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ぼくとパーントゥと島尻で

2023年のパーントゥに行って来ました。

そしてその翌日、パーントゥのために宮古島に張り込んだ11泊12日の旅を閉じるべく、みやこ下地島空港にてこれを書いています。空港がリゾート過ぎてついオリオンビール頼んじゃった。最高。
(その後だらだらしてたら搭乗時間になって、結局京都で続きを書いてます)

前回の記事を書き終えて30分後、パーントゥが開催される島尻地区に向かいました。アクセスは車一択なので、往復でタクシーをチャーターしました。

タクシーを降りてパーントゥが登場する漁港付近に向かい歩いていると、後ろにいる地元の女子中学生たちが「どこから出てくるのが分からないのが怖いよね」と話していた。映画「エイリアン」タイプのホラーだ。

パーントゥは新しいものがお好き

パーントゥが始まるのは17時。その20分前に到着したものの、既に泥だらけの人と道に散らばる草…ゴクリ

もういるのか…?

泥だらけの人に「パーントゥもういるんですか?」と聞いたら「あっちにいるよ」とのことで、行ってみる。

来た!

パーントゥは3体(単位これでいいのかな)いますが、基本的に別行動なので並んでいる姿を見られるのは最初がチャンス。3体並んで、まずは港へ。そしてピカピカの船の中へ。

他の2体は中で大暴れ中

パーントゥは悪霊祓いのため、新築、新車、今年生まれた赤ちゃん、新しい何かに積極的に泥を塗ります。
パーントゥ情報を入手するために色んな人に話を聞きましたが、中には「新車を買ったのがばれてるから今年のパーントゥは絶対行かない」と言っている人がいました。この船も最近買ったやつなんでしょう…。

去り際、ノールックで泥を塗るパーントゥ

そのうち3体は別行動に。結構ゆったり歩くんだな〜と思ったら急に走り出して

激しめ!
強め!
休憩休憩
泥を塗られた外飲みおじいたち。
「撮っていいよ!」と言ってくれた。優しい。
仮面で隠れ飲酒

白Tと黒T

「パーントゥに泥を塗られたければ白いTシャツで行け」と、宮古の人はみんなそう教えてくれました。
私も当然そのつもりでパーントゥTシャツ(白)を島尻購買店で購入し「このTシャツは泥を塗られて完成する!」と意気込んでましたが、見れば見るほど気に入っちゃって普通に着たい…でも他の手持ちの白Tはオードリー in 東京ドームの宣伝Tシャツだけ。こっちはこっちでプライスレス…パーントゥがリトルトゥースだったら「おっ」って心が通じ合いそうだけど。

悩んだ末、「すごい塗ってくれ感を出せばいけんじゃね?」と思い黒Tで行きましたが、バチッと目が合っても、こちらから手を差し出しても、パーントゥは私に泥を塗ってはくれませんでした。

観光客とのトラブルが問題になっているので、らしき人は避けてる様子。
リュックを背負って一眼カメラを持って黒Tを着てる私には来ないか…と思い、パーントゥが後ろを向いて油断してる時にそっと手を伸ばし、泥をとって自分で塗りました。

これでもご利益あるかな…

ちなみに、Tシャツに「泥つけて」と書いてる観光客カップルはしっかり泥だらけでした。アイドルファンぐらいの熱狂が必要だ。
パーントゥを見に来た人たちは見事に白Tと黒Tに分かれていて、
白T=来い!
黒T=来ないで!
とはっきり意思表示になってるのかもしれません。そりゃ黒Tは厳しいわ。

パニックホラー映画のようで、アットなホームファミリー映画のようでもある。

お子さんは地元の人も観光客も変わらず塗られていました。観光客の子供は呆然としている子が多く、地元の子供はギャン泣きが多かった。

帰りにタクシーの運転手さんに聞いたところ、地元の子供たちは日頃から「ちゃんとしないとパーントゥ来るよ!」と脅しのネタにされているそうか。そりゃ本物来たらめっちゃ怖いわ。
パーントゥの周りはそこかしらから子供の阿鼻叫喚と大人の笑い声が聞こえてくる。姿が見えなくてもパーントゥの居場所が分かる。

あの「なんかすごいやばい何だここ」空間にいれただけでも、島尻に行った甲斐があったなぁ。
帰りたいよ〜お風呂入りたいよ〜って泣いてる子がかわいくてかわいそうで印象的でした。

