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ヤンチャな機能美スティックに心が躍る / FPS アサルトパッド 3

機能美という言葉がある。
無駄な装飾を削ぎ、構造を追求した無駄のない形態を指す建築・工業製品に向けた言葉です。

洗練された雰囲気は美しく、なるほどコレが機能美かと納得したことは誰でもあると思います。

だかしばしば、機能美のような雰囲気を纏っていながら「その見た目は本当に必要なんだよね?」と疑いたくなるようなものが存在するのです。

そんな疑念にこそ魅力を感じてしまう私、ぼぶそんが集めたゲームソフト以外のゲームを紹介する「ソフトの周りのゲームたち」。
今回は疑いたくなるような機能美を持ったコントローラー、FPSアサルトパッド3を紹介します。

製品情報

製品名:FPS アサルトパッド 3
発売日:2012年11月1日
メーカー:HORI
定価:5217円
カテゴリ:PS3用コントローラー

2012年というとPS3末期。
2014年2月のPS4発売を前にしたこの頃、家庭用機ではFPSがすっかり一般的なジャンルになっていました。

2011年にはCall of Duty: Modern Warfare 3とBattlefield 3が発売されており、当時の売り上げと後世からの評価を見れば家庭用機でも間違いなく盛り上がっていた時代と言えるでしょう。

ソフトが盛り上がるとその周囲も盛り上がってるもの。
当時に家庭用機のメインストリームであったPS3とXBOX360ではFPS用とした周辺機器が多く発売されたのです。

私見ですが、初代PSとPS2のコントローラーはゲームグッズとしての側面が多かったのに対し、PS3とXBOX360からは対戦で有利になる実用性を求めたものが多いように思います。

FPSは元々キーボードとマウスに特化した操作体系なだけあり、家庭用コントローラーでFPSを遊びやすく、また対戦で有利がとれるような工夫の余地は大いにあったわけです。

そんな最中に発売された「FPS アサルトパッド 3」がとった工夫は、ズバリ"精度"です。

多彩な精度へのアプローチ

表面のラバー塗装が汚いのは中古品のため。綺麗なのが欲しい

左右スティックをハンドグリップの延長線上に配置してスティック操作をしやすいようし、方向キーと△◻︎◯×ボタンは内側に寄せた配置へ変更。
さらに操作精度をコントローラー側で調整する機能がついています。

左側についたダイヤルでスティックの傾き量の最大値を変更すれば移動速度の細かい制御が可能になり、コントローラー裏側のトリガーを押し込めば右スティックの傾き最大値を大幅に下げて細かい照準操作を可能となります。

残念ながら筆者はFPSが下手くそなのでこの機能がどれくらい有用か判断できませんでしたが面白い試みである事は確かです。

そして、本コントローラーの唯一無二とも言える機能がこちら。
スティックの長さを変更できるんです。

スティックの頭部がネジ式になっており、付属のアタッチメントと入れ替えれば3段階に調節が可能。
最大長になったときのインパクトはもちろん、左右で違う長さにした時のビジュアルも堪りません。

左を最長、右を最短にして掴んだ様子。たまらん。

スティックを長くする事で仰角に対する指の移動量を変えて精度の調整ができるという事なのでしょうが、FPSが下手な私でもそれはどうなのよ?といった感想です。

スティックが長くなると必然的に十字キーや△◯×◻︎ボタンまでの距離が遠くなり押しにくくなるのですが、その代わりとしてかLRの12ボタンの間にカスタム可能なボタンが1つずつ付いています。

更に本体はラバー素材でコーティングされているので多少無茶な持ち方になっても保持が可能。
こういう、ぶっ飛んでいながら全体としては整うように工夫されているのはHORIさんらしい丁寧な仕事だなと思います。

ちなみに私がこのコントローラーを購入するきっかけになったのはこのスティック延長機能のおかげです。
ゲーミングギアらしい洗練されている風なデザインでありながら、異質に飛び出る2本のスティックからは機能美として収めるにはヤンチャすぎる精神を感じざるを得ません。
そしてちゃんと役に立っていないという事実が私を笑顔にしてくれます。
実に良いコントローラーです。

おわりに

本コントローラーを発売から半年後にレビューした4Gamerのレビュー記事が見つかったのでリンクを貼っておきます。

記事内でも言われているとおり精度を調整するTRIGGERボタンは良い発明だと思うのですがHORI以外のコントローラーではあまり見かけない機能だったりします。ライセンス取得しているのでしょうか。
あと私見ですが、2024年現在で同じことしたらハードウェアチートの一歩手前グレーゾーンな気もします。
大人しく背面カスタムボタンにしときましょう。

ちなみに本コントローラーの正当進化機とも言えるホリパッドFPSプラス for PS4ではスティックの長さ変更機能以外はほぼ全て受け継がれています。
むしろ、スティックの高さが標準より低くなり反応性を高める方向に強化されているのです。
攻撃力極振りビルドしか知らなかった子供が速度にも振った方が強い事に気づいた時みたいな成長を感じますね。

FPS特化コントローラーというジャンルは大きく、PS3を黎明期として今も発展し続けています。
しかし、実用性が求められるジャンルだけありPS5くらいまでの時代となるとヤンチャさはナリを潜め、そもそも高機能なことがしたければキーボードとマウスを使え、という風潮さえ感じるのが実情です。
というかHORIもそういうコントローラーシリーズを出しています。

だからこそ黎明期であるPS3のFPS特化コントローラーの手探り感は輝きと魅力を放っているのです。

本コントローラーを通して、不思議な機能美の魅力を少しでも感じ取ってもらえればこれ以上の言葉はありません。

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