんよね。いたら考え直してください。
これが「再現可能性が担保されていない統計」の最たるものです。
「結果そうなってしまった」と「そうなる可能性が十分に高いと予期できる条件下でそうなった」は、似ているようでラディカルに違います。
これを分類する脳みそを持たないといけません。

統計的傾向に影響を与える変数を、可能な限り「取り出して」「検証する」センスを身につけてください。
何よりも大切なのは、傾向やデータの「中身」を考えることです。
傾向には理由があり、データには意味があります。
そうすれば、あなたの「勘」は、立派な「統計的感覚」へと変貌します。

当たればいいじゃん、という考えからは、自己満足じみた的中こそ拾えても、継続した「回収」などできるはずがないのです。

再現可能性を正しく見積もるためには、とにかく「現象の意味を解釈する」という頭でいないといけません。
毒島1-3の法則、ではないのです。毒島のイン旋回によって他艇がどう旋回させられたか。それはどのようなときにどう変化するのか。それを丁寧にみていく作業こそが「競艇予想」です。

いいですか。繰り返します。その「統計的傾向」に影響を与える「変数」を、可能な限り取り出して検証するセンスを身につけてください。

けっして「2連対率=その選手の技量」ではないのです。
けっして「展示タイム=その選手の強さ」ではないのです。
けっして「一番人気=一番来る確率の高い出目」ではないのです。

そんなの知っているよ、という人も、今一度胸に手を当てて、自分がどのような数字にどう惑わされているか、冷静に顧みてください。
どんな固定観念にどうやって買い目を左右されているか、冷徹な目で振り返ってください。

少しでも反省した方。
次の扉を開けてみましょう。
現象の意味を解釈するための、さらなる「競艇の本質」の世界が待っています。


ファクターに溺れている人こそがカモ


数字の怖さは終わりがないところにあります。
この世には情報があふれていて、それらは物凄い勢いで我々を飲みこんできます。
もしかしたらあなたは、ちょっと「情報過多」かもしれません。

逃がし率、というデータがあります。これは、過去半年ないし過去一年における「その選手が2コースの時にインが逃げた確率」を示すデータです。
なるほど逃がし率60%などと言われると「なんだ、60%の確率で逃げるのか」と思ってしまいがちです。そんなことはないと頭では分かっていても、その数字を見た瞬間に、自然と身体に刷り込まれてしまうのが人間です。

「逃がし率」は、それが1年という「信ずるに足る」ように思える長い期間の統計であっても、たかだか50走程度の母数であることに、もっと気を遣わないといけません。
「逃がし」という単純な言葉の奥には、壁になって逃がしたケース、出遅れたけど他の艇がなにもしないで逃げたケース、圧倒的な機力で捲り艇をすべて受け止めて逃げきったケース、それらが混在しています。
それを一緒くたに「逃がし率」などという「数字」で見てしまうことに、我々は危機感を抱くべきです。

あなたが何よりも知りたいのは、知らなければならないのは、その2コースの選手が「どういうときに」「どの程度のスタートを切って」「どのような立ち回りをしがちで」「結果なぜ60%もインが逃げているのか」という、競艇の「リアル」なのです。

それを知るために、あなたはリプレイを見漁る必要があります。スタートの安定度を測る必要があります。
いかに60%逃がす選手でも、それが50という少ない母数でのデータであれば、必ずその「60%」を優位な程度に動かす「変数」が存在します。

その2コースが、3コースに超抜モーターを引いた記念クラスの選手がいるときに「逃がす確率」は、果たして60%のままでしょうか。
その2コースが向かい風7m安定板使用の状態で「逃がす確率」は、果たして60%のままでしょうか。
出足が鈍く、起こしが不安定でも、しっかり逃がしてくれるでしょうか。

人は新しいものが好きです。新しい予想ファクター「のようなもの」を手に入れたときは、それに溺れ、しばし大切なことを忘れます。
毒島1-3の法則もそうですが、あなたはそのファクターに囚われることなく、その統計的意味を、現象の解釈を通じて「利用してやる」側に回らないといけません。

