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遊佐未森『潮騒』と呼応する音楽


結論

先に結論を書くと、遊佐未森『潮騒』と時代を共有しているのは坂本美雨『birds fly』ではないか、というお話です。

遊佐未森と同時代の音楽

遊佐未森は孤高の音楽家というわけでもなく、同じ時代の音楽と常に呼応しながら音楽を作ってきた人だと思う。
分かりやすいところでは、90年代のケルト音楽ブームから『水色』(1994)が生まれ、00年代のエレクトロニカブームから『Bougainvillea』(2003)が生まれている。
これは遊佐未森が感度の高いリスナーでもあることを示唆しているだろう。

ところが、遊佐未森が語られるときに引き合いに出されるのはいまだにZabadakであったり新居昭乃であったりする。
メルヘン期に限ればその通りなのだが、『潮騒』の遊佐未森はそうではない。

では、今の遊佐未森と時代を共有しているアーティストは誰なんだろう?

ポストクラシカル

『潮騒』はポストクラシカルというジャンルに属するものと解釈している。
ポストクラシカルの代表として、例えばアイスランドのオーラヴル・アルナルズ(Ólafur Arnalds)がいる。

室内楽、プリペアドピアノ、電子音。
『潮騒』と同じキーワードで表現することができる。

余談ですが Godspeed You! Black Emperor あたりもポストクラシカルの源流になるのかな。  


ポストクラシカルと歌

しかし、ポストクラシカルの代表的な楽曲と『潮騒』が決定的に違うのがである。

歌の入ったポストクラシカルを探すと意外と存在しない。あっても遊佐未森的な歌とはかなり異なる。

しかし、一人だけ発見することができた。

坂本美雨である。

坂本美雨の『birds fly』というアルバムは2021年10月20日にリリースされている。遊佐未森の『潮騒』は2021年6月23日リリースなので4か月しか違わない。

室内楽をベースにしつつエレクトロニカ的な残響、ノイズを活かす音像は『潮騒』にかなり近い。

方法論は少し違っていて、遊佐未森『潮騒』は残響やノイズを一つ一つ丁寧に録音して計画的にミックスしている(多分)。
それに対して坂本美雨『birds fly』はスタジオレコーディングではなく、 自由学園明日館での一発録りである。

坂本美雨はライブで「夏草の線路」をカバーしたぐらいには遊佐未森のファンであるらしい(未確認情報)。

『潮騒』リリース時に坂本美雨のラジオ番組に遊佐未森がゲスト出演しているらしく、どんな会話をしたのか非常に気になるなあ。


以上です。

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