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C線がうまく鳴らない問題

大人になってからチェロをはじめた方で、C線がうまく鳴ってくれないという人は多いのではないかと思う。
僕も長年悩んできた。
他の弦は鳴るのに、C線だと力を入れてもかすれてしまい、うまくならないことが多かった。
特にアップボウなんて悲惨なものだった。
それが最近大きく進歩した。
正解ではないかも知れないけど、僕にとってはごく自然に良い音が出るようになった方法なので、もしも同じようなことで悩んでおられる方がおられたら参考にしてもらえたらと思う。

肘は上げてはいけないのか

その方法とは、肘を適度に上げること。
僕がはじめてボウイングを習ったのは大学1年生ときで、先輩に教えてもらった。
そのとき先輩から言われたのは、「肘は上げてはいけない」ということ。
よく肘が上がって注意された。
それ以来、C線を響かせるためにいろいろ弾き方を変えてみたけど、肘は上げないようにという戒めは守ってきた。
音が出ないのは松脂が足りないからと思い、大量に松脂をつけて粉吹き状態にしたこともあった。それでもうまくは鳴らなかった。
でも、昨年いつものように練習しているときに、ふと考えた。
そもそもなぜ肘を上げてはいけないのだろうか。
ボウイングの本質は、脱力して腕の重みや重力で弾くことだと言われる。
確かに肘が上がった状態で演奏している姿をイメージすると、弓をつかんで押し込むような弾き方になると思う。
肘を上げてはいけないという意味は、そのような弾き方をしてはいけないということだろう。弓を掴んで力んで弾くと、きれいな音は鳴らないし、腕も疲れてしまう。

ところが、C線だけはその理屈が当てはまらないのではないかと思った。
C線が他の弦と決定的に違うのは、楽器の中心より右にあり、さらに弓を当てる位置も右側に傾いていることだ。
したがって、肘を落とすと右側にずり落ちてしまい、弦に重みが伝わらない。C線だけは肘を下げることは理にかなっていない。
ましてアップボウだと、肘を下げると腕の重さは皆無であり、音を出すためには弓を掴んだり、人差し指で強く押し込まないといけなくなる。

肩→肘→前腕→手首→指のラインを意識する

アップボウでもC線に腕の重みを伝えるにはどうすればよいか。
肘を下げてしまっては、弓は弦からずり落ちてしまう。
そこで、肘を少しずつ上げてみた。
そうすると、腕の重みが前腕を通して、手首、そして指へと自然に伝わるラインがあることがわかった。
そして、そのポイントで音を出すと、力まずにきれいに発音したのだ。

例えるなら、机に座った状態から立ち上がるとき、右手を机に置いて支えるように手をついた状態。
引き戸を開けたり開いたりするような。
力を入れるというよりは、体の重みを支えるようなイメージ。

でも肘は上げてはいけないと習った。
そこで、改めてYouTubeやインスタでプロの方の演奏動画を見ると、実は肘を臨機応変に上げ下げしていることがわかった。
そして、それはC線だけではないこともわかった。
他の弦でも、音質や音量など、表現にとって必要なときは、肘を上げていた。
もちろん、根元からダウンボウで弾く場合は、肘を下げた方が重みがかかる。鉄棒にぶら下がったようなイメージ。

結局、肘を上げるか下げるか、肘の位置はどこにすべきかということは本質ではなく、肩から肘、手首、指へと自然に重みが伝わるポイントで弾くことを意識したほうがよいということだ。
そして、それは常に一定の形ではない
弾く弦、出したい音の量や質によっても変わってくる。
だからボウイングは難しいといわれるのだろう。
気づいてしまえば、至極単純な理屈だった。
なぜこんな簡単なことに20年も気づかなかったのだろう。

今日も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回。

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