ここで大事なことが分かります。裏を返せば、大多数のプレイヤーがその数字に「惑わされている」ときはチャンスなのです。
あなただけが現象の解釈をしていれば、オッズの盲点を突くことができます。
あなただけが「その2コース艇は、逃がし率は60%なものの、3コースに早めに握られたときはあっさり沈む傾向にあるし、捲られても残すシーンをしばしば見かける」といった知見を持っていれば、それが武器になります。

情報なんて誰でもアクセスできます。それが手軽にできる現代であるということを、どうか忘れないようにしてください。
簡単に何かを分かった気になっては、万年中級者、JLCと上級者にとっての一番おいしい「カモ」のままです。

単なる数値結果をそのまま受け入れたのではなく、内容的な側面から相手の考え方を「推察する」ことができたとき、あなたの競艇予想は一変します。

自分の予想を冷静に見つめることのできる目を手に入れたあなたは、自らの手で次の扉を開くことができます。


ファクターなんて何でもいい


あなたは自分の予想のプランニングと整理をする必要があります。

前作でも書きましたが、いかなる予想方法であれ、それを毎レースぐにゃぐにゃさせている人に強者はいません。

ブレない。人は簡単に言いますが、それこそが肝心要、あなたの予想の「再現可能性」を極限まで高めるための、心理的必要十分条件なのです。

触れる情報が多いと、その処理を正確にすることは困難になってきます。
これは人間の知能の限界が要因なので、今さらどうこうしても動かない事実です。
であれば、あなたは手に入れた知識や情報を、自分が正確な判断を遂行できるレベルまで「整理」しなければなりません。

大衆の誤解や認識の盲点を突けるようなファクターであれば、極端な話「何だっていい」のです。気楽に構えましょう。ファクターに優劣なんてありません。差がつくとすれば、その利用方法です。

自分なりに再現可能性の高いファクターを見つけたら、まずはそれを磨くことから始めましょう。
磨くためには、当然そのファクターを「固定」する必要があります。

一例をあげるなら、4カド捲り起点の5捲り差し展開。これをレース選択のファクターにした場合の、プランニングを考えてみます。

まずはレースのピックアップ方法を考えます。
ここはかなり重要な点ですが、最初からいろいろ決めすぎない方がいいです。
たとえば、スタートが早く展示タイムがしっかり出ている4コースに、同じくスタートが早く捲りに抵抗するイン。このくらいの条件設定でレースを集めてみましょう。

やっていくうちに様々な結果を目の当たりにします。しっかり中凹みになったのに絞らないカド。絶好の捲り差し展開からブロックされあっさり沈む5コース。インまでドカ遅れしてぐちゃぐちゃ。しかし焦ることはありません。まだこれから自分がどういうレースを拾っていくかの「検証」なので、冷静な視点で記録をとりましょう。

次第に「こういう条件であればこうなる可能性が高い」というおぼろげなビジョンが見えてきます。
ここで改めて「再現可能性」というものを考えます。
再現したい、つまり「思い描いた」レースにならない変数は何か。思いつく限り、経験の限り洗い出して、そのような変数に対してそれぞれどうアプローチするかを考えます。

そしてその条件下で選択したレースに対して、十分に整理された情報を用いて「一定の予想」をする心構えを持ちましょう。
せっかく一定の基準で選んだレースも、肝心の舟券構築段階で予想を均一化できていなければ、次のステップに進めません。

コツとしては、自分が触れる情報の種類とプロセスを書き出してみることです。
平均スタート、コース別勝率、節間成績、タイム、展示気配……どれをどのくらい参考にするのかは人それぞれですが、決めたら同じ順序と同じ比重で見るようにしてください。

この「整理する段階」には、しっかりと時間を割くべきです。あなたは思いのほか「ファクターがとっ散らかっている」はずです。それでは安定した成績など夢のまた夢です。

たとえファクターがなんであれ、整理されてさえいれば、それはあなたの「有効な武器」になります。

その上で、再現可能性の高い(この場合で言うと5コース捲り差しが決まりやすい)レースをピックアップするシステムを組んでしまえば、次のステップに進むことができます。

いよいよあなたはベットを開始します。


「真の的中率」への挑戦


ある一定の条件下における再現可能性の高いレース選択スキル。そして十分に整理されたオリジナルの予想方法。
これをどうにかこうにか作った時点で、あなたは競艇人口の上位数%に位置付けられます。
ここからはそのシステムがどのくらいの的中率かを検証していく作業になります。
さあ、時間との戦いです。