雰囲気も良かった、夕暮れの島尻

パーントゥが民家に入って行ったので大勢で出待ちしていたら、おじさんが「裏から抜けて学校の方に移動したよ」と教えてくれたのでGoogle Mapで学校を探して向かって歩いてみる。
すると、パーントゥを探す中学生男子軍団が同じ方向に猛ダッシュして行き、パーントゥから逃げ惑う中学生女子軍団がこっちに向かって猛ダッシュしてきた。こっちで間違いなさそう。

見つけたけど、すぐにこの中に入って行った。

ここでお色直し(泥補充)をするそうです。しばらくして出て来たパーントゥはキラキラヌメヌメしていました。

突如走り出すパーントゥ

パーントゥは地元の足の速い青年から選ばれるそうですが、今年のパーントゥは俊敏で、予備動作が少なく、歩いてると思ったら次の瞬間には走っていました。

帰って来たパーントゥ
天気も良かった。雰囲気も良かった。

暗闇を走るパーントゥも見てみたかったけど、日が落ちるとチャーターしたタクシーと会えなくなりそうだったので18時に退散。1時間半で十分楽しめたし、何となく、暗くなってからは観光ではなく地元の祭りに戻った方がいい気がした。

待ち合わせした場所に行くとタクシーの運転手さんが「楽しかった?あら〜あんまり塗られてないじゃん!」と笑ってました。

パーントゥ、百聞は一見にしかず

臭い、速い、怖いと聞いていたパーントゥ。超絶ビビリマンなので一人で行くのは躊躇いもありましたが、行ってみたらすごく暖かく、アットホームで、笑顔と叫びに溢れた祭でした。百聞は一見にしかずです。

臭いのは、泥は言うほど臭くなかった。
匂いはあるけど全然臭いとは思わない。タクシーの運転手さんに言ったら「井戸(ンマリガー。パーントゥの泥の出どころ)に古い泥そんな無いんじゃない?毎年使ってて無限じゃないんだし。いや知らないよ!」と言っていました。想像でした。あと、私は匂いに鈍感な節があります。

速いのは、めちゃくちゃ速かったです。
観光客にも泥は塗るけど(白Tか子供限定)、私が見る限り追いかけ回すのは地元の人かテレビのカメラマンだけでした。後者は完全にサービスだね!
完全に想像ですが、追いかけられてる人は顔見知りなんじゃないかなと思いました。どこかじゃれてる感じで、微笑ましさすらあった。
私が事前に調べ過ぎてパーントゥのビジュアルに目が慣れてるのもあるかもしれません。あるな。「思ってたより怖いね」って言ってる人いたし。

怖いのは、子供からしたらたまらんでしょう。トラウマ必至です。
でも「小学生の頃は親にお願いしてパーントゥに連れてってもらってた」って人もいたので、「おもろい」「かっけえ」の対象でもあったのかなと。
あと、お色直し(泥補充)ゾーンから再登場したパーントゥは「キャ〜!」と黄色い声援を浴びててアイドルでした。くまモン的ゆるキャラとも。

宮古の皆さんとパーントゥ、ありがとう。さようなら。また?

帰りのタクシーの多幸感、満たされた気持ちは、きっと一生覚えておける自信があります。
それは人生の夢を一つ叶えた達成感もあるけど、地元の人たちの手で大切に守られて来た土地の文化、記憶、思い出に触れられた実感があったから。長い島尻の歴史の、ほんの一瞬、一部になれた感覚。

この日、ここに来るまでパーントゥのことをたくさん調べてきましたが、生の体験からしか分からないことってすごいあるな、確実にあるなと、強く感じました。

タイトルは諸星大ニ郎の「僕とフリオと校庭で」をもじって。あれも未知との遭遇みたいなお話。

(おまけ)
タクシーの運転手さんが「宮古島にはパーントゥだけじゃなくて、地域ごとに違うお祭りがあるんだよ」と色々教えてくれて、その中に「50歳ぐらいになったらおじいの学校(概念?)に入学?して三日三晩飲まされる」ってのがあった気がするんだけど、自分で書いてても夢の話か?ってぐらい訳わからん。

池間民族の話をしてたから多分「ミャークヅツ」なんだけど…調べても聞いた話とちょっと違ってたり。くっ、気になる!メモとっとけばよかった!何なんすかそれって爆笑しながら聞いたんだが!

とりあえず、この決して広くはない島に、全然似てない祭や文化がたくさんあるってこと。
パーントゥ見て終わるつもりが、始まりになるかもしれないってこと。
生の体験には芋づる式に他の魅力的な発見がぶら下がってるなぁ。嗚呼、長い旅!

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