見出し画像

アマチュアっぽい演奏の原因

大学時代の疑問~素人っぽい演奏の原因

僕は大学からチェロをはじめて、大学のオーケストラで演奏していた。
そのとき、自分たちの演奏が、プロのオーケストラとどこか違うことに疑問をもった。
他の大学オケやアマオケも聞きにいったが、同じくどこかプロオケと異なる。
もちろん音程のずれはあるが、それだけが原因ではないように思えた。
強いて表現するなら、どこか「のっぺり」した感じがしたのだ。
迫力がない感じ。

どうしたらプロみたいな演奏になるのか。
プロの演奏は何が違うのか。
悩んでいろいろな本を読み、情報を集めた。

1冊の本との出会い

その中で、「これだ」と思える本に出合った。
それが、 大村 哲弥さんの『演奏法の基礎』だ。
そこに書かれていたのは「メトリーク(拍節法)」という聞き慣れないものだった。
この本は、内容が充実していて、一言では内容をお伝えすることはできない。
だから、ぜひ興味がある方は読んでいただきたいが、つたない言葉で少し内容を紹介すると、

たとえば、4分の4拍子の曲で、四分音符が4つ並んでいるとする。
そして、特に強弱記号も書かれていないとする。
その場合、すべての4分音符を同じ音量、音質、音価で弾くと思いがちだが、この本を読むと、原則として1拍めの四分音符が最もアクセントがあり、次が3拍目、次が2拍目、一番弱いのが4拍目ということがわかる。
そうしないと拍節感が感じられず、生き生きとした音楽にならない。

これは特にアウフタクトから始まる曲においては重要だと思う。
たとえばトロイメライのような曲だと、アウフタクトの音より、次の小節の頭の音の方にアクセントというか、音の重心が来なければいけない。そうしないと、聞く側はアウフタクトの音が、拍の頭だと勘違いしてしまい、よくわからない音楽になってしまう。でも楽譜にはそういうことは書いていない。

他にも、同じ音形が繰り返される場合は、クレッシェンドやディミヌエンド、あるいはリタルダンドなどを少し行うとか、和声進行によって緩急をつけるポイントとか、いわゆる指揮者が行っているアゴーギクの根拠のようなことが豊富に書かれていた。
他にも、音が上昇しているところにクレッシェンドが書いてあった場合、曲の解釈によっては、必ずしも音量を上げる必要はない、シンコペーションは強調する必要があるなど。

自分たちの演奏の「のっぺり」感は、この拍節を意識した演奏になっていないことに気づいた。
特に「出すべき音」、たとえば、アクセントやスフォルツァンドなどは意識しやすいが、その後の音、「弱めるべき方の音」が雑になりがちだ。
フレーズの終わり際の音の処理や、ワルツの3拍目の音の大きさなど、プロは必ずしっかりと処理している。
これらの音に気を使うだけでも演奏は劇的に変わる。

基本的に音楽は聴き手の予測に対する、充足か裏切りかで成り立っている。したがって、聴き手に法則性を与えなければ、予測も成立せず、充足した満足感も、裏切りの意外性も与えることができない。
法則性を与えるには、拍節法を踏まえた演奏をしなければいけない。

やっぱり書いていてもこの本の内容は伝えきれない。

この本、おすすめです。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?