選択したレースについて、前述した整理されたプロセスに則って、素直に予想してみましょう。
もうあなたの目はだいぶ肥えているはずです。これは5-124-1246だな。そんなふうにナチュラルに立てた予想で、まずは合成オッズを出します。
レースによってまちまちでしょうが、そこまで大きくブラさないことが大事です。できるのであれば、最初から的中率を推定したうえで、なるべくプラスになりそうな合成オッズを意識しましょう。もちろん失敗しても大丈夫です。まだ検証段階です。

これを数百回繰り返すと、同じ条件での、近似した合成オッズについての、信頼に足る「的中率」が得られます。

そんなに待てないという人は過去レースの検証でも構いません。
同じ条件なら過去レースの予想作業だって十分効果的です。

どうにか数百の母数を集めたら、的中率を記録します。
仮に15%としましょう。
これは「条件A」のレースの、あなたの「真の的中率」です。
この単純にして強力な「真の的中率=武器」の破壊力を、あなたはすぐに目の当たりにします。

競艇は、常に確変台という条件のパチンコのようなものです。とにかくダラダラやり続けてさえいれば、気持ちのいい当たりくらい頻繁に引けます。120通りしかないのです。10点買っていれば、どんなにでたらめな買い目でも12回に1回は当たります。
この絶妙な確率設定と、運と実力のバランスこそが競艇のギャンブルとしての魅力であり、実に絶妙にできているのです。

それでも、いや、だからこそ、あなたは勝てません。
「真の的中率」を知らないからこそ、あなたはどうしても「当てよう」としてしまいます。当たったときに喜ぶような思考回路になってしまいます。

当たりはけっして喜びなどではなく、単なる「確率の出現」です。
それに気づかせてくれるのが「真の的中率」であり、それが収束するまで待つプランニングこそが、競艇で「浮く」ために必要な、最も大事なスキルなのです。

条件Aの的中率は15%と仮定しました。実際にこの条件でレースを運用してみましょう。
まずは月のレース数をおおよそでいいので数えます。100ありました。1年で1200レース。あなたは1年間で条件Aのレースを1200回「試行」できます。
1200レースのうち、あなたが的中することができるのは、どうやら180レースだけなようです。

合計180本の的中を引くまで1年待つ。
この心構えこそが最も重要であり、一喜一憂してブレるという愚行を防ぐプランニングなのです。

それまで破綻しないためには、およそいくらの軍資金が必要かを計算します。的中率15%のギャンブルにおける破産確率を、滅多に出ないレベルまで引き下げるためには、ベット×57のバンクが理想と言われています。
1レースに2,000円賭けるつもりなら114,000円です。
軍資金が100万あるなら1レースに17,500円賭けることができます。
これが「バンクロール」です。

あなたは「真の的中率」を知ることで、自分がほとんどの確率で破産せずに「1年間競艇をすることができる」のです。

ここでスタートラインに立ちました。
しかしこのスタートラインは、競艇人口のほとんどを置き去りにする、何mも手前に位置する「有利なスタートライン」です。

ちなみにいま4カド捲り起点の5捲り差し、という一例で話しましたが、この条件は当然何だっていいのです。お好きに選んでください。
的中率15%が自分に向かないと感じる人は、30%、40%、50%、いろいろ想定できます。それに応じてバンクロールも変わってきます。
ちなみに的中率40%だと、理想のバンクロールは「1ベットの18倍」です。このくらいなら用意しやすいのではないでしょうか。

個人的な話をすると、私はこういう「セット」をいくつか自分の中に持っています。新しく検証中の「セット」も複数あります。
慣れれば様々なレースを同時に試行することだってできます。何も同じ条件のレースばかりやらなくたっていいので、そこは心配しないでください。飽きません。
まずはひとつ。自分が的中率を正常に見積もれる(=真の的中率を割り出せる)レースの枠組みを作りましょう。

このシステムを回しながら浮けるかどうか。
次のステップはそこです。
そして、この戦いこそが「ゴール」です。
先ほどさらっと流して書いた「合成オッズ」との熾烈な戦いに挑みましょう。


回収期待値と合成オッズ


条件Aにおける的中率は15%と見積もれました。
資金管理も万全です。
しかし、条件Aを満たすレースすべてに同じ金額賭けていたら、回収額がかなりブレてきます。
かといって条件Aを満たすレースの合成オッズによって賭け金を動かしていたら、それはそれでせっかく用意したバンクロールに影響があります。
ではどうするか。

賭け金を一律に設定した上で、的中期待値を維持できていて、なおかつ合成オッズが「とれている」レースだけにベットすればいいのです。

的中率15%のギャンブルで回収率をプラスにするためには、1回の的中による回収を6.7倍以上にすることが求められます。これで回収率100.5%。110%にしたかったら7.4倍必要です。
この概算は簡単な算数で求められるので、まずはこれを割り出します。
自分が「的中期待値15%」だと思う買い目の合成オッズを、テレボートの資金配分ツールなどを使って割り出してみましょう。
6.7倍を超えていたら「GO」です。

ここで注意なのは、たとえば5-124-1246という予想をして、合成オッズを求めたときに、6.5倍だからといって「じゃあ5-2-6だけ削ろう」などという愚行はしないでください。
そのレースにおいて、統計的経験上15%の的中期待値のある買い目を出したのなら、それはもう動かせません。
的中期待値を下げて合成オッズを上げたところで、回収期待値はプラスにならない。これは明白です。

この合成オッズと回収期待値プラスの臨界点をシビアに見極めるためには、割り出した「真の的中率」が必要不可欠なのです。
前項でその算出に時間をかけるようにアドバイスしたのはまさにこのためです。
ここに無視できない誤差があるうちは、どんなオッズのレースを買うべきかの「回収期待値感覚」が養われません。
いつまでたっても「万舟」を脳死で買うようになってしまいます。

オッズとは大衆が作る「誤解と正解の集積」です。
誤解が多いオッズこそが「おいしいオッズ」です。

あなたは優れた独自のシステムで、効率的に「大衆の誤解」を拾えるようになりました。
だからこそ、結果的に誤解が少なくなってしまった(=おいしくないオッズのレース)に関しては、断腸の思いで見送る、という決断をしなければなりません。

勘違いしないでほしいのは「1桁配当が正解」で「万舟が盲点」ではない、ということです。
感覚値として「5.2倍」が正常なら、たとえ「6.5倍」というめちゃくちゃに本命な出目だって「おいしいオッズ」になります。
「150倍」が正常なのに「110倍」だったら、それは逆に「妙味がない」オッズになります。
印象的確率を捻じ曲げて真の確率から乖離させてしまう最大の理由が、この安い配当と万舟が作り出す「視覚的な要因」なのです。
万舟に騙されないでください。

個々の出目だと勘定しづらいですが、合成を割り出す癖をつけていれば、あなたは自分自身の「真の的中率」によって、その臨界点をおぼろげながら掴むことができます。
上の例で言えば「合成6.7倍」が回収期待値プラスの臨界点です。

このレースのこの出目を買ってこの合成オッズなら勝負になる。こういった「回収期待値感覚」を磨くためには、真の的中率という便利で強力な武器を持つ必要があります。
前作でも書きましたが、この部分こそが「競艇の本質」です。
個々のオッズに惑わされない、そのレース単体の回収期待値を感覚で求められるように訓練しましょう。

これを繰り返して、合成オッズがとれているレースを買い続けたとしても、確率が収束するのには時間がかかります。
トライアンドエラーをする際に必要なのは、これを「気長に待つ」精神力です。
前述したように、あなたは的中率15%です。約20%の確率で10連敗します。自信あるシステムで最初に10連敗したら、もう投げ捨てたくなるかもしれません。
待ちましょう。大丈夫です。しっかり磨いてあるシステムなら、それがどんなファクターであれ、死ぬほど負けることはありません。私が保証します。

条件Aは1年間に1200レースあると書きました。
そのうち合成クリアのレースは実際に何レースあったか。この割合も参考になるのでぜひ記録してください。

ここまでやったらあなたは競艇人口の上位0.1%です。
あなたは、巷の予想屋が振りかざす似非知識なんかよりもよっぽど役に立つ、あなただけの武器を手に入れたのです。


まとめと、ちょっと現実的な話


そうは言っても、そんなに時間がとれない人ばかりだと思います。
何から手をつけていいか分からないあなたに、本論のまとめも兼ねてアドバイスを。

まずあなたは「数字」や「感覚」といった実態のないものに惑わされず、その現象の意味を解釈する訓練をすべきです。これは日々の予想の中でいつでもトレーニングできることです。

そして統計の中で優位に働く「変数」を、可能な限り取り出してください。こういうときにこうなった、という蓄積ほど役に立つものはありません。

この分類を進めていく中で、あなたは「これなら再現可能性の高い一定のレースを選択できる」という条件に出会うかもしれません。
誰も見つけていないような斬新なものでなくて大丈夫です。私なんかしつこくイン逃げレースばっかりやっています。それでも構わないのです。
大事なのは、ほかでもない「あなたが」「レースを選択する上での基準を見つける」ことです。

そして時間をかけて「予想における情報処理のプロセス」を整理したあなたは、その条件下におけるレースの「真の的中率」を統計的に割り出すことができます。

あとはオッズとの戦いに、冷静に勝ち続けるだけです。

言葉にすると簡単ですが、この中身は非常に濃く、困難極まりない道のりで、苦しく、それでいてとてもやりがいのあるものです。

私は、あなたが簡単にこの領域にたどり着くとは思っていません。

競艇なんて簡単。そんな風に分かった気になっている先人を、どうか信用しないでください。
競艇予想界隈は、とにかく「正解」を提示できたものが勝ち、のような風潮があります。
私はそんな空虚な世界に興味はありません。

正解を教えてくれるのは「そこの誰か」ではありません。
現実に存在している、血のにじむような努力をした、ほかでもない「あなた自身」なのです。



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個人的な話になりますが、私はひとつのシステムを作るのに長い年月を費やしました。
誰も導いてくれる人がいなかったので、トライアンドエラーとリプレイ検証、仮説、さらに検証、数値的処理、それらを淡々とこなして、ようやく勝てそうな実感として立ち上がってきたシステムです。
それはいまだに私のベッティングの中核にある「イン信頼レースかつ合成2倍」の集積です。

しかしこれだけでは不十分、というより物足りなくなってきました。
新しいシステムに関しては、ひとつ、かなり手ごたえのあるものを見つけました。
ほかにも前述したように、検証中のシステムが複数あって、なかなかに忙しい毎日を送っています。

探せばいくらでもあるのです。
自分だけの多摩川理論を見つけたっていいし、1-6=9のレース選択を磨いたっていいし、各場の超抜モーターだけ追ったっていいし、クセの強い選手の旋回特徴に目をつけたっていいし、それらを組み合わせたって面白いです。

本気を出せば完成まで3ヵ月かかりません。
幸いなことに競艇には「膨大な数のレース」があります。競馬と違って、競艇は「十分な母数」を稼ぐのにはもってこいです。
これを作り上げたとき、あなたは高確率で「回収率プラス」の権利を得ます。

その素材はいくらでも提示します。
これからは「競艇を科学する」というマガジンで、その端緒をお見せしたいと思っています。が、それはまだ先の話。

あなたはあなた自身の手で、回収が期待できるレース選択システムを作って、ブレることのない情報処理プロセスで以てそれを運用して、ただひたすらに「試行」し続けてください。

1000レース回してプラスになれば本物です。

私も、負けないように、背中を見せ続けられるように、本当に勝ちたいあなたの役に立てるように、日々努力しています。


誰も開いたことのない扉を、あなたが開けてしまうかもしれません。

叶うならば、その扉の向こうでお会いしたいものです。

そのときを楽しみにしています。